第二種 夢を溶かす命の色


 BGM「ジングル」STR


アカツキ:オートマティックロンド、第二種、夢を溶かす命の色


 BGM「ジングル」DWN


○ロボラヴィ ラボ 朝


 BGM「襲撃」STR


 自動ドアは中途半端に開いた状態で壊れている

 部屋の中を見れば破壊された機材から、放電している

 レジスタンスとの銃撃戦が続いているのか、遠くない場所から発砲音が絶え間なく聞こえている

 ツキノたちは周囲に注意しながら身を隠せる場所へと移動した


ネオ:なんだか始まってるみたいですね。皆さん、こちらへ。隠れてください


 ツキノの姿を見つけて研究員が駆け寄ってくる

 負傷はしていないようだが白衣は汚れており、血痕も微量に付着している


研究員:所長!

ツキノ:(研究員に向かって)なにが起きたの

研究員:それが、レジスタンスが乗り込んできて


 アカツキ レジスタンス項目を検索


アカツキ:レジスタンス。近年勢力を拡大し、武装をもってアンドロイドを排除しようとする非政府団体

マゼラン:人間がすることをオレたち機械に奪われたって、暴れてんだよ

ネオ:おや、僕はアンドロイドが起こした事件に恨みを抱いている人の集団と聞きましたが

ツキノ:ノゾミ、下がってなさい。有事には民間人の生存が最優先事項よ

ノゾミ:でも

マゼラン:オレらがいても邪魔になるだけだろ

ノゾミ:……分かった


 少し離れた場所に移動するノゾミとマゼラン

 ツキノたちとノゾミたちを隔てるようにアカツキが陣取る

 レジスタンスの様子を見るツキノとネオ


ネオ:おかしいですね。確かにロボラヴィはレジスタンスにとって格好の餌食でしょうけど、いままで襲撃を受けたことなんて一度もないのに

研究員:あちらはE型を寄越せと騒いでいて――

アカツキ:自分ですか?

研究員:え? 君、E型アンドロイド!? よかった。君がいれば百人力だ。さぁレジスタンスを追っ払ってくれ


 アカツキは黙したまま動かない


研究員:どうした? 君は人を殺すためのアンドロイドだろう?

アカツキ:自分の武装は現在、命令によりロックされています。対象の沈黙に貢献できるかどうか

研究員:はぁ!? ったく、誰だい、君のマスターは

ノゾミ:アタシですけど

研究員:なにを考えているんだ、君は。E型の武装をロックするなんて

ノゾミ:アカツキは人を攻撃したりしません!

研究員:君にはあの光景が見えないのか! こちらが反撃に出ないのなら、私らは犬死だ!

ノゾミ:それは、でも……アンドロイドは人を殺す道具じゃない!

ネオ:ノゾミさん。この場はアカツキさんに対処してもらうのが一番効率いいかと

ツキノ:……ロボラビィの防衛システムは外部侵入には強固だけど、中に入られちゃね


 ネオがレジスタンスの方を向く

 レジスタンスはキャノンレーザーが打てるドローンを引き入れている


ネオ:マスター! あれを見てください

ツキノ:まずいわね。レジスタンスのやつら、キャノンレーザーを持ち出してくるなんて!

ネオ:あれで焼かれては、防衛ロボットなど形無しでしょうね。対抗できるとすれば


 一同の視線がアカツキを向く


マゼラン:アカツキだけなのか? ほかにはいないのか?

ツキノ:攻撃に特化したアンドロイドは開発が禁じられてるから、私たちが保持しているのは火力減の自衛用だけだし

アカツキ:マスター、対象を沈黙させますか?

ノゾミ:武装ロックしたまま、できる?

研究員:君は正気か!? あの中に武装ロックしたアンドロイドを向かわせるなんて!

ノゾミ:でも、武装を解除したらアカツキが人を殺すかもしれないでしょ!?

研究員:当たり前だろう。E型は人を殺すために作られた兵器だ!

ノゾミ:違う! E型アンドロイドは――アカツキはヒーローになるために! みんなを守るためにってパパが

ネオ:!? まずいです、気づかれました。隠れて!!

アカツキ:マスター!

ノゾミ:え? ぅあ!?


