オタクに優しい冒険者 ~幼馴染に追放されたぼくは、イケメンのギャルハーレムパーティに紹介されたので、支援無双します~

荒木どーふん

第1話 魔法オタクは追放される



「魔法ばっか研究してる根暗野郎め! オスカー・ウィルズ、お前みたいにカンに触る奴は追放だ!」


 追放された。

 この世界でのぼくの幼馴染の少女、レールス・シアンは、パーティリーダーとしてぼくを見限った。


「レールス、無理だよ。きみだけじゃ、あの二人に良いようにされるよ。どれだけ資金の管理が甘いと思ってるんだ?」


「まだ言うか! とっとと出て行け!」


 荷物を投げつけられた。

 そして投げつけられる、一枚の銅貨。


 退職金ということか。レールスにとっては、ぼくの価値はこれだけだったんだな。


「良い気味だ、あんな奴は放っておいて、もっと装備に力を入れようぜ」


「美味い飯も食おうや。口うるさい奴がいなくなった記念によ」


 前衛とスカウトのパーティメンバー、ジオとマリスが、レールスを連れ去っていく。

 レールスの剣の才能は本物だ。

 あの二人はレールスの稼ぎに目をつけて、ぼくらのパーティに入り込んだ。


 そして、レールスをそそのかして、ぼくを追い出した。

 もう、彼女にぼくの声は届かない。


 楽しそうに話しながら肩を組んで、ぼくの前から去って行く。

 ぼくを置き去りにして。


 そうか。これが十六年間の仲間関係の終わりか。

 幼馴染と言っても、昔からいつもぼくにきつく当たってたレールス。

 もう、そのお守りをしなくても良い。


 レールスが無理にぼくを誘って始まった冒険者パーティだ。

 そのレールスがぼくをもういらない、と言うのなら、もう付き合う道理もない。

 さよならだよ、レールス。



*******



 さて、これからどう生きていこう。

 ぼくにある技術は、攻撃できない魔法くらい。


 一般的に、魔法士は後衛だし、火力を叩き出すダメージディーラーだ。

 なのに、ぼくには攻撃魔法の才能がない。


 十六年間、『産まれたときから』ずっと魔法の研究をしていたけれど。

 中途半端な攻撃呪文がせいぜいだ。


 それがぼく、『転生者』オスカー・ウィルズ。


 前のパーティではレールスの攻撃力が高かったから、ぼくはサポートに徹していた。

 バフや回復なら自信あるんだけど。

 バッファーが欲しいパーティなんて、都合良く募集があるかな?


 ぼくはぼくで冒険者を続けるなら、一人じゃ無理だ。

 どこかのパーティが拾ってくれないもんか。


 そう思って、ぼくは冒険者ギルドに来た。


 ここは討伐や採取、護衛の依頼の受注の他に、冒険者登録も受け付けている。

 とりあえずぼくは追放されたから、パーティ脱退の申請をしないと。


「おう、どうしたオタク。いつ見てもシケたツラしてんな」


 ギルドの受付は、引退した老冒険者だ。

 白髪交じりの頭に眼帯をした、山賊みたいなマッチョジジイ。

 美人受付嬢なんて、このギルドにはいない。


 この爺さん、ぼくを見るたびにいつも『オタク』呼ばわりしてくる。

 確かに魔法オタクだけどさ。


「パーティを追い出されました。脱退申請をお願いします」


「はぁ!? ……おいおい、マジかよ。レールスの奴、なに考えてんだ……!?」


 爺さんは驚いた顔でぼくを心配してくれる。

 けれども、帳簿をめくっているので仕事はしてくれるようだ。

 パーティ登録用紙から、ぼくの名前を削除した。


「ほれ、終わったぞ。で、どうすんだ、これから一人で?」


「バッファー……強化系やサポート系の魔法士を探してるパーティを見つけるしかありませんよ。見つからなければ、ソロで雑用依頼でもします」


 ぼくがそう言うと、爺さんは舌打ちした。

 そして面倒くさそうに頭をかいて、ギルドの待合席にいるパーティに声をかける。


「ちっ、しゃあねえな。――おい、『紅月』の連中! こっち来い!」


「なぁーにぃ、レイノルドじいちゃんー?」


 けだるげな声がして、席の動く音がする。

 振り返ると、そこには美男美女がいた。


 胸と足の露出が激しい褐色肌と白色肌の女性二人組と、その間に挟まる鎧姿の美男子。

 いかにも気の強そうな女性たちだ。


「何の用ぅ? あーしら、これでも忙しいんですけどぉー」


「ウチら呼んでお説教ぉー? ダル。帰ってい?」


 褐色肌と白肌の女性二人は、爺さんにいかにも不満そうな顔を向ける。

 前世で言うギャルですか?


