第8話「黄泉津大神( よもつおおかみ )」
北斗は前世では頭でっかちでぼたもち顔の、デブでちんちくりんの超ブ男だったので良い事なんて何にもなかった。
コンプレックスの塊で親を恨んだこともあった。
「母ちゃんどうして僕だけこんなずんぐりのブ男に産んだのさ」
「なーにを言っているんだい。お前はそのまんまる顔が特徴さ。みーんな一緒の顔だったらつまらないだろう?」
「でも……僕だってカッコよくなりたい!」
「子供の時はあんまりパッとしなくても、大きくなったら見違える様に変わるさ。はっはっは😄」
(人の事だと思って……のんきな事言いやがって……母ちゃんに似てこんなブ男になったこと忘れるなよなあ😩💢💢💢。こちとら相当悩んでいるのに……いい気なもんだ)
それでも…唯一の望み、大きくなったら見違える様に変わると期待して、母から言われたことを信じて大人になった北斗だったが、かえって図体が大きくなったことで余計に悪目立ちが著しくなった。
👻👻👻
それでも…こんな俺でも一丁前に女の子を好きになった事もあった。いつも虐められていると、かばってくれる成績優秀だが、決して美人ではない学級委員長北野七海だった。
ガリガリの出っ歯が目立つ、漫画おそ松くんに出てくるイヤミにそっくりな女の子だった。やっと同じ人種に会えて親しみを感じ近づいた。
あれは確か……小学校3年生だった。
ブ男でちんちくりんでデブな俺は、いつものように悪ガキ「西村太陽」たちに、いじめの標的にされていた。
「ブサメン!家畜以下のブタ!デブゴリラ!」
最近は全てを受け入れ、反発する気力もなくなりすっかりなえてしまった僕は、どんな事も受け入れるようになっていた。
「嗚呼……いかようにも……その通りでして……えっへっヘッヘッ!😅」
「ブタ🐖の真似をして見ろ!」
「えっへっヘッヘッ!😅さようですか。あっハイ😣ブー🐽ブー🐽ブー🐽」
そこに現れたのが学級委員長北野七海だった。いつも虐めの標的に遭っている時に現れる女救世主的存在だった。それも新学期の学級委員選抜時期に特に顕著に見られる行動だった。まるでヒーローのごとく現れるエセヒーロー。
「なっさけないわね!言い返しなさいよ😩💢💢💢」
どうも……父親が政治家らしく「学級委員長になれ!」と強要しているらしい。
だから……普段散々イジメに遭っていても反対に一緒になってヤジ飛ばすくせして、この時期にだけ、弱者のヒーローを装って現れる腹黒さ。しっかり取り巻き引き連れて現れるので悪ガキ太陽も手出しできない。
「あっスンマセン!💦💦😰」ススッと逃げて行く太陽。
いくら偽善者だと分かっていても唯一助けてくれる学級委員長北野七海は、一時的にでも救ってくれる救世主である。
学級委員長になる為の踏み台であることは、イヤと言うほど分かってはいるが、それでもこんな子にでも、一時的にでもすがるしかないほど学校に居場所がない北斗だったので、いつの頃からか、恋心を募らせてしまった。
それと……七海ちゃんも決して美人じゃなく親近感が持てるからだ。どっちもブス同士で釣り合うと思い告る決意をした北斗だった。
(いくら俺がこんなだと言っても、七海ちゃんなら優しく受け止めてくれるかもしれない。あんな出っ歯誰も相手にしないだろう?)
そう思い告った事があった。
「あ……あ……あのー僕……あのー七海ちゃんの事が……七海ちゃんの事が……好きです」
「あなたのような自分も守れない弱虫大嫌い!私は只委員長になる為の票が欲しいので助けただけの事、あなたみたいなブ男近付かないで!」
「嗚呼……やっぱり……でも君だって……どっちこっちだと思うよ」
「あなたみたいな超ブ男と一緒にしないで!😩💢💢💢」
あの時のことは苦い思い出だった。あんなブスにも袖にされて、その挙句「あなたみたいな超ブ男と一緒にしないで!😩💢💢💢」とまで言われてしまった。人間とは人が思うほど自分をブスとは思っていない傾向にあると思った。
それでもだ。人間とは美しい容姿を手に入れてしまえば、こうもうぬぼれてしまうものなのだろうか?
