第19話 テラでの授業
アクアでの一週間を終え、ソフィアは次にテラの教室へと足を踏み入れた。テラの生徒たちは、黄色い腕章が示すように、大地のように頑固で、一度決めたら梃子でも動かないような、強固な意志を持っていた。彼らの雰囲気は、これまでのアエルやアクアとは一線を画していた。
教室に入ると、生徒たちはすぐにソフィアを取り囲んだ。
「よう監督生、噂は聞いてるぜ。魔力がないのに、魔法がわかるんだって? 嘘だろ、どうせインチキだ」
「私たちのテラの魔法は、気力と魔力。いくら頭が良くても、体が動かなきゃ意味がないわ」
彼らは、ソフィアの能力を簡単には信じなかった。テラの魔法は、最も力強く、そして最も繊細な魔力の制御を必要とする。大地を操り、岩を動かすには、理論だけではどうにもならないという自負が彼らにはあった。当然、ソフィアのアドバイスは、最初はほとんど無視された。
しかし、ソフィアは諦めなかった。彼女の目的は、彼らの信頼を得ることではなく、自分の役割を果たすことだと、心を閉ざしていた時のように、ひたすら目の前の「仕事」に集中した。
授業中、彼女は粘り強く生徒たちの魔法を観察し続けた。腕の角度、力の込め方、魔力の流れの微細な停滞や揺らぎ。彼女の分析眼は、彼らが気づかない無駄な力や意識の分散を見抜いていた。
ある生徒が、巨大な岩を動かす魔法に失敗し、苛立ちを露わにしたとき、ソフィアは静かにその生徒の傍に立った。
「……石を動かすんじゃない。石の奥にある、眠っている力を呼び起こすイメージで」
ソフィアの言葉は、まるで魔法の力の根源を言い当てているかのようだった。その生徒は、半信半疑でソフィアの言葉を試した。
すると、これまでびくともしなかった巨大な岩が、わずかに、しかし確かに揺れた。
その瞬間、テラの生徒たちのソフィアを見る目が完全に変わった。彼らの頑なな心に、ソフィアの言葉が、大地を揺るがす波紋のように広がったのだった。ソフィアは、その場を離れ、また別の生徒の元へと向かった。彼女の仕事は、まだ終わっていなかった。
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