第20話
「今がっつり目ぇ合いましたよね?現場抑えましたよね?」
「俺、刑事じゃないんだけど」
「知ってますよ!」
なにしれっと普通に会話しちゃってんのレンさん。
なんなら今これ、1ヶ月ぶりとかに会ってるんですけど。
別にお付き合いしてる男女じゃないから、頻度が多いのか少ないのか分からないけど。
特殊な世界で働いていることも然りで。
でも。
それでも。
ちょっとくらい、助ける素振り見せてくれてもいいんじゃないですか。
ちょっとくらい、助けてくれなくても挨拶とか、何かあってもいいんじゃないですか。
レンさんは、
そこまで、そこまで。
そんなにも。
「…………私のこと、どうでもいいんですか。」
「………………」
「軽いお触りされて、重い気持ち悪さに苛まれてても、スルーできちゃうくらい。」
視線は、レンさんから自分のつま先へと移動した。
役以外でこんなにも萎れ弱った声が出たことに、自分で驚く。
それ以上に、酷く強い自己嫌悪に襲われていた。
うーわ。
もう、最悪。
私、今、最強にめんどくさい奴だ。
うざ女だ。
レンさんには、関係ないのに。
むしろ、関わらないのが賢明なのに。
正しいのに。
どうしていつも、レンさんの前では上手くいかないんだろう。
勢いよく息を吐いて気合いを入れて、らしくない自分に喝を入れる。
そうして“ごめんなさい”と、場違い+勘違いな発言を謝ろうと頭を上げた。
「………………。」
「……レン、さん?」
そこに居たのは、初めて見るレンさん。
訝しげに眉間を寄せ、怒りを現している。
ただの、男の人。
「……そんな訳ないだろ」
「…………え?」
「どうでもいいコの連絡なんか無視するしごはんも行かないし、まず素を出すか馬鹿」
「馬鹿って、」
「てかなこちゃん、自分で振り払えたじゃん。」
「………………」
「そうやって、できる根性あるじゃん。」
「………………」
言われて初めて気付いた自らの行動に、よくよく考えれば軽く撃退できる事案に、素直に納得する。
今度は私がぽかーんとする番で。
それは後に、分かりやすいにまにま顔に変化して。
「…………だから別に、俺が出てややこしくする幕でもないかなって」
「確かに……。」
「………………まあ、でも。」
「うん?」
「あと1秒でも長くなこちゃんに触ってたら、殴る覚悟はしてたよ。」
そして飛び出したまさかの発言に、私の中の時は止まった。
頭の中は、リアルに静寂に包まれる。
レンさんは、魔性だ。
とんでもなく、魔性だ。魔法使いだ。
私だけ。
限定、の。特別な人。
「…………なにそれ絶対ウソじゃないですか。」
「バレたか。」
そう言って、心底楽しそうに笑う相手。
私にとっては、世界でいちばん、素敵な相手。
あーあ。
もう。
大好きです、レンさん。
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