第2話 共同生活のはじまり

最初のうちは、意外と快適だった。


美咲の家は広く、互いのプライバシーも確保できた。家の中には美咲が大切にしている観葉植物が並び、どこか温かみのある空間だった。大きな窓からは陽が差し込み、昼間は明るく開放的な雰囲気に包まれる。


家事は分担し、美咲は料理を担当、健二は掃除と経済的な管理を請け負った。


「うわ、これ美味いな」


健二は箸を止め、目の前の肉じゃがをじっくりと味わった。ほどよい甘さが染み込んだじゃがいもに、懐かしさを感じる。


「当然よ。元カフェオーナーの腕前を舐めないで」


美咲は得意げに笑いながらワインを一口飲んだ。


「……離婚してから、自炊ばっかりだったからな。ちゃんとした飯を食べるのは久しぶりだ」


「じゃあ、もっと感謝しなさい」


食卓には笑いが溢れ、穏やかで楽しい日々が続いた。


だが、時間が経つにつれ、価値観のズレが見え始める。


「お前な、冷蔵庫の整理くらいちゃんとしろよ。消費期限の切れたものがあるぞ」


「うるさいわねぇ。ちょっとくらい平気よ」


「そういう問題じゃないんだよ」


「几帳面すぎるのよ、健二は」


健二はため息をついた。美咲は気にしない性格だが、健二にはそれがどうしても気になる。二人の間には、小さな意見の食い違いが積み重なっていった。


それぞれの考えが交錯する中、二人の生活はゆっくりと続いていくのだった。


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