レンさんは最強
第22話
🎸
クリスマスイブ当日。
事務所の総力をかけて挑んだイベントは、無事に終了した。
私も、自分自身が納得できる仕事ができた。
周りも、世間の反応も、たくさん褒めて、認めてくれていた。
vegetablooseの音も歌も、最高だった。
そして、深夜を回った現在。
この業界人が大好きな、打ち上げパーティー真っ只中だったりする。
「有須川さん!いやぁよかったよあの場面!」
「ありがとうございます。」
全ての出演者、関係者、スタッフ……合わせると1000人は軽く超えていそうな人々で溢れるのは、高級ホテルを貸切っての会場で。
もはやレンさんは疎か、にゃーあでさえ何処にいるのか不明だった。
社長の感動的なスピーチで幕を開けたこの盛り上がりも、まだまだ止みそうではない。
3歩歩けば顔見知りに会い声をかけられるという状況の中、なんとか会場から抜け出すミッションに成功。
そして、人気のない奥の奥の奥、メイクルームへと忍びこんだ。
よかった。
誰にも気付かれなくて。
無事に、終われて。
でも、そろそろ。
限界、かもしれない。
下戸な体質の所為かお陰様か、一滴も口にしていないアルコール。
それなのに、白く霞んできた思考、頭にはしる鈍痛の激しさは増していた。
3日前から、体調不良は自覚していた。
うん。ばっちり。
でも、眠れなかった。
いや、自分のプロ意識の低さで、眠らなかっただけか。
暗い部屋、大きなドアを閉めた瞬間に倒れ込むよう屈んだまま。
自分の甘さを叱咤し、反省する。
無事に終われたのは、終われたけど。
それとこれとは、別だもんね。
でも、喉が潰れてなくてよかった。
私にとっての天職が、女優でよかった。
もう、自分を褒めたいのか貶したいのかよく分からないごちゃ混ぜになってきた思考の中、なんとかスマホに手を伸ばす。
そうして、電話を繋げた。
会場のどこかにいるにゃーあに、助けてもらうために。
「有須川さん!なこさん!──すみません!誰か!──あ、諏訪さん!」
「どうした──って、彼女、」
「運ぶの手伝って貰えますか?どうも、大事にはしたくないらしいし、単なる風邪らしいので、とりあえず家まで……」
「じゃあ、俺が運転するよ。テツとか帰りたがってるし。ついでに。べじるーの車広いから、後ろ寝かせられるし」
「お願いします!」
にゃーあと、にゃーあの上司でもありマネージャー全体のトップでもある、チーフマネージャーの声。
お伽話のよう夢現に薄く聞こえながらも、考えていたことはひとつだけ。
レンさんにちゃんと、伝えたかったな。
聖なる夜の、ロマンチックな、この瞬間に。
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