第12話




「おい、大丈夫か!?」




 ヤーサが命からがら血だらけでエルを背負いながら学園につくころにはすっかり他の生徒も帰ってきている頃であった。


 ヤーサは何も言わず、ここに来るまでに目を覚まさなかったエルとSランクの魔物を討伐した証を教師に渡し、クラスの方へと向かう。


 Sランクの魔物の討伐証を目にした教師達は驚き詳しく話を聞きたがっていたが、それどころではない。


 急いでどこかに行こうとするヤーサの雰囲気は触れるもの全てを壊してしまうような感じがし、そもそもSランクの魔物をソロ討伐出来ない教師としては声をかけることも追うことも出来なかった。

 

 ヤーサよりもひと足早く帰還していたエルとよく一緒にいるメンバーを見つけ、問い詰めた。 


「なんでエルちゃんと一緒のパーティーを組まなかったの?」




 怒りをこらえて怒鳴らないようにしてはいるものの無意識に魔力が声にのり周囲を威圧する。


 


「……その……」


「何?」


「いやっ、そのっ……」




 怯えてしまってなかなか話にならない。


 イライラを抑えて次の言葉を待つ。




「……彼女がヤーサ君が話しかけてきてくれてるってのに無視するから」


「は?」




 突然出てきた自分の名前に一瞬ぽかんとしてしまう。


 メンバーの中にサンの告白を断った後に告白してきた娘がいることに気付く。


 それを見てやっと何を言ってるのかが飲み込め始めてくる。




「ふ、ふざけっ――――」






 耐え切れずに怒鳴りそうになったがヤーサは小さいころを思い出した。


 初等部の頃ヤーサを無視したことにより孤立が進んだことを。


 あの時からヤーサは自分が持つ影響力と言うものを全然理解していなかった。


 師匠にあれだけ沢山の事や別の文化を教えて貰っていたのにも関わらずにもだ。


 客観視は出来ているつもりだった。


 にも関わらず、この有様だ。


「なんだよ、結局懲りてないのは僕のほうで全部全部俺が悪いんじゃないか……」




 自分を責めずにはいられない。




「最悪だ、俺は」




 ヤーサは女子生徒に背を向け一人消えていった。


 

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