第2話 プロローグ
私の実家は貧乏である。
正直、裕福だと思ったことは一度もない。
富良野で生活をしていた黒板家よりはマシな生活だと思うが。
遺産で揉める人たちは、遺産が少ない人たちが多いという話を聞いていたが、まさかうちのような本当の貧乏人が揉めることはないだろうと高を括っていた。
それがまさか父親の遺産で揉めることになるとは。
それでも一抹の不安はあったので、兄弟間で介護や遺産相続について、多少の話し合いはしていた。
母親が亡くなってから数か月後までは。
(母親は、父親よりも数年早く亡くなっている)
私達相続人は、四人兄弟である。
順番に、兄であるA男、私がB男、弟たちであるC男、D男である。
一家の要である母親は、元気いっぱいに暮らしていたが、ある日コロッと亡くなってしまった。
今思えば、母親が亡くなってから兄弟間の絆が崩れたような気がする。
母親はコロッと亡くなったと言ったが、予兆はあった。
亡くなる少し前に、体調が思わしくなく少しだけ入院したが、体調不良の原因が不明なまま退院したのだった。
退院後は、病院が退院させたのだから大丈夫だろう、と思って実家に顔を出していなかった。
そして母親と最後に話をすることもなく、母親は天国へ召されたのだった。
母親が亡くなって絆が崩れた実家は、母親が掛けていた死亡保険金の請求やら口座の解約をなんとかこなしたものの、実家に二人残された父親とA男の仲が壊滅的な状態になり、B男、C男、D男が間に入り、A男は実家を出ることになった。
これが遺産で揉める種だったのだろう。
今思えば、A男が実家を出るときのやり取りの中にも、『あれ?』と疑問に思う部分があった。
その時に気が付いて手を打っていれば、ここまでこじれなかったのだろうか。
今となっては全てタラレバであるが。
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