第4話 妖精さんに出会う直前


【本文(166行)】

きっかけは3年前、私の住むお屋敷で行われたお茶会でございました。


招待した伯爵令嬢のエクレア・アプリコットが、『ノエルが自分のアクセサリーを盗んだ』と告発したのでございます。



「違います!私……盗んでなんかおりません!」



現場は阿鼻叫喚。


私には覚えのない罪でしたので、必死に否定をいたしましたが…なぜか私の部屋から彼女のアクセサリーが見つかったことで、私に盗難疑惑がかかってし待ったのでございます。


当時12歳、デビュタント直前の私は純真で、お茶会の参加者に真っ直ぐに無実を訴えましたが……あまりにも状況が悪かったのです。



「ノエル、君の領地が貧困に喘いでいるのは理解しているが、だからといって、他人のものを盗むとは何事だ!君は心まで貧しくなったのか!」



私の婚約者トルタ様は、私を睨みながらそう怒鳴り、泣き喚く彼女の方に手を乗せて宥めていました。


彼なりにアプリコット伯爵令嬢を守ろうとしているのは見て伺えたのですけれど、守る相手が違うのではないのでしょうか?


それに大勢の人の前で辱めるのは納得できるものではございません。


でもこれも仕方ないのかもしれませんね。


彼女は伯爵令嬢、私が子爵令嬢。

これだけで真実がどうであれ、この場合地位の高い方の意見が優先されますもの。


その上、私にはアプリコット伯爵令嬢からアクセサリーを奪う動機を周りが想像できてしまったのです。


婚約者様が言った通りの状況に加え、父は打開策で始めた事業を失敗しており、領民からのバッシングされておりました。


この日のお茶会も、『ウチでお茶会主催する程度には裕福です』という見栄を張りたい一方『よければ融資してください』という魂胆が透けて見える状況なのでございます。


幸いパティシエの腕がいいおかげで、お茶とお菓子はクオリティーを保ててございましたが……それ以外はお粗末で、ヒビの入ったボロボロ屋敷に少ない使用人。


私がきているドレスやアクセサリーがだって質素かつ流行のものではないのでダサダサで……結構ヤバい状態だと言うのは想像するのに難しくないのでございます。


この状況で、私の部屋から彼女のアクセサリーが出てきたら、『自分じゃない』と言い続けたところで意味はないのでございます。



「ノエル、他人のものを……それも友の物を盗むなんて、言語道断だ!」



そして婚約者様は私にビシッと指を刺して、こう言いました。



「君との婚約は破棄させてもらう!」



ということで、婚約は破棄されてしまいました。



今でこそ前世の記憶を取り戻してはおりますが、当時は思春期真っ盛りのと年相応の女の子。

多感な時期にこんなことになって、泣かないはずがございません。



お茶会に参加していたみなさんが帰った後、屋敷の庭のテーブルで一人ワンワンと泣いていました。



「お嬢様、お菓子でも食べて気を休めてください」



私の背中を撫でながら、使用人のマルガリータがそう言って慰めてくれました。

そして少しでも心が落ち着くようにと、はちみつ入りの紅茶と、焼きたてのクッキーをいっぱい持ってきてくれて、机に置いてくれましたが……


いくらスイーツ好きの女の子でも、失恋の痛みは食べ物では癒せません



「お菓子なんかいりませんわ!一人にしてちょうだい!」



そう言って彼女を怒鳴りつけると、また突っ伏して泣いてしまいました。


マルガリータは、流石に手がつけられないと判断し、申し訳なさそうに頭を下げると屋敷の中に戻っていくのだった。


こうして望み通り一人になってのですが、望みが叶ったところで気持ちが落ち着くわけもございません。



「う…………うわああああああああああああん」



私はクッキーが置いてある机に突っ伏してわんわん泣き続けました。



「何が妖精のいたずらよ!!そんな言い伝えがあるから、利用する人間が出てくるんじゃない!!」



この国には妖精がいる。

妖精は恥ずかしがり屋で姿を見せない。

だからお目にかかれることはとても稀。


でも時々いたずらをしに家の中に入ってくる、それは幸運を運んできた証拠。

ものがなくなったら、草むらをかき分けてみて。

妖精に会えるはず。


子供の頃から何度も何度も聞かされてきたこの話。

妖精に会いたくて何度も草むらを探したけど、会うことはできなかった。


全く……何が幸運よ……

そんな話があるせいで、言い伝えを利用して不幸になっちゃったじゃない!



「妖精がいるなら出てきなさいよ……!うわああああああああああ!!!」



そんでもって今からでも幸運を運んできなさいよ!!


そんな絶望しきった私は、自暴自棄になって表でも裏でも妖精に対して文句を言い続けました。


もはや八つ当たりレベル。

妖精は何も悪くない。


それでも何かに当たらなければ、やってられなかったのです。


どうせ会えないなら、文句言ってもいいじゃないか……そう思った時のことでした。




『おかしだ』



『ほんとだ、おかしだ!あの子食べないのかな?』



『かわいそうに…あの子ないてーら』



『落ち込んどるなぁ。こういう時って食欲出ないよね?これは食べないものと見た!』



『だったら残すのかな…?そんなのお菓子がもったいないよ!もったいないお化けが出る!』



『やだなにそれこわーい!』



だれ……?


なんの声?


どこからともなく突然声が聞こえてきました。

聞いたことのない……子供が話してるような……


そんな声が。

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