 ノゾミたちに気づいたレジスタンスにより発砲される

 鼓膜が痛いほどの銃声が複数聞こえると皆、慌てて隠れる

 ツキノはネオが引っ張り壁に

 ノゾミはアカツキに抱き込まれるように(アカツキに跳弾)※マゼランは身長的に銃弾に当たらない

 庇われなかった研究員は撃たれる


研究員:っぐっ……ぁ!!


 研究員が倒れる


ツキノ:(額を抑えて)いたたた。やってくれるわね。ありがとうネオ。助かったわ

ネオ:マスターを守るのが僕の役目ですから

アカツキ:ご無事ですか?

ノゾミ:……うん。マゼランは?

マゼラン:大丈夫だ。でも、あいつ


 倒れている研究員から血が流れてくる


ノゾミ:――え? なんで、研究員さん!


 研究員の元に走り出そうとするノゾミをアカツキが捕まえる


ネオ:ノゾミさん、動かないでください! 蜂の巣になりたいんですか?


 ノゾミはアカツキの服を掴んで問い詰める


ノゾミ:アカツキ、なんで! なんでアタシだけ助けたの!

アカツキ:? 危険を察知しましたので、防御体勢に入りましたが

ノゾミ:すぐ傍に研究員さん、いたでしょ!?

アカツキ:肯定です

ノゾミ:だったら、助けられたでしょ? 手を伸ばせば、すぐ

ネオ:なにを言ってるんです。ノゾミさんが命令しないとアカツキさんは動きませんよ?

ノゾミ:じゃあ、なんでアタシをかばったのよ!

ツキノ:ノゾミがアカツキのマスターだからよ。アンドロイドは如何なる状況下でもマスターを守るよう設定されているわ


 遠くから警察のサイレンが聞こえてくる

 銃撃がやんでいく


 BGM「襲撃」DWN


ネオ:音、やみましたね。引き上げたんでしょうか


 ツキノ、研究員に近づき生死を確認し首を振る


ツキノ:……ダメね。死んでる

ノゾミ:アタシが

ツキノ:(青ざめているノゾミを見て)ノゾミの所為じゃないわ

ネオ:レジスタンス、逃げていったみたいです。よかったですね、生き延びましたよ

マゼラン:あいつら、E型を寄越せって言ってたけど、なんでだ?

アカツキ:不明です。マスターを安全な場所に退避させた後、調べてみます

ノゾミ:っ!


 ノゾミはラボから駆け出していく

 アカツキはマゼランをつかんでダッシュ


アカツキ:マスター、安全確認が終わっていません! 待ってください

マゼラン:おいこらアカツキ。足をつかむな! せめて抱っこしろ!!

アカツキ:了解です、マゼラン! 飛ばします

マゼラン:うぅ、うぉおおーー!?


 アカツキはジェット噴射でノゾミを追いかけていく


ネオ:騒がしい人たちですね。――マスター、気になることが

ツキノ:どうやってレジスタンスがロボラビィ内部に侵入したか、でしょ?

ネオ:それともう一点、E型アンドロイドがここにいると事をどうやって彼らが突き止めたのか。誰かが手引きをしたとしか思えないのですが。見つけ出しましょうか?

ツキノ:いいえ

ネオ:どうしてです。僕、お役に立てますよ!

ツキノ:いい子だから、言うことを聞きなさい

ネオ:(不承不承と)……はい


○道路 昼


 先ほどまであった襲撃が嘘のようないつもの日常がそこにある

 ノゾミを追いかけてきたマゼランとアカツキは探しながら歩いている


マゼラン:どこいったんだ、ノゾミ


 探索するアカツキ


アカツキ:発見しました。ここより西、200M先にいます。角を曲がれば視覚で捉えられる位置です

マゼラン:……ちょっと様子見ようぜ

アカツキ:了解です。しかし、なぜマスターは逃亡を?

マゼラン:場の空気に耐えらんなかったんだろ

アカツキ:なぜでしょうか

マゼラン:(ふかーいため息)はぁー、(アカツキを見据えて)人が目の前で死んだんだ

アカツキ:あの研究員はマスターの親族ですか?

