EPISODE4「変身」

 少年は見知らぬ天井で目覚めた。

「(ここは…何処だ…僕はたしかあのサイのバケモノに挑んで…)はっ!」

「お、目、覚めたか」

目の前にはコーヒーカップ片手に少年・一之瀬ヒカルを見つめる黒髪の青年がいた。そしてしばらくすると、銀髪の青年もこちらを覗いた。

「あ、あんたは…赤マフラー!」

だが、銀髪の青年はヒカルが目を覚ましたことに喜ばずため息を漏らした。

「お前さ、自分が何したか分かってる?」「え…」「お前が変にシャシャリ出たせいで、危うく民間人に被害が出るところだった。お前自身と死にかけたんだぞ!」

ヒカルは風雅に認められようとしてやった事がかえって危険になるとは思わなかっただろう。やはり力も策もない者が戦うのは無謀なのだ。

        ー2時間前ー

妖狩(エージェント)・『神狼』こと八雲風雅は目の前に未確認35号“ライノ”が出現し、交戦したが思うように力が出ずに苦戦していた。

その時、木刀一本片手に持ったヒカルが警察のバリケードを飛び越えて『ライノ』と交戦したが風雅の証言によると…

『ライノ』に腹を殴られた挙げ句、持ち上げられて店のシャッターに投げ飛ばされ気を失ったそうだ。

シャッターにはクレーターが出来ていた。

本来ならば骨折程度では済まない確実に“死”だ。

その事について風雅の兄・八雲 雷牙(らいが)は風雅をリビングに呼び出し、こそこそと相談した。「なぁ…どうするよ。」「どうするって?」

雷牙は聞き返した。

「あの坊主だよぉ変にヒーローに憧れちゃってさ、家に帰そうにもあのケガだ。近隣住民に見られたら怪しく写るわ!」

するとヒカルは普通に戸を開けて出てきた。

「あれ、動ける…」 『は!?』

2人は驚愕して双子らしく声が揃った。また2人はお互い見合って

「ぜってぇおかしいよアイツ!」「あぁ警察に掛け合ってみる…」

この日は警察と妖狩(エージェント)側の了承でヒカルは八雲邸に泊まることになった。

今回の事件で後遺症が残っているかも知れないからだ。


       ー翌日 午前11時ー

 風雅のケータイに着信が入った。

「『ライノ』がまた出た!兄貴行ってくるわ!」「僕も行きます!」

ヒカルはまた前に出たが

「お前はこれ以上関わるんじゃない!」

風雅に一蹴されてしまい返す言葉も無かった。そのまま風雅は現場に向かっていった。

「やっぱり僕って…ヒーローにはなれないのかな…」「何故ヒーローに拘るんだ…?」

雷牙に聞かれたヒカルは希望に満ちた顔で答えた「僕、昔事故に遭ったんです。その時に両親が死んで…でもとある人が助けてくれたんです!家族を亡くした僕にも優しく話しかけてくれて勇気をくれたんです。その日から僕も誰かのヒーローになりたいと思って鍛えたり、色んな人の手伝いをして過ごしたんです…前回あんな事があって、バケモノ達が許せなくて、風雅さんの役に立てたらと…」

「まぁ…お前が良い奴なのは分かった。…じゃあ見に行くか?」「え?」

「職場見学だよ風雅が一体どんな奴と戦ってるか見せてやる。」

    しかし雷牙には狙いがあった。

「(このぐらいの子供なら現場を見て震え上がる。危険なマネはしないと諦めるだろう…。)」


 『ライノ』が現れたのは、ショベルカーやタンクローリーなどがある工事現場。『ライノ』はこの場にある全ての重機に突っ込むつもりだ。

       「待てぇーい!」

そこでバイクに乗って風雅が到着。飛び降りて“ライノ”に飛び蹴りを食らわせた。今度は前回と違い『ライノ』は体勢を崩した。

    ー「“疾風(The Cyclone)”」ー

「俺の術式“疾風(The Cyclone)”はある程度の風力を体に受けないと使えないんだ。今回は一味違うぜ?」

前回はバイクも無く、風が吹かなかった日なのでまったく“術式”が使えなかったのだ。

一方のヒカルは雷牙に連れられ被害の少ない高い位置から風雅を見守る。

「そうか、バイクを使えばある程度の風力が集められるからカマキリの時は無双してたんだ…!」

ヒカルは戦況と能力を理解した。風力を蓄えた風雅は『ライノ』のタックル攻撃を受けても両手で押さえられるがまだ足りない。止めても頭の角が襲いかかる、パンチも強烈だ。

しかし風雅も負けじと風を纏った拳で『ライノ』を殴りまくる。

「まだだ、まだ足りない…」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「お前それしかセリフ無いんか!うわぁ!?」

ツッコんだ時の一瞬の隙で顔を殴られ吹っ飛んだ。


風雅はすぐに立ち上がり、口元の血を親指で拭った。「お前みたいな相手にはこの力だ…」

    ー 「“吠えろ・『神狼』”!!」ー

この時突風と共に白銀の美しい狼が飛び出し『ライノ』に噛みついた後、風雅を護るように目の前に立ち塞がる。

   「見せてやるよ…俺の…変身っ!!」

風雅の両目の目元には疾風の様な模様の痣が出現し、体は竜巻に包まれた。それを手刀で裂いた時『神狼』と風雅が混ざった銀色の鎧を身に纏った狼男が現れた。 

             EPISODE4変身 完

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