日常の会話や食べものの描写がとても生き生きしていて、読み始めると自然とテンポに乗せられました。語り手の少しおせっかいで、でもどこか憎めない距離感が心地よく、登場人物たちのやり取りを楽しく追えます。ユーモアの効いた言葉選びや比喩が随所にあって、くすっと笑わせながらも、不思議と余韻が残るのが印象的でした。どこまでが世話焼きで、どこからが受け取る側の自由なのか、その境目を考えさせられるような一篇だと思います。肩の力を抜いて読めて、読後にちょっとした会話や食事の風景を思い返したくなる作品でした。
軽くて笑えて美味しそう。野菜の隙間から肉の匂いがしてくるし、言葉選びもナイス。好きですな。
この話を読み終えた時、そういえばしっかり山歩きした後って、肉を食べたくなるんだよなあ、と思い出しました。ならば日々、身体を張った仕事をする彼らが肉を欲する気持ちも、分からなくはない?とことん肉を追求してゆくが、そのこだわりは……そう、こだわるのか。肉をめぐる堂々巡りとヒレ田の華麗なる日常。29