マゼラン:ちげーけど

アカツキ:財産を共有するパートナーでしょうか

マゼラン:ちーがーう

アカツキ:では先の人間の死を気に病む必要がどこにあるのでしょう

マゼラン:人間ってのは他の人間が死んだら悲しむ生き物なんだよ。それにノゾミは人が死ぬの、好きじゃねーし

アカツキ:マゼラン、人はいつか死にます

マゼラン:わーってるよ! でも……ノゾミの両親、パパの方な、死んでるんだ

アカツキ:ネオの発言により、E型の暴走で命を落としたと推測します

マゼラン:だからだろうな。アンドロイドが人を傷つけるの、怖がってる。口には出さねぇけど、どう接するべきかって、迷ってる。いざって時、暴走したアンドロイドを止めれるようにってオレにワクチンまで持たせてるしよ

アカツキ:? マゼランに対しては安心して接してるように見えますが

マゼラン:そりゃオレはノゾミが作った力作だからな! 愛着の差ってやつ?

アカツキ:理解できません。自分とマゼランに差はありません

マゼラン:いやあんだろ! (少し切なそうに)オレは、はやく行動できねぇし、いざってとき、守ってやれねぇ

アカツキ:今の自分は武装をロックされています。防守に確約ができません

マゼラン:んー、おまえが力加減を覚えりゃ、少しは変わるだろうけど

アカツキ:力加減、ですね。把握しました。会得します

マゼラン:(苦笑)どうやってやるつもりだよ

アカツキ:まずはマゼランをつぶさない程度に握るところから

マゼラン:待て! オレで試すな。おまえの握力でつぶされたらぺちゃんこになる!

アカツキ:修復できる範囲で挑戦します

マゼラン:バカバカやめろ。ハイリスクノーリターンだ! ノーゾーミー!!


 騒動を聞きつけ、ノゾミが近づいてくる


ノゾミ:うっさい!


 マゼランを殴るノゾミ


マゼラン:いて! ちょ、殴るとかひどいだろ

ノゾミ:人が感傷に浸ってるってのに、後ろからぎゃーぎゃーと

アカツキ:マスター。お怪我はありませんか?

ノゾミ:ないよ。ごめんね、いきなり飛び出して。もう大丈夫だから

アカツキ:他人の死が、辛いのですか?

マゼラン:アカツキ、おまえそりゃ聞かないのが優しさだぞ

アカツキ:同じ行動を繰り返さないために、学習する必要があるのです

ノゾミ:アカツキはなんでアタシが飛び出したか、分かんないんだ

アカツキ:肯定です

ノゾミ:そっかぁ。――研究員さん、アタシのせいで死んだんだよ

アカツキ:否定します。あの人間の生死にマスターの関与は認められません

ノゾミ:アタシがアカツキに攻撃していいって言ってれば、あの人は死ななかった

アカツキ:……? マスターはレジスタンスの駆逐をご希望だったのですか?

ノゾミ:違う! アンタは人を攻撃するために作られたんじゃない

アカツキ:ではどのように行動するのが望ましかったのでしょう

マゼラン:あの研究員も一緒にかばうってのがベストだったんだろうな

アカツキ:自分にはあの人間をかばう理由がありません

ノゾミ:(苛立つが、どうにか自分を制する)~っ! ……はぁ、やめよう、平行線。アカツキはまだ学習したてだから、複雑な感情なんて理解できないよね

アカツキ:否定します。自分には人間の心を理解するよう高度なAIが搭載されています。複雑な心理状態を正しく数値化し、理解して、お役に――

ノゾミ:理解できないから、そんなこと言うんでしょう!!

マゼラン:ノゾミ

ノゾミ:……ごめん。(自分に言い聞かせるように)ごめん、分かってるから。アカツキは悪くない

アカツキ:否定します

ノゾミ:アンタね、なんで否定ばっかりするかな

アカツキ:マスターがそのような表情をする原因は自分の行動と判断します。推測が正しければ、修正すべきは自分です


○グランドゼロ 昼


 グランドゼロからチアキが伸びをしながら出てくる

 少しくたびれた様子は仕事をしてきた人間だと確信できる


チアキ:んーっぁ~、いつの間にかお日様上がってるじゃない。あらノゾミちゃん、お母さんのお見舞い?

ノゾミ:(見つかって少し気まずい)チアキさん!? い、いいえ

チアキ:あらら~そう。今日こそはって覚悟決めて来てくれたと思ったのに

マゼラン:チアキ、マリナの容体に変化はねーか?