散々辛い思いをした過去があるくせに、チョットイケメンになれたからと言っても、常世国での北斗の女子に対する態度は酷すぎだ。何故この様な酷い人間になってしまったのか?
自分が傷ついたのなら本来は人に優しくなれるのだが……。
👻👻👻
こうして宮中に入ることとなった北斗は、宮中のメイドたちに熱い視線を浴びせかけられ最初のうちは(こんな有り難い事は無い。前世では考えられない事)と喜んでいたが、女子たちの北斗争奪戦は益々活気を帯び、エスカレートして北斗を自分のものにとプレゼント交戦が激しくなった。
昔が昔だけに最初のうちは普通の子でも感謝感激で付き合っていたが、次から次にレベルマックスの女子から告られ、女の子を次から次に捨ててもなーんとも思わない、最近ではそれが普通になっている。
うぬぼれ、すっかり舞い上がり、最近ではいくら美人でも高価なプレゼントをくれない女子には見向きもしなくなっている。
「もう君とは終わりだ。僕は女王様の仕事で大変だから連絡してこないで!」
「私が何したって言うの。北斗捨てないで!わあ~~ん😭わあ~~ん😭わあ~~ん😭」
プレイボーイとなった北斗は、女など只の古着を脱ぎ捨て新生ブランドに着替えるくらいにしか思わなくなっている。
宮中にはメイドとしてとして働く幽霊女や、虫を助けて来た優しい女獣医やメスの虫たちが沢山働いている。最近は理想が一段と高くなり、美貌とプレゼントの品物で女子を選別している。
過去のブ男だったころを忘れてしまって、チヤホヤされすっかり天狗になってしまった。
こんな事が続いたある日女子が自殺未遂事件を起こした。何という事だ。北斗の体に異変が起きる。
(時々とんだブ男になるのだが?これは只の悪夢?)
どうも……罰が当たったようだ。 そんな時に北斗はどういう訳か、暗闇の世界に入り込んでしまう。一体どうしたというのだろうか?
北斗に何が起こっているのか、余りの傲慢な態度に常世神に睨まれてしまったのだろうか?
👻👻👻
黄泉の国は地下世界にあって真っ暗闇だ。黄泉の国の主宰神である「黄泉津大神( よもつおおかみ )」となったイザナミが現れて言った。
「北斗お前は何という傲慢な男になったのだ。前世では小心者で人に付き従う優しさを持ち合わせていたのに、美しい容姿を手に入れた事で、とんでもないうぬぼれた人を人とも思わない、人を傷つけても何とも思わない出来損ないになってしまった。この黄泉の国では、元のブ男に戻ってもらう」
「それだけは……それだけは……勘弁して下さい」
「ええーい!問答無用!😩💢💢💢」
そう言うと永遠世界の神様で「照天神」様が『テクマクマヤコン テクマクマヤコン ○○にな~れ』と唱えると、どんなものにも変身できると言う、その能力を封印してしまった。
北斗はまたしても前世同様の超ブ男になってしまったが、黄泉の国は真っ暗闇で今までのようにもろに容姿が炙り出される事は無い。それでも…真っ暗な世界だが月明かりで何か、にょっきり突き出た山並みが暗闇の中でも異彩を放ち、赤く不気味に照らされている。
その時恐ろしい光景を目の当たりにする。頭からは、大きな雷(かみなり)が、胸には火の雷が、腹には黒い雷が、陰部には裂けるような雷が、左手には若い雷が、右手には土の雷が、左足には鳴る雷が、右足にははねる雷の八種類の雷「八雷神」が、蛇雷になり恐ろし気な蛇としてその姿を現した。にょろにょろと発生してゴロゴロと鳴りひびいているかと思うと、美しいが凍り付くような鋭い視線の天女の恰好をした美女に巻き付いて行く。
⚡⚡⚡⚡⚡⚡⚡⚡
ゴロゴロ ゴロゴロ ゴロゴロ ゴロゴロ
その姿は、黄泉の国の「黄泉津大神」 イザナミの姿だった。
「ふっふっふ!黄泉の国にようこそ」そう言うと鋭い目付きで北斗を睨み付けた。
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