王子さまと委員長 声劇台本
塚原蒔絵
はじまり
『』 語りの部分
【】台詞の後ろで流れる部分(カットする場合もある)
「」通常の台詞
()感情説明
◆ 状況説明
○ シーン(物語の区切り)
◆ナレーション
木島『王子さまのキスで目を覚ます。それはお姫さまだけに許された特権。でも。でもさ。王子さまにだって、お姫さまを選ぶ権利はある! そう思わないか?』
◆クラス劇の稽古中
※木島は王子さま・新垣は悪い魔女・関野はよい魔女役
木島「くそ、ここまで来て茨が邪魔をするなんて!」
新垣「さて、王子、お前はどうする?」
関野「王子よ、どうか姫を救ってください!」
木島「もちろん――(台詞が思い出せない)う、えーっとぉ」
新垣「……(急かすように)王子よ!」
関野「……(大丈夫か? と思いながら)おーい、王子ー?」
木島「あ……ちょっと待って、確か――」
三森「かぁーっと!」
◆稽古が終わり、教室の電気がつく
木島『大きな声が聞こえたかと思うと途端、薄闇かった空間に光が差し込んできた。これは蛍光灯の光だ。明るくなると見える時間割に黒板。そんな中、教壇で小型メガフォンを持った委員長がメガネを光らせている』
新垣【本気で息苦しいんだなー、このローブ】
関野【あーうん、わかるわかるー】
三森「木島くん。台詞覚えてないの?」
木島「ごめん、なんだっけ」
三森「ああ、僕は姫を救いに行く! 茨など恐れるものか、愛のためならばいかなる苦難にでも耐えてみせる。それが試練だというのならば喜んで受けよう。さあ待っていてくれオーロラ姫、君を目覚めさせるのはオレの役目だ! だよ」
木島「(カラ笑い)うんそう、そんな感じの台詞だったかなー」
三森「(ちょっと不満)あー、覚えてないなー」
木島「う……でも、なんでセリフがこんなに長いんだ? 愛とか試練とか、しかも最初は僕って名乗りながら最後にはオレになってるし」
三森「そこは……好きなほうで言っていいよ」
木島「適当でいいと?」
三森「適当はダメ! 演技に適当なんてないの。木島くんは王子さまなんだよ。お姫さまが待ち焦がれる素敵な王子さま! んーでも、木島くんならオレのほうが言いやすいかなぁ」
木島『そう言いながら委員長は台本にメモをする。周囲の連中は自分がお叱りの対象じゃないからって、のんびりムードだ。裏方連中は雑談してるし、魔女役はローブが暑いのか、服をパタパタさせている』
三森【王子さまなら僕って言ったほうがいいのかなぁ。でも木島くんが僕って言うと……うーん、やっぱり掛け合いしながら決めるのが一番だよね。よし、ってあれ?】
三森「木島くん、聞いてる?」
木島「聞いてるよ、聞いてます」
三森「じゃあ、さっきのところ、もう一回!」
木島『そう言って嬉しそうに台本を握り締める委員長。普段は見せない満面の笑み。コレが二人っきりだったらとか、考えても仕方ない。くそう、どうして俺が王子さま役なんて! 助監督とかだったら、もっと近くにいれたのに』
三森【ほーらみんな、休憩時間は終わったよー。位置についてー】
新垣【えーもう】
関野【委員長の鬼、悪魔! 人でなしー】
三森【演劇のためなら、人でなしになるんですー】
木島『普通、童話の世界の王子さまは綺麗なお姫さまに恋をする。けれど俺が恋したのはお姫さまじゃない。そんな世界に行きたいだなんて言わない、物語の語り手となる少女。どうしてそんな少女に恋をしたのか? そんなの俺の勝手だ。でも少しだけ、俺が委員長といたときの話をしよう。あれが高校生活のアオイハルだろうし、俺の初恋だから』
◆次回予告
三森「出会いは本当に突然で、すごくビックリしたのを覚えてる。木島くんが空から降ってきて、亜子ちゃんが怒って、ジョンが踏まれて。大変な一日だった。でも、私にとって、すごく特別な一日になった。そう、あれが、恋の始まり――。次回、王子さまと委員長『たんぽぽにょっきり』お楽しみに!」
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