チアキ:大丈夫よぉ、介護ロボが24時間体制でついてるから

アカツキ:この建物にマスターの母がいるのですか?

チアキ:(初めて見るアカツキを観察しながら)うーん? そうよ~。A区最大の医療施設、グランドゼロ! ここで働くって大変なんだから!

マゼラン:そうなのか?

チアキ:医療分野はロボットくんたちに仕事取られちゃったからね。病院で働いてる人の数は少ないし

アカツキ:ロボットに任せるべきです。自分たちであれば疲労も蓄積されません

チアキ:んま、生意気! いざってときの判断とか、できないくせに

アカツキ:肯定です。最終判断は人間の手により下されるべきです

チアキ:あら、アナタは他のロボくんたちとは違うのねぇ。他の子はみーんな、人間より自分が優れてるって言ってくるのよぉ

アカツキ:それは――

ノゾミ:(逃げるように)チアキさん、また来ますね!

マゼラン:あ、おいノゾミ。待てよ


 ノゾミがそそくさと去るのに続くマゼラン

 その背中を見ながらチアキがアカツキの横にくる


チアキ:あーあ、逃げちゃった。ねぇアナタ、ノゾミちゃんのアンドロイド?

アカツキ:はい、アカツキと申します

チアキ:そう、ようやく克服したのかな? ねぇ、ノゾミちゃんに伝えてくれる? 今は延命できてるけど、マリナさん、いつ息を引き取ってもおかしくない状態だぁって


 BGM「命」STR


アカツキ:医療技術の進歩は目覚しいと聞きます。いずれ回復に向かうのでは?

チアキ:……回復はないわ。(言葉を探して、でも諦めて)一度死んだ人間の心臓を無理やり動かしているだけなの

アカツキ:マリナは一度、死んだのですか?

チアキ:ノゾミちゃん、あの時は小さかったから言わなかったけど。生命維持装置に体つなげて、心臓に電流流して動かして、それって生きてるって言うのかしら

アカツキ:では脳を取り出し、デバイスをつないで――いえ、それはもはや

チアキ:人じゃないわね

アカツキ:……マスターはマリナに会うべきです

チアキ:難しいんじゃない。事故があってからずっと面会に来てないし

アカツキ:無理にでも会わなければ、マリナは死んでしまうのでしょう?

チアキ:簡単には割り切れないのよ。アンドロイドに殺されかけたのに、アンドロイドに世話されてるのよ?

アカツキ:理解できません。自分たちはコアが残れば次があります。ですが人間に次などありません

チアキ:会った方が、よっぽど悲しいってこともあるの

アカツキ:それは、二度と会えないことを後悔するよりも辛いものですか?

チアキ:(咎めるように)アナタに人の悲しみが分かるとでも言うの?

アカツキ:数値的に計算した結果です

チアキ:(少しやるせなく)そう。アンドロイドは人の悲しみすら数値化できちゃうようになったのね

アカツキ:いけないことでしょうか

チアキ:分からないわ

アカツキ:……マスターは、アンドロイドを憎んでいるのでしょうか

チアキ:どうかしら。昔はかっこいいー! 自分もアンドロイド作るって、よく笑う子だったんだけど

アカツキ:ありがとうございました。マスターを追います

チアキ:そう? じゃあね、サヨナラ、アカツキくん


 BGM「命」DWN


○スーパー 夕方


 カートを押しながら商品を入れていくノゾミ


ノゾミ:今日のご飯、なににしよっか。カレーとか?

マゼラン:(くちばしを挟まれながら)ニョジョミー ※正しくは「ノゾミー」

ノゾミ:あ、でも冷蔵庫のサバも食べないとね

マゼラン:(くちばしを挟まれながら)ニョジョミ ※正しくは「ノゾミ」

ノゾミ:なに、マゼランもサバ食べたいの?

マゼラン:(くちばしを解放される)ぷは! 機嫌わりぃのは分かったから、くちばし持つのやめろよ。千切れんだろ

ノゾミ:大丈夫だって。アタシが修理してあげるから

マゼラン:おまえなぁ


 アカツキが走ってくる


アカツキ:マスター。こちらにいましたか

ノゾミ:(先ほどまでの会話がなかったかのように普通に接する)ねぇアカツキって食事できるの?

アカツキ:肯定です。口内摂取し熱量に変換後、駆動エネルギーとなります

マゼラン:……味とか、分かんのか?

