ドーナツ・トランペット  バーガーリーパー

マサ・イワムラン

第1話 ドーナツ・トランペット、登場!

この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・出来事とは一切関係ありません。 


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 殴ったのに、倒れていたのは俺だった。

 小学校の音楽室の床に無様にひっくり返った俺の上に、冷たい声が響いた。


「もしも将来、世界がひっくり返って、あんたがアメリカ大統領になったって、絶対あんたに服従しない。わかった? ドーナツ・トランペット」


                $ $ $


 1957年。ニューヨーク・クイーンズ地区――。


「ビッグパック、100個だ!」


 地元の人気バーガー店、『パクドナルド』のカウンターで、俺はかみつくように言った。赤毛にモジャモジャ頭の店長・パクドナルドは、怒りの収まらない俺を見て、ピエロのようにへらへらと笑う。


「ドーナツ、やけ食いか?」


「小学校にクソみたいな女がいるんだよ。俺にあれこれ指図する。俺は、キー・フォレスタ小学校の王様だぞ」


「坊ちゃんお嬢ちゃんの王様か」

 

 パクドナルドは、俺が通う私立小学校を小馬鹿にしてみせる。


「いくら王様でも、小学生に100個は無理」


「これは俺の勝負だ。絶対勝つ」


「今まで、ビッグパックを100個食ったのは、あの大食いプロレスラー、パイスタック・カルボナーラだけだよ」


「とにかく、今、ママからお金をもらってくるから……」


 と、振り返った俺は、トレーを持って歩いてきた男にぶつかった。紙コップが宙を飛び、冷たいコーラが俺の白いシャツをべったりと濡らす。よれよれのダイオウイカ柄のシャツを着た冴えないおっさんは、俺の方を見ると、そのまま逃げるように店を出て行った。


「謝れよ! ったく、なんだ、あのクソダサいシャツ」


その時、カウンターの上にドンと金が置かれた。


「101個だ」

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