「まぁまぁ、二人とも。まずはレイノルドさんの話を聞こうよ」


「まぁー。クルスがそう言うならぁー?」


 美男子がなだめた瞬間、女性二人は途端に機嫌を変えた。

 すり寄るように腕を組み、手を回し、抱きつくようにくっつく。


 あ、これ。身内パーティですね。わかります。

 この三人の関係が一発でわかったよ。


 で、爺さんはとんでもないことを言った。


「こいつをパーティに入れてやれ。欲しがってたろ、後衛?」


「はぁ!? 男をぉ!?」


 爺さん、それはいくら何でも無理でしょ。

 どう考えても割って入れる空気じゃないよ。


「あんた、名前はぁ? なにができんのぉ?」


「あ……回復と補助、強化の魔法をだいたい。後は、パーティ内の事務もできます」


 ぼくがそう言うと、女性二人は鼻で笑った。


「はぁー? 嘘つくなし。そんな色々できる後衛、いるわけねーじゃん、笑ける」


「もしかして魔法オタクなの? きみ、オタクくん?」


 そうです。

 ぼくがオタクです。

 仕方ないじゃん、好きなんだから。


「良いじゃない、二人とも。ボクは欲しいよ、この子。……攻撃呪文はできる?」


 爽やかイケメンが取りなしてくれた。

 うう、善人のオーラがまぶしい。

 女性的な美形だし、すごくモテるんだろうな。

 美人二人と一緒にいるのも納得だ。


「攻撃呪文は苦手なんです。少しできるくらいで、攻撃力はあまりありません」


「ああ、それは大丈夫。うちは三人とも前衛だから。アタッカーしかいないんだ」


 マジか。

 ハーレムパーティとはいえ、そんな脳筋構成だと、さぞ戦闘が辛いと思う。

 すごいいびつなバランスのパーティだ。


「お前らみたいな突っ込むしか能のねぇパーティは早死にする。悪いこと言わねえから、そいつを入れとけ」


「えぇー? でも、男だしなぁー」


 渋る美女二人。

 ですよね。どう見てもぼくはお邪魔ですよね。


 ところが、爽やか美男子だけは反応が違った。


「後衛は絶対に必要だよ! ね、二人とも。入ってもらおうよ!」


 真っ赤な顔で力説する美男子。

 なにがこの美男子をそんなに熱くさせるんだろう。

 言うまでもないよね、パーティバランスだ。


 前衛三人にサポートなしだと、爺さんの言うとおりにいつか全滅する。


「はぁー、クルスは気に入ったの? ま、いっか。結構可愛い顔してるし、男の子っぽいオンナノコと思えば」


「あ、それナイスー。気も弱そうだし、良いんじゃね? おらオタク、ウチらの邪魔すんなよ? 調子乗ったら首から上はチョンするかんな?」


 怖。

 なんでパーティメンバーに首チョンされなきゃいけないの。

 でも、贅沢言ってる場合じゃないのも確かだ。


 爽やか美男子が、ぼくの手をぎゅっと握る。


「ボクのパーティを、手伝ってくれないかな。お願いだよ」


 ぼくを真っ直ぐ見つめる、潤んだ瞳。

 そういうのは美男子じゃなくて、美女二人にやってほしかった。


「は、はい! 一生懸命がんばります!」


 ぼくがそう言うと、美男子はにっこり笑った。

 思わず胸がドキッとする。


 隣の美女二人より、この美男子の方が数段美人じゃないかな?

 ぼくに同性愛の気質はないんだけど、思わず緊張してしまった。


「おう、話がまとまって何よりだ。じゃあ、パーティ登録しとくな。――オタク、がんばれよ」


「よろしくねー、オタクくーん!?」



 美女の殺気だった笑顔に微笑まれて、ぼくはうなずくしかなかった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る