冷たい風が運んでくるもの

sui

冷たい風が運んでくるもの

冬の夜、湖のほとりに小さな家があった。

窓辺に座る少女ハルカは、外の世界をじっと見つめていた。父を失ってから、彼女はよくこうして夜を過ごす。


その時、冷たい風がひとすじ、部屋に忍び込んだ。

ハルカは驚かなかった。なぜなら、その風がただの冷たさではなく、

どこか懐かしい匂いを含んでいるのを知っていたから。


風はページの開かれた本を揺らし、そこに載っていた詩の言葉を空中へ舞い上げる。

光の粒のようになった文字たちは、ハルカの目の前で父の声に変わった。

――「大丈夫。まだ夜は長いけれど、必ず朝は来る」


涙が頬を伝ったとき、不思議と心は冷えなかった。

冷たい風が運んできたのは、冬の寒さではなく、

確かにここに生きていた人のぬくもりだったのだ。


やがて風は去り、部屋は再び静かになった。

けれど窓辺に残ったハルカの心には、小さな灯火が宿っていた。

それは、どんな冬の冷たさにも消されることのない光だった。

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冷たい風が運んでくるもの sui @uni003

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