第三章
第73話 オタク、未踏地を目指す
素足が、首に絡みついている。
ベッドで裸のクルスさんがぼくの頭の上に座り、頭上から脚で抱きしめるように首を回している。
ぼくの頭の後ろには、クルスさんの脚の間の、大事なところが当たっている。
「うふふ……オタクくん、可愛い」
見上げると、クルスさんがご満悦そうに微笑んでいた。
裸の胸が揺れている。
「『両方』が当たってイヤじゃない、オタクくん?」
「イヤではないですけど……解放はしてもらえない感じです?」
ダメだよ、とクルスさんが言った。
胸や腹に回されている脚に力が込められて、ぼくを放さない、という意志を示してくる。
「今日はオタクくんはボク・の・も・の・だからね?」
「じゃあ、オタクくんの下半身はウチが担当するわ」
と言いつつ、ぼくのショーツを脱がしてくるリーシャさん。
ためらいがなさ過ぎていつもの光景だ。
「あーしねー、オタクくんも良いけど、クルスともやりたいんだわ」
そう言いつつ、クルスさんが脚を回しているぼくの顔にまたがり、ショーツを押しつけてくるエイジャさん。
そのまま二人は頭上で女性同士、手を絡み合わせてキスをしているみたいだ。
百合の花が咲いてるなぁ。
「ぷは。あの……なんで、ぼくはこんな目に遭ってるんです?」
「んん! オタクくんしゃべると当たるぅ……なんでって、オタクくんへの『ご褒美』じゃん? あーしらの活動方針考えてくれてんだし」
ぶるり、と身震いした後、ぼくに乗っかってるエイジャさんが教えてくれた。
確かに色々考えはしましたけど。
それを口実に、みんなの『ご褒美』になってませんか、これは?
「はぷ。んー、ウチらのご褒美とも言う」
正直ですね、リーシャさん。
そのまま逃げられないままに、みんなに好き勝手された。
*********
一段落して、やっと解放された。
他の三人はやり遂げた顔をして、裸でベッドに腰掛けてくつろいでいる。
「辺境伯家のリルカちゃんやシルヴァちゃんと繋がりができたわけだけどさー」
「珍しい素材を卸すって言っても、この辺だけじゃ限界があるよねぇ? オタクくんの飛行魔法で、遠出も考えてく感じ?」
最近の身の回りのことを振り返って、これからのことを話している。
なお、ぼくは参加できない。体力が尽きているからだ。
「王都近辺ならボクもわからないことはないけど、狩り場は少ないよ。むしろ、この辺境の方が自然は多いからね」
「都会だとそーなるかー。じゃあ、オタクくんの前のパーティの知識を頼って、狩り場巡りをするっきゃないか。……だいじょぶそな感じ、オタクくん?」
エイジャさんが聞いてくるけど、ぼくに声を出せる体力はない。
ベッドに倒れ伏したまま、何とか右手だけを挙げて大丈夫だと伝えた。
「嬉しいよ、オタクくん。……あーあ、こんなに攻められちゃって……ボクが抱きしめてあげるね」
そう言ってクルスさんは、倒れているぼくのベッドに移って添い寝した。
ベッドの上のぼくの身体を、裸のままぎゅっと抱きしめてくる。
柔らかい素肌のあちこちが当たって気持ち良い。のだけど、動けない。
回復魔法を自分にかけ続けなければ。
「出すのって、結構ツラいもんね? たくさん出せたね、偉いね。褒めてあげる。よしよし、オタクくんは良い子だよ……?」
抱きしめたままぼくの頭を優しくなでなでしてくるクルスさん。
ツラいのがわかってるなら、もう少し手心というものをお願いします。
「飛行魔法が使えるから、未踏地に行くのも良いかもね。エイオン山岳の奥や、魔獣の森の向こう側は人の生息域じゃないから」
「でもぉー、そこって隣の国との国境線になってるじゃん? 揉めない?」
クルスさんの提案に、エイジャさんが疑問を投げかけてくる。
確かに、エイオン山岳より向こうは国境線だ。
なんで人の住まない地が国境線になってるかというと、未開区域があるからだ。
魔獣の横行するこの世界で、開拓されていない土地はいくらでもある。
その未開区域を国境線にして、周囲に開拓された土地を人間の居住地にしている。
それが、この世界の現状だ。
だから、未踏地という未開地域に行くと、まだ解明されていない魔獣とかもいたりする。
ぼくの前のパーティでも未踏地に踏み込んだことはあったけど、その警戒の難易度からジオとマリスが再訪を拒否した。
もっと楽で安全に稼げる場所があるからだ。
「国境線だからって揉めたりはしないと思う。正確に言うと、未踏地はどこの国土でもないんだ。だから、資源があるなら誰でも採って良い。……踏み入れる人間がいるならね」
危険な話になってきた。
でも、このパーティの実力なら踏み入っても生き残れそうな気はする。
未開地にはドラゴンやベヒモスなんかの大型魔獣の住処がある、とも言われている。
もしそれらの希少魔獣の素材が手に入れば、危険だけど見返りは大きい。
「行ってみる? 未踏地。正直、自信があるわけじゃないけどさ。オタクくんなら何とかできんじゃね? とも思う。あーし、飛行魔法とか攻撃反射魔法とか、見たの初めてだし」
「賭けてみる価値はあるかな。少なくとも飛行魔法があるから、離脱はしやすいと思う。様子見だけでもしてみたいよ」
クルスさんは前向きに考えているようだ。
実際に、ぼくにも奥の手はいくつかある。
それらを使えば、大抵の危険は乗り切れそうな気はしている。
どんなに強い魔獣でも、衝撃を反射する防御壁を突破するのは容易じゃないからね。
時間が稼げれば、次の手が打てるだろうから。何とかなりはするだろう。
「じゃあ、オタクくんが回復し次第、ちょっと準備を整えてみようか。最初は無理せずに、偵察くらいの感じで行こう」
「それならさんせー! ウチも、いきなり素材採るまでは望みすぎだと思うんよ。慎重に行く気があるんなら、ウチもふつーに賛成すんよ!」
リーシャさんも賛成して、話はまとまったようだ。
まずは、地形調査と資源調査から。
その上で、採取ができそうなら、という方針なら良いと思う。
「んじゃ、あーしも賛成すんよ。……オタクくんも手ェ挙げてっから、大丈夫っぽい」
「じゃあ、決まりだね!」
未踏地にチャレンジか。
どんな魔獣がいることやら。
そう思っていると、バン、と宿の扉が開いた。
「あ、もう終わってしまいましたの!? 実家を出るのが遅れましたわ!」
「ざんねん、もうオタクくんは残ってないよん。売り切れました」
リルカさんだった。
諦めきれずにぼくに回復魔法をかけてくるリルカさん。
自分もする気満々でこの部屋を訪れたみたいだ。
も、もう今日は勘弁してください。
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