箒星の帰還。

 魔女

「わっ!  え、何。なんの音!?  裏庭……?」


 星の子

「あ、魔女ー。帰ったよ」

 

 魔女

「そっかぁ、もう箒星が帰ってくる時期か。裏で爆発音がしたから、何事かと思ったよ……隕石だったなら納得。おかえり、星の子」

 

 星の子

「ウン。ただいま。わたしの魔女。これ、頼まれてた星の砂。これはジュピター。ガスも取ってきたよ。こっちはポラリスの、これはマーキュリー、ヴィーナス」

 

 魔女

「わ、すごい! 助かるよ、ありがとう。太陽系惑星の素材に触ってみたかったの、本当に嬉しい。木星のガスまで取ってきてくれるなんて、本当気が利くんだから」

 

 星の子

「んへへ……わたしも魔女がニコニコで嬉しい。お代、お代。おやつと、はちみつ風呂と、メンテナンスして」


 魔女

「もちろん。まずはおやつね、何系のガスが食べたい? ヘリウム系とキノコ系ならすぐ出せるけど」

 

