第8話 嘲笑と変容
寮の廊下は、初めてのホームルームを終えた生徒たちで賑やかだった。これから食堂に向かうのだろう、楽しそうな話し声や笑い声が飛び交っている。だが、ソフィアとフーヤオが姿を現した瞬間、その賑やかさは潮が引くように不自然に静まり返った。
「あれが、魔力がないのに使い魔を連れてるって噂の……」
「監督生だってさ。なんか、裏口入学を隠すための口実らしいよ」
「マジかよ、最悪じゃん。そんな奴が俺たちのこと見張るのか?」
「ああいう奴って、人のこと道具としか思ってないんだぜ」
ありもしない噂や嘲笑う声が、さざ波のようにかすかに聞こえてくる。だが、ソフィアはそれらの声に一切反応しなかった。彼女の淀んだ瞳は、ただひたすらに前を向いている。
「あやつらも所詮は子供じゃ、気に病む必要はあるまい」
フーヤオがソフィアの足元で囁いた。彼の言葉は、ソフィアの心を気遣うように、静かに、そして優しかった。
「……分かってる」
ソフィアはただ短く答えた。彼女にとって、こうした拒絶の視線や言葉はもう慣れっこだった。むしろ、それが当たり前の日常なのだ。彼女の心は、何一つ揺らぐことはなかった。
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食堂の中は、生徒たちの活気で満ちていた。楽しそうな話し声や、食器がカチャカチャと鳴る音が響いている。ソフィアはその喧騒の中、静かに食事の列に並んでいた。
「さてと、折角の日じゃ」
ソフィアの後ろに立っていたフーヤオが上機嫌な声で言った。その瞬間、ソフィアの足元にいた小さな白い狐がふわりと光を放つ。光が収まった時、そこに立っていたのはソフィアの身長をゆうに超える長身の青年だった。毛先が赤い白髪に、同じ色の耳と尾。和服をまとったその姿は、周囲の喧騒を忘れさせるほどに妖艶で美しかった。
「ソフィアの隣で夕食を楽しむとしよう」
人に化けたフーヤオの声は、普段の愛らしい声とはかけ離れた低く甘い響きだった。周囲の生徒たちが驚きに目を見開く。
ソフィアは、そんなフーヤオを見上げ、ぽつりと呟いた。
「……追加料金かかるのかな」
フーヤオはソフィアの言葉にジトリとした目でツッコミを入れた。
「気に病むところそこで合ってるか?」
その様子に、食堂のスタッフらしき女性が笑顔で話しかけてきた。
「使い魔さんのお食事は一緒についてきますよ」
ソフィアは、その言葉に安堵したように小さく息をついた。
「……そうなんだ、ありがとう」
ソフィアが礼を言うと、女性は微笑んで彼女たちのトレイに温かいホワイトシチューとバターロールを乗せた。
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