女装好きの僕がダンジョンでお姉さんを助けたら配信者にされた話
モロ煮付け
第1話 出会い
女装...それは男だけがやることのできる趣味
僕―
でもそんなのはいつまでも続くはずがなくて...妹にバレた。
妹はそんな僕の姿を見て最初こそ驚いていたがメイクの仕方とか女の子らしい振る舞い方を教えてくれた。
僕は最終的に...
ダンジョンに女装で行くことになった。
なんでと思うでしょう。僕もおかしいと思う。妹に煽られてやり始めたのだが、いかんせんダンジョン初めて数日のときにやり始めたからかもう僕の中で習慣になってしまった。習慣怖い...
それはそうとして今日もダンジョンに女装をしに行く。
"ダンジョン"は僕が生まれる数十年前に突然各地でダンジョンが乱立したらしい。スタンビードなどデメリットもあるがそれ以上に倒したモンスターから取れる資源が豊富なのでダンジョンを"管理"する方針にしたのだ。
入口で受付を済ませてダンジョン内部に入っていく。浅層のモンスターを倒してもドロップアイテムの買い取りが少ないので飛ばす。ダンジョンに"適正"がない人の限度はここまでらしい。今日の目的は中層のオークナイトだ。人型なので食べるのに忌避感を持つ人が多いらしいがオーク系統の肉は基本おいしいので積極的に狩りたい。
しばらくオークナイトを狩ってはドロップアイテムをアイテムポーチに放り込んでいくと悲鳴が聞こえた。
女装の方は女の子のなかでも可愛い方になってきたと自分でも思うのだけど、声の方はそうにもいかない。もちろん女声の練習練習もしてるけど女装と違って急激にうまくなることはないんだよ。なのであんまりダンジョン内で人と関わりたくない。
とはいえ、見捨てるのも寝覚めが悪いから助けに向かう。中層だったら僕も助けに入る余裕もあるし最悪喋らなければいいのだ。そんなことを考えていると女の人がドラゴンナイトと交戦しているのが目に写った。ドラゴンナイトは最低でも下層からのモンスターなので明らかにおかしい。僕はまた一段階走るスピードを上げた。
「こ、来ないで。なんでドラゴンナイトが中層にいるの?い、いやだ、いやぁ。」
女の人のロングソードがドラゴンナイトの槍に弾かれる。ドラゴンナイトの槍が女の人に振り下ろされる直前――僕が間に滑り込んだ。
「お姉さん、少し大きめの武器を使うので離れてもらえますか?」
僕はなるべく親しげな笑みを浮かべながら問う。アイテムポーチに使っていたショートソードを仕舞って大鎌を出す。
「ど、ドラゴンナイトだよ...私のことはいいから逃げて!中層レベルじゃ敵う相手じゃないよ!」
お姉さんがなにかを言っているが僕の耳には届かない。僕は助けるまでの腰は重いけど一回助けると決めたら絶対に諦めない。
再びドラゴンナイトと向かい合って大鎌を振るう。ドラゴンナイトは袈裟斬りに振り下ろされた鎌を後ろに飛んで避け槍を突き出してくる。なるほど、このドラゴンナイトは明らかに"対人"慣れしているようだ。ならば方法はある。僕はドラゴンナイトが振り終わりに突き出してきた槍を皮膚一枚のところで回転して回避しながら大鎌を再び振り下ろす。このドラゴンナイトは大武器の振り終わりを狙ったようだが大鎌は上手く使えば連撃が可能な武器だ。
その隙をついてドラゴンナイトを斜めに切り裂いた。
残心。
ドラゴンナイトが青い粒子に分解されドロップアイテムを落としたところで残心を解く。先程のお姉さんの方を振り返ると...
「すごい、ドラゴンナイトをこうも簡単に...かっこいい。」
かっこいい?この女装姿で可愛いとナンパされたことは幾度もあるがかっこいいと言われたことはないから少し驚いた。
「さ、先程はありがとうございました。まさか中層にドラゴンナイトが現れると思いませんでした。配信をやらせてもらっ―あ、」
お姉さんはなにかに気づいて宙に浮かんでいるカメラをいじりだした。
しばらくすると諦めたように申し訳なさそうにこっちに向かい直した。
「すいません、私の名前はノムです。ノムという名前で配信やらせてもらっています。で、本当に申し訳ないのですがドラゴンナイトとの戦闘でか、カメラを消し忘れてて。あなたが写ってしまって...」
お姉さんは申し訳ないように言葉を紡ぐ。
僕が配信に写っているのはまずいかもな。僕はまだ社会に出ていない大学生だ。身バレもとより趣味バレは避けたい。
「そこで、できればなんですけど配信に出てもらえないでしょうか?下層レベルでこんなに可愛い人って少ないですよね?それで中途半端に探られるより配信に出てもらえたほうが騒ぎが収まるかなと...」
たしかに下層レベルとなると女の人も男の人もゴリゴリマッチョが多くなる。なので可愛い女の子(女装) の僕が探られるかもしれないということか。僕が探られる分には不快なだけだが妹にも被害が及ぶ可能性があるなら説明して騒ぎを収めるべきか
「わかりました。配信にでますけどあなたのチャンネルは騒ぎになるほど規模が大きいんですか?」
お姉さんがためらいながら答える。
「そうですね、一応80万人くらいいるので...」
覚悟を決め僕はカメラに向かって喋り始める。
「はぁ、ボクはA級冒険者の―ひまわりです。ひまわりと呼んでください。主に中層で活動していますが最終到達階層は下層の7層です。よろしく~。」
適当に自己紹介をしておく。ギルドには日向葵とだけ登録してあるのでひまわりと紹介しても問題ないはずだ。お姉さんがその後配信を締め、僕に話しかける。
「ほんっっとうにありがとうございます。助けて頂いたうえに配信で説明してもらって...感謝します。」
お姉さんはものすごい勢いで感謝を伝えてきた。僕も少し引くぐらいだったが彼女からしたら命の恩人なのでそんなものだろう。なんて考えていたら図々しいお願いをしてきた。
「あの、配信やってみませんか?」
意味が分からなかったのでお姉さんに聞き返す。
「そのままの意味です。ここまで派手に出た上に一般人となると特定部隊なるものがうるさいでしょう。配信者になれば少し自重する人も増えるでしょうしそれを止めようとするファンも出てくると思うのでデメリットだらけではないです。話だけ聞いてください。それに―」
お姉さんが何かを含んだ笑みを浮かべる。
「それに?」
「それにあなた男でしょう?」
僕はその答えを聞いた瞬間すべての抵抗を諦めた。
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