破滅

桃の妖精

破滅

ここ数年ほど、奇妙な悪夢にうなされることが増えた。

別に毎日悪夢を見る訳では無いが、その悪夢を見た朝の目覚めが悪いのは勘弁して欲しい。

目覚めを悪くするからこそ、悪夢と呼べるものになるのかもしれないが……


悪夢と一言で言っても普通は毎回夢の中で別の体験をするだろう。

自分や親族が死ぬなり、何か巨大なものに追いかけ回されたり、無限に続く長い道を歩くだけの気味が悪いものだったりと、まぁ、そんな感じで色々あると思う。

悪夢というのはどうにも自分の精神的ストレスなり、不安、トラウマなどが深く関わってるらしい。

その他にも精神疾患なり理由はエトセトのラララだ。

最近は夢の研究、脳科学か? そんな一般人の私から見たら専門用語びっしりで、よくわからん研究結果が進んでいるらしく、悪夢と、ストレスやトラウマの関係性がある程度ではあるがわかるらしい。


悪夢について思ったよりも話してしまったが、私の奇妙な悪夢についての話に戻そう。


なぜ普通に悪夢と言わず、前に“奇妙な”と付けたかは実に簡単なことだ。


見る悪夢が毎回同じ結末になるから。

そして、悪夢……夢なのに、朝目が覚めて、意識が覚醒して、布団から出て、シャワーに入り、頭の中をスッキリさせようとしても、ずっと悪夢の内容が脳内からこびりついて消えてくれないのだ。

いくら、お気に入りのシャンプーのフローラルな香りでスッキリさせようとしても無駄だった。

全く、おかげで少し奮発して買ったシャンプーをすぐに使い切ってしまった。


おっと、話が脱線してしまうのは私の行けない癖だね。

再度話を戻そう。この悪夢を見るようになったのは、私が大学を卒業して、幼き頃からの夢であった学校の先生になって2年と少しが経った頃だった。


季節は7月半ばと、夏の蒸し暑さが酷くなってきた頃。

その日の目覚めは実に最悪だった。

後で寝起きの汗の量に思わず自分でも引いてしまったよ。


そんな先生の寝起きの汗の話ばどうでもいい?

夢の内容についてはなく話せ……?


ああ、そういえば話してなかったね。

もう少しうら若き美人教員の汗の話を掘り下げたっていいだろう?

教員は元とはいえ美人ではあると思うぞ、私。


そんな癖はない?

……はぁ、それでもキミは本当に男子高校生かい?


はいはい、話すよ。話すとも。

少し悪ふざけが過ぎるくらいいいだろう?

わざわざ元生徒が元担任に会いに来てくれたんだ。

嬉しくて会話に熱が出るくらい許して欲しいな。


悪夢の内容だったね。

正にこれこそが悪夢! と言えるほど簡単な内容だよ。


20××年に謎の感染症によって人類が滅びる。


文明なんてものが無くなる時なんてあっという間さ!!


そんな馬鹿げた悪夢がずっと、ずっっっとここ何年も続いてたんだ!!


気が滅入って滅入って、これは予知夢なんじゃないかって思い始めたさ。

でも家族に友人に周りの人に!

……誰に伝えても何馬鹿なことを言ってるんだって、そう言われるのが関の山だった。


次第に校内でも私は変人扱いされるようになった。

いやまぁ、元々残念美人変人先生って、前半と途中が不名誉なあだ名はつけられてはいたけども……

でも、キミだけはこんな私の世迷言を信じてくれたんだ。

でも私は周囲の目が怖くなってしまって教員を辞めた。


そこからはキミが今いる山奥の小屋に移り住んでるってわけさ。


しかもねぇ、悪夢は本当になった。


今じゃもう街中は歩けないね。感染した人たちが感染してない人を襲うようになって、そうしてどんどん感染者は増えていった。

現実がこんな事になるなんて、バイ〇ハザードもびっくりだよね。


さてさて、長話が過ぎたかな。

こんな山奥でも感染はするらしいねぇ。

元とはいえ、担任に教え子を殺させないでくれたまえよ?

もうそろ自我を保つのも限界なんだからさ、いっそ一思いに、ね?


だから、だからさ……

キミが私を撃ち殺すに後悔しないでね。



そうして、キミは手の先から光を放った。

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破滅 桃の妖精 @momonoyousei46

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