第4話:幼馴染の莉子?
――どうやら、話題はまだ続くようだ。
今度は「幼馴染」という単語が聞こえてきた。
亜紀が、まるで大したことじゃないという顔で言い放つ。
「……でも、莉子さん? あの子は幼馴染でしょ」
(……おいおい、今度は“幼馴染”登場かよ。一ノ瀬直也、元カノに義妹に、さらに幼馴染まで揃ってんのか?どんなハーレム構成だよ。ラノベの主人公でももう少しバランス考えるぞ。ゲームバランス悪すぎる「餓狼伝説SP」ガロスペを思い出すレベルだぞ)
玲奈が笑みを含ませながら同意する。
「そうですね。せいぜいデート1回して終わりでしょうね。今どきのラノベ界隈じゃ、幼馴染ってもう“負けフラグ”ですから。」
(……え、負けフラグ!? あんたら現実の恋愛を、ラノベの勝敗ラインでジャッジすんのかよ。すげぇな五井物産女子。恋バナに歴史を持ち込むかと思いきや、今度はラノベ知識炸裂かよ。スライム倒してレベルMAXになっていそうで怖いじゃねーか)
玲奈が、余裕の笑みを浮かべてグラスを揺らしながら続ける。
「まぁ、保奈美ちゃんとはLAで休日を共に過ごしていますし……私たちの方が距離は確実に縮めてますから。だから家にも、自然に入り込めるんですよ」
(……LAで休日、義妹とバリキャリ女子と過ごすスーパーエリート。なんだそのリア充イベントの積み上げ方。オレなんて出張先でラーメン食ってホテルに直帰だぞ? こっちは孤独死直行コースだってのに)
亜紀も乗っかる。
「それに直也くんの家は、もう保奈美ちゃんが直也くんの食事を毎日用意しているのよ。可哀想だけど、そこにはもう莉子さんの入り込める余地なんて残ってないわ」
玲奈が即座に畳みかける。
「そうですね。家庭はすでに保奈美ちゃんがグリップしてる。だから莉子さんが“家庭的な存在感”でアピールしても、まったく通用しない。ROIが悪すぎる行動になりますね」
(……“グリップ”って言葉の使い方、完全に経営会議だろ。家庭の食卓を市場シェアみたいに分析すんなよ。挙げ句に“ROI”とか言うなよ。なんで恋愛会話がMBA論文みたいになってんだ、この人たち)
亜紀がグラスを傾けながら言い切る。
「そして――仕事人間の直也くんに本当に必要とされるのは、やっぱり私たちなの。だからこそ、この局面で一番怖いのは麻里よ」
玲奈が頷き、さらりと結論を下す。
「まぁ、莉子さんには悪いですが……早々に“負け確ポジ”って事でご退場いただきましょう。その上で、やっぱり麻里相手の決戦を戦い抜くことに集中すべきですね」
(……いやいやいや! 勝手に“ご退場”とか宣告すんなよ! 幼馴染だって生き残りワンチャンあるだろ! この二人、本当に容赦ねぇ。五井物産のバリキャリ女子って、ビジネスだけじゃなくて、プライベートでも他人の人生コストカットする鬼畜かよ)
ため息をつきながら、オレは再び思う。
(なんなんだよ一ノ瀬直也。義妹、元カノ、バリキャリ二人、そして幼馴染……お前の周囲どんだけ美女で固められてんだよ。オレなんか昼休みに誰からも声かけられず、コンビニの弁当食ってんのにさ。……雲泥の差すぎてムカつく以外の感情が出てこねぇ)
そこへ、またもや軽やかな声。
「ストロングをお願いします」
(……えっ、今度はストロング!? シャンパンから赤、白、そしてストロング? お前ら飲みのカテゴリ横断してんじゃねぇよ! プレエコでストロング頼む女なんて初めて見たわ。そもそもストロングがある事もびっくりだよ。やっぱり化け物だ……五井物産バリキャリ女子、恐ろしすぎる……)
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