アカツキ:摂取した試しがないので判断できませんが、味覚センサーの感度を上げれば人間のいう美味しい料理も作れるはずですが

ノゾミ:じゃあ今度作ってもらおうかな

アカツキ:(頼まれごとが嬉しい)お任せください!


 遠くから少女と老婆が現れる

 老婆は動きが遅く、古いタイプのアンドロイド


少女:おばあちゃん、タマネギこっちだよ

老婆:おお、そうかい

少女:もう。しょうがないなぁ。ほら、手引っ張ってあげるから

老婆:ありがとうね


 青年と老婆がぶつかる


老婆:(よろける)ああ

青年:おいババァ。どこ見てやがる

少女:ちょっと、そっちがぶつかってきたんでしょ!

青年:んだとガキが

老婆:ごめんねぇ、お兄さん。アタシはこの通り、婆だからさ

青年:とろくせぇな。んあ? てかこいつ、アンドロイドじゃねーか

少女:アンドロイドじゃない! わたしのおばあちゃん!

青年:うわ、かわいそー。なに、ロボットに家族ごっこさせてんの? しかもパーツ首んとっから見えてんじゃん。キモチわりー

少女:っ! う、うるさ――

ノゾミ:うっさい!


 ノゾミが青年を殴る


青年:いてぇ! ちょ、ンだよ、おまえ!

アカツキ:マスター。攻撃でしたら自分が

ノゾミ:平手で殴るくらいなら許可する

アカツキ:(いきいきと)了解です。エネルギーチャージ、出力最大


 手の内にエネルギーを込めるアカツキ


マゼラン:こらばかやめろ! そいつの首が吹き飛ぶ!

ノゾミ:じゃあ首、飛ばない程度で

アカツキ:承知しました!

マゼラン:やーめーんーか、おばかー!!


 マゼランの小さな手による平手打ち乱舞を喰らうアカツキ

 なお、無傷


アカツキ:マゼラン、あなたの攻撃はダメージ量が軽微です。また攻撃を続行する場合、手が使用不可になる恐れが

マゼラン:くそう、頑丈なヤツめ!

青年:な、なんだこいつら。こっちは変なのに構う暇なんてねーんだよ!


 青年が去る


ノゾミ:あ。ちょっと待ちなさいよ!

マゼラン:ノゾミ。男を殴るために話に入ったのか?

ノゾミ:や、ちがう、けど。くそ、次に会ったら絶対殴る。(少女に)ねぇ、大丈夫だった?

少女:え。あの、あの

アカツキ:少女をスキャンします。外傷なし。生命持続に問題を確認できません。続いてアンドロイドへのスキャンを開始します

少女:えっと、お姉ちゃんたちは?

ノゾミ:通りすがりのスーパーの客

マゼラン:と、キュートなペンギン型ロボット

少女:ええ?! アヒルじゃないの?

マゼラン:ぬな!?

老婆:見知らぬ方。ありがとうございました

ノゾミ:大丈夫でしたか?

アカツキ:スキャン完了。マスター、老婆のアンドロイドは製造、保守共に終了している回収対象です。然るべき処置を


 少女が老婆の前に出てくる


少女:ダメ! おばあちゃん、連れてっちゃダメ!!

マゼラン:保守終了ってことは、壊れても修理できねーぞ?

少女:いいよ。病気も怪我も、おばあちゃんはしないから

アカツキ:否定します。頭部と胴体部をつなぐパーツに決定的欠陥が確認できました。パーツ交換を行わない場合、半年以内に首が落ちます

ノゾミ:アカツキ、言い方に気をつけて

アカツキ:申し訳ありません。首が胴体とおさらばします

マゼラン:変わってねぇよ!!

ノゾミ:ねぇ、そのアンドロイド

少女:おばあちゃん!

ノゾミ:……アンタのお婆ちゃん、修理――じゃなくて、医者に診せないと動かなくなっちゃうんだよ

少女:お医者さんなんて信じない。おばあちゃんを連れていっちゃうから

アカツキ:同タイプの製造は中止されていますが、ニュータイプがあるはずです。形状変更は行われていないので、そちらに移行するのがよいかと

ノゾミ:そうね。誤作動が起きたら危ないし。ねぇ

少女:いや! おばあちゃんは、おばあちゃんだけ。一緒にご飯食べて、お風呂にはいって、寝て、お歌を歌ってくれたのは、おばあちゃんだけ!

ノゾミ:……そっか。それじゃ、ダメね

アカツキ:マスター、記憶を保持したままプログラム移行ができます。現在のタイプよりニュータイプへ

ノゾミ:そういうことじゃないよ、アカツキ。記憶を引き継いでも、どれだけ形が似てても、ダメなの。ね?

少女:当たり前だよ!

アカツキ:理解できません。理由を提示してください

マゼラン:人間だからじゃね?

アカツキ:マゼランは理解できるのですか? 保護すべき対象を危険に晒す可能性のあるアンドロイドを傍に置き続ける理由が

少女:アンドロイドじゃないって言ってるでしょ!! 耳聞こえてないの、ばーか!

アカツキ:(混乱中)アンドロイドでは、ない? ですが、その老婆の作りは確かにアンドロイドで

少女:だからなによ!

アカツキ:なぜそのタイプにこだわるのか、教えてください

少女:なんで教えなきゃいけないの!

アカツキ:知りたいからです。なぜ貴女が、アンド――いえ、彼女にこだわるのかを

少女:ふん。……いままで一緒にいたんだから、これからも一緒なの

アカツキ:遅くても半年後に壊れます

少女:……! (言い返したいのをぐっと我慢して)それでも、他のおばあちゃんなんて要らない。私が好きなのは、おばあちゃんだけだもん


 老婆に抱きつく少女


老婆:どうしたんだい? 抱きついてきて。甘えただね

少女:いいんだよ。甘えただから

老婆:この子は、まったく

ノゾミ:ごめんね、つっかかっちゃって。アカツキは生まれたばかりだから、色んなこと分からないの

少女:そんなに大きいのに?

マゼラン:図体ばーっかデカイんだぜ? (アカツキを見て、仕方ねーヤツと笑う)ほんと、なぁ

アカツキ:(ちょっとむっとして)コンパクトサイズにもなれます! 手足を外し胴体部だけになれば、保管場所に困ることもありません!

ノゾミ:アンタそれ、どうやって動くつもり?

アカツキ:腰下と背中よりジェット噴射すれば!

マゼラン:壁に激突して終わるだろ。家壊すなよ? ちいせーんだから

ノゾミ:小さいとはなによ。1人暮らしなんだから、今くらいでちょうどいいの

少女:お姉ちゃん、その子たち大事?

ノゾミ:(少し迷いながら)……うん

少女:だったら、新しい子にするなんて、できないでしょ?


 しゃがんで少女と視線を合わせるノゾミ


ノゾミ:そうだね。他の子じゃダメだよね

少女:そうだよ。おばあちゃんは1人だけ。ね、お買い物、続けよ

老婆:もういいのかい? では、失礼しますね

少女:ばいばい


 少女と老婆が去る


ノゾミ:アンドロイドの代わりはいない、か


 街頭テレビでニュースを流れてくる


キャスター:レジスタンス代表への証人喚問は23日に行うことが正式に決まった模様です。活動が激化してきているレジスタンス。アンドロイド保有者に対し無差別攻撃を行う例も多く報告されています……皆さま、十分お気をつけください

ノゾミ:(該当テレビを見ながらぽつりと)アタシ、アンタが壊れたら悲しいのかな

アカツキ:悲しむ必要などありません。次の機種をご用意ください

マゼラン:おまえ、E型なんだから代替機なんてねーっての

アカツキ:では、壊れないよう行動に注意します

ノゾミ:(アカツキの服の裾を摘んで)……壊れないで

アカツキ:命令ですか?

ノゾミ:……お願いってのは、分からない?

アカツキ:すみません、理解できません

ノゾミ:そっか。じゃあまだいいや。でもこれだけは守って。人は攻撃しないで

アカツキ:そちらの命令は既に受理されています

ノゾミ:うん。じゃ、買い物の続きね


 カートを転がしていくマゼランとアカツキ


マゼラン:よーし、アカツキ。今日はシーフードカレーだ

アカツキ:マゼラン、具材になるのですか?

マゼラン:ペンギンをカレーに入れようとすんな!


 マゼランとアカツキを見つめつつ、ぽつりと


ノゾミ:アンドロイドはどうあるべき、か

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る