その動けるデブ、実は異世界ファンタジー向きのヤバい奴だった!
茶電子素
第1話 力がすべてを決めるように思えた。
太杉速人。17歳。相撲部所属。身長195センチ。体重150キロ。
その巨体は、教室の隅で縮こまってニコニコしているときには
ただの「いじられキャラ」にしか見えなかった。
だが、彼の内面は違った。地球での「気弱キャラ」は、ただの処世術にすぎない。
――そして今、異世界。
王城の大広間にクラス全員が召喚され、煌びやかな魔法陣の光が消えた。
王女が告げる。「あなたたちには勇者として、この世界を救ってもらいたいのです」
クラスメイトたちは困惑しながらも次々と職業を授かる。
「勇者!」「聖女!」「聖騎士!」 歓声と拍手。カースト上位の連中は、当然のように高位職業を引き当てていく……。
そして速人の番。魔法陣が淡く光り、石板に刻まれた文字が浮かび上がる。
――職業:農民。
――スキル:健康。経験値二倍。
「……ぷっ」誰かが吹き出した。
「農民?雑魚じゃん!」
「健康ってwただのデブにピッタリだな!」
笑い声が広がる。速人は、ゆっくりと顔を上げる。
「……そうか」
その瞬間、彼の目が変わった。
地球での“気弱キャラ”は、もう必要ない。
ここは異世界。なぜか力がすべてを決めるように思えた。
「おい、農民。せめて畑でも耕してろよ!」
カースト上位の一人、剣士職を得た男子が肩を押してきた。
――バチィン!
速人の張り手が炸裂した。巨体から繰り出された一撃は、剣士を壁まで吹き飛ばす。
石壁にヒビが走り、場は凍りついた。
「な、なんだ今の……」 「山田くん剣士じゃなかった?」「農民に一撃で……?」
速人は鼻で笑った。
「農民だろうが何だろうが、俺の力は変わらねぇだろうが」
(……とかいいながら、かなり馬力上がってるわ。これが異世界補正ってやつか?)
王女が慌てて制止に入る。
「や、やめなさい!ここは王城です!」
速人は王女を一瞥した。 ――今この場で拉致してやれば、誰が上か一瞬で分からせられる。
だが、王女の言葉が嘘だった場合、この世界での立場が悪くなる。
「魔王を倒せば元の世界に帰れる」――その真偽を確かめるまでは、泳がせておくか。
速人は肩をすくめ、再び無表情に戻った。
「……まあいい。俺は農民だ。畑でも耕してやるよ」
だが、クラス全員はもう気づいていた。この“動けるデブ”は、ただの農民じゃない。――怪物だ。
その夜。速人は与えられた宿舎のベッドに横たわり、天井を見上げていた。
『……さて。まずは誰から潰すか』
彼の口元には、じつに楽し気な笑みが浮かんでいた――。
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