長閑な山の風景と、強く優しい祖父と孫。
そんは昔話の様な世界に入り込んでゆく
この作品。だがしかし、恐ろしさもしっかり持ち合わせていて思わずゾッとさせられる。
その山は『イタチ山』という。
山には自分と瓜二つの姿形をした 妖 が
出るという。
もし、全く寸分違わずに
もう一人の自分が目の前に現れたなら。
これは、想像以上に恐ろしい。
全く何をしても無駄なのだから、こんな
怖い事はないどろう。漠然とした得体の
知れない空間にただ独り取り残されて行く。
例えるならば、そんな怖さだろう。
祖父の知恵で、どちらが本物なのかを
精査するが、その場面の恐ろしさ。
最後に『イタチ山』の謂れは語られるが、
怪異の正体は明かされない。そして
トカゲの役割も又、同様に。何故なのか
虫ではなくトカゲである事に何某かの
含みを想像してしまう。
この、怪談を語る 粋 に思わず痺れる。
民話好きは勿論の事。読む者を選ばない
とても上質な怪異譚である。
ひいおじいちゃんである、六助は、両親が忙しく、田舎にある祖父の家に預けられたことがある。近くには山があり、それは『イタチ山』と呼ばれていた。
イタチ山に子供一人で入ることは禁止されており、六助はその山に入ってはいけなかった。しかし、遊びに行きたいという好奇心から、山に向かおうとしたとき、祖父に声をかけられた。
六助がうなだれると、祖父は懐から小さな守り袋を取り出し、六助に渡す。
家に帰るまで、絶対に中身を見てはいけない、そう言われた六助は、袋を服に入れたまま山に入るのだが——といったお話です。
恐ろしいホラーの雰囲気が出ていてとても面白かったです。それだけではなく、イタチ山の陰鬱とした空気感や祖父の厳かさが全面に押し出されていると私は思いました。
この世には恐ろしいものがたくさんあります。中でも、本作は『似ている』恐ろしさを書いていると私は解釈しました。
背筋が凍るように恐ろしく、するすると読めるとても面白いお話でした。
すごくおすすめです。
ぜひ、ぜひご一読ください。