第二章:軍事戦略としての勉強

勉強の過程を軍事に例えることは極めて有効である。なぜなら軍事は、限られた資源を最大限活用し、敵を制圧するために最適化された戦略体系だからだ。学習においても、時間・集中力・教材といった資源は有限であり、それらをどう配分し、どの順番で投入するかが結果を左右する。


1. 敵の定義


戦争において最初に必要なのは敵の特定である。学習における敵とは何か。私の経験上、以下の三つに整理できる。

1. 怠惰:学習意欲を削ぐ内的要因。疲労や面倒くささがこれに該当する。

2. 誘惑:スマートフォン、ゲーム、SNSなど外的な注意分散要因。

3. 時間の浪費:非効率な勉強法、目的のない反復。


これらは一見抽象的だが、実際には具体的な「敵軍」として認識する方が行動が明確になる。例えば「スマートフォンを机の上に置くこと」は、前線に敵を招き入れる行為と同義である。


2. 戦術と戦略の違い


軍事における「戦術」と「戦略」の違いは重要である。戦術は個々の戦闘での手法であり、戦略は全体戦争を勝ち抜くための大方針である。勉強に置き換えれば、

• 戦術=テスト直前の暗記方法、ノートのまとめ方

• 戦略=学期を通しての学習計画、優先科目の設定

となる。


私が一日10時間勉強を始めた当初は、戦術に偏っていた。つまり、問題集をひたすら解き続けることや、短期的な暗記を繰り返すことに多くの時間を費やしていた。しかし、これでは順位の上昇は限定的であった。軍事で言えば、局地戦で勝利しても全体戦況を覆せないのと同じである。


転機となったのは、勉強を「戦略」として捉え直したことである。各科目の配分を調整し、苦手科目に重点を置く一方で得意科目は維持コストを下げる。加えて、週単位・月単位での進捗確認を行い、計画を随時修正した。この「戦略的シフト」によって、順位は着実に上昇し始めた。


3. 兵站と補給


軍事の歴史において「兵站(ロジスティクス)」は勝敗を分ける決定的要因である。補給線が断たれれば、どんな強力な軍でも持続的に戦うことはできない。勉強における兵站は、休憩・食事・睡眠である。


私は10時間勉強を始めた当初、休憩を軽視していた。結果として集中力は数時間で低下し、後半は形だけ机に座っている状態になった。しかし、適切な休憩を戦略的に組み込むことで、全体の効率は大幅に改善した。例えば「50分勉強+10分休憩」を1セットとし、さらに3時間ごとに長めの休憩を設定する。これは軍隊の補給スケジュールに類似しており、持続的戦闘力の維持に直結した。


4. 武器と装備


軍が戦うためには武器が必要である。学習における武器とは、参考書・問題集・過去問である。私が順位を100位上げた背景には、教材選定の合理化があった。以前は市販の問題集を無秩序に購入し、消化不良を起こしていた。しかし、ある時点で「基幹兵器」を決定した。具体的には、数学は学校指定の問題集、英語は文法書+単語帳、理科と社会は一冊に絞り反復する。このように兵器体系を統合することで、学習は一貫性を獲得した。


5. 勝利条件の設定


軍事作戦には必ず明確な勝利条件がある。勉強においても同様であり、「順位を100位上げる」という具体的数値目標を設定したことが、戦意を維持する大きな要因となった。漠然と「頑張る」ではなく、数値化された目標=勝利条件を明示することで、学習行動は迷いなく実行に移された。

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