ボク

ボクはアメリカで生まれた。

父親がアメリカ人で母親が日本人だ。

生まれた後しばらくニューヨーク州のロチェスターの郊外でしばらく暮らしていた。

ニューヨークはどこも都会というイメージを持っている人に説明するが、ニューヨーク州たった1つで北海道約3つ分で、ボクが住んでいた場所はナイアガラの滝までは車で1時間程なのに対しニューヨークシティまでは車で少なくとも6時間かかるという田舎がボクの故郷である。自分の故郷を卑下しているようにも見える人に言っておこう、ボクは故郷を愛している。

ボクは何にでも興味を示したらしく、家も多少裕福で、犬も飼っていた。ボクは何にでも興味を示したらしく父親はゲーム機でボクとよく遊んでくれた。外でも活発に遊んだし、飼っていた犬ともよく戯れた。

幼少期の記憶で印象的なのは、犬がかじっていた骨(今思えば骨風のおもちゃだったかもしれない)を「あれは美味しいのだろうか」と犬から骨を強奪して自分でかじってみたりもしたことがあった。もちろん人間からすれば美味しいはずもなく、すぐに手放した。

あとから聞いた話だが、母はそれを見ていたらしく、犬がボクに骨を譲ってくれた所を見たらしい。

なんと賢く懐が深い犬なのだろうかと今でも感じる。とにかくその犬はボクの兄弟的な立ち位置になって、ボクにとってはとても頼もしいことは確かだった。

保育園や幼稚園は割と痛い出費が出る可能性もあるため行かなかったし、アメリカではそこまで珍しくない判断らしい。近所人がボクの面倒を見てくれたり、母と父が交代で休みを取って面倒を見てくれたりしたらしく、人との交流に困ることは無かった。


ボクが3歳くらいになった頃、日本に引っ越すことが決まった。

犬はアメリカに置いて行き、家は売るという判断をしたらしい。

幼少期のボクは大人びていたのか、はたまたあまり愛情が深くなかったのか、犬を置いていく事について「新しい人と楽しく過ごせるといいね」というふうな返しをしたらしい。

日本に来てすぐ、父の単身赴任が決まった。父は京都で仕事に行くらしい。

ちなみに日本でボクと母が引っ越した場所は青森である。母の実家があるからだ。

母は日本に来てから働き手に少々困ったらしいが、現在の母の上司(園長)に保育士免許を活かしてうちで働かないかと言われ、保育士になっている。誘われた経緯に関しては母の友人の母がそこの保育園の園長だったらしい。

ただ数年のブランクがあると研修に連れていかれるらしく、近くの児童館で研修期間を設けられたらしい、その研修期間中なら、母が保育園におらず、親離れにも困らないからと言うWINWINな理由出勤ついでにボクをそこの保育園に預けることになった。

さすが半分帰国子女、ボクはまったく日本語がわからなくて、保育園にもなかなか馴染めないし、そこにいた保育士で英語をしゃべれる人は殆どいない。自力で言語を学習するしかなかったのだが、子供ながら日本のテレビはボクの好みにどストライクだったようで、家にいる間は殆どテレビを見ていたのもあってか、保育園に入ってからたった1週間で日本語を覚えたらしい。しかもテレビに字幕も入っていたため、同じ時期に漢字を含めた文字も読めるようになって、その話を後から聞いた中学生の頃に自分の幼少期の学習能力の恐ろしさを体感した。

それもあってか入園した1週間後には不安がなくなったらしく、保育園まで送ってくれた母親に対して「バイバイ!」と元気よく言えるくらいには自信が付いた。

だがしかし、他の子供にとって1日の殆どを日本語が話せない、容姿が日本人と少し違う子供と1週間共にしたことで、ボクの評価は完全に部外者になっていた。

日本語で話しかけて通じている筈なのに無視をされることに戸惑ったりパニックになったりしたが、その答えは誰も教えてくれない。

誰かが「うんこ!」という幼稚園児さながらのしょうもないギャグを言うとみんな面白がって復唱するが、ボクがそこに入って行ってもみんなシラけて、ボクは一人取り残されるだけであった。積極的に話しかけても反応はない、ただ一部の子と会話が成立しそうになっても他のグループの子に引き連れられて行ってしまう。

先生達がグループを強制的に決めて遠足に行ったりする時もそうだった。みんながご飯を食べながら「そのお弁当おいしそうだね」という会話をしてもボクには全く質問が飛んでこない、あっちで遊ぼうと同じグループの筈なのにまるでボクの方に視線は向かわない。ついて行って、みんなで楽しんでいるところに「いーれーて」と言ってもみなシラけるばかり、アメリカにいた頃に交流していた子供たちとは全く違う雰囲気の中過ごし、泣きたくなることはほぼ毎日だった。だが他人の感情を汲み取ることが難しかったボクはただただ断る理由なんてないじゃないかという思考で何度も何度も挑戦しては一人で泣いていた。

結局ボクは子供ながらに子供の残酷で冷たい心に素手で触り、卒園するまでの殆どをほぼ孤立した状態で過ごした。

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