第15話
「エルさんと結婚させてください」
家へ送っていったついでにそのままヤーサはエルの父親の所へと突撃した。
エルはもう少し準備をしてからと少しごねていたが体調の事もあり自室へ強制的に送られ、ここにはいない。
最後までせめて私の目の前でとか抵抗していたが、ヤーサとしては譲る気は無かった。
一分一秒でもはやく、長く一緒にいる為に。
「…………」
エルの父親は突然すぎてとても戸惑っている。
ヤーサは頭を下げることをやめない。
エルの父親はそんなヤーサをじっと見つめ、少しすると合点がいったように頷き、ヤーサに話しかけてきた。
「……いつだったか、あの子が寝込んだ時にお見舞いに来てくれたことがあるね」
「はい」
エルの父親のいう昔話に覚えがあり思わず頭を上げた。
何故かわからないがもうエルだけじゃなく全体的に魔法が解けている。
しかしそのおかげで多少すんなりと事が運ぶこととなった。
「あの日以来エルは前を向けるようになった。今のエルがいるのは君のおかげだろう」
「……それは違います。僕が居なくてもエルちゃんはしっかりと正道を歩いたと思います」
「そうかもしれんが、それはもしかしたらの話だ。今のエルがあるのは紛れもなくあの日君がいてくれたからだ。感謝している」
「……ありがとうございます」
エルちゃんの強さを舐めないでもらいたいと、反論しようかとも思ったが、これ以上は押し問答になると考え、そこでヤーサは引くこととした。
「話を戻すがエルと結婚したいと言ったね」
「はい、今すぐにでも」
こちらの真意を探るかような視線がとんでくるが真摯に受け止め、この気持ちは嘘じゃないとばかりに絶対に目を逸らさないヤーサ。
「――うちの娘は弱いぞ」
「俺が守ります」
少し震え気味の声に誠意をもって返答する。
決意を表に。
「――うちの娘は古臭い貴族なところもあってめんどくさいぞ」
「そんなところも愛してます」
涙気味の声に誠意をもって返答する。
真意を表に。
「――う、うちの娘は……」
「どんなであろうと、何があろうと俺が愛し守ります」
ヤーサは力強く宣誓をした。
エルの父親は涙をぬぐい、君が求めていた風となってくれたかと呟き結婚を認めた。
「娘を頼む」
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