蝕む変化
第25話 風が運ぶ小さな変化
ソフィアが不良グループの補習を担い始めてから、アエルのクラスメイトたちは、彼女の変化に気づき始めていた。教室全体に広がるその異様な空気は、誰もが無視できないほどだった。
最初は、不良たちに利用されているソフィアを心配し、声をかけようとする者もいた。
「監督生さん……大丈夫ですか?無理してませんか?」
だが、ソフィアはただ淡々と、彼らの要求をこなしていく。授業が終わるとすぐに、まるで義務のように不良たちの元へ向かい、夜遅くまで課題のまとめやアドバイスを準備しているようだった。
「……大丈夫。これが、私の仕事だから」
ソフィアの口から出るのは、いつも決まった言葉だけ。その瞳には、以前のような静かな光すらなく、ただひたすらに淀んだ色が濃くなっていた。彼女の周りには、他者を寄せ付けない、冷たい壁が築かれているようだった。
「なんか、ちょっと前までと違うよな。前はさ、魔力が上手くいかない時に相談すると、ちゃんと僕たちのこと見てくれてるって感じがしたけど、最近はただの作業って感じがする」
「……あいつ、本当に大丈夫なのかな」
クラスメイトたちは、ソフィアの様子に違和感を覚えていた。彼女は、もはや「監督生」としてではなく、まるで感情を持たない人形のように、不良たちの言いなりになっていた。彼らは、ソフィアの心を蝕んでいく、見えない『悪』の存在に気づき始めていた。
特に、ソフィアと親しくなったアリスは、その変化に強く心を痛めていた。
「ソフィアちゃん、ちょっと話があるの!」
ある日、アリスが廊下でソフィアを呼び止めた。ソフィアの腕を掴もうとしたが、その瞬間、ソフィアはサッと身をかわした。
「……ごめん、アリスさん。今、急ぎの用があるから」
その声は、アリスに向けて話しているはずなのに、まるで録音された音声のように感情がなかった。
「ソフィアちゃん……!無理してるでしょ?顔色だって悪いし、私たち、友達じゃん!少しは頼ってよ!」
アリスは必死に訴えたが、ソフィアの表情は変わらない。
「……心配してくれてありがとう。でも、大丈夫。実践魔法の課題は、明日までに確認するから」
「課題」。ソフィアの口から出てくるのは、もはや仕事や義務に関する言葉ばかりだった。
「そういうことじゃなくて……!」
アリスが言葉を詰まらせている間に、ソフィアはもう早足で立ち去っていた。
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暗闇を包む白狐 〜もふもふ使い魔に溺愛される少女は、今日も誰かの道具になる みたらしおだんご @MitarAshi-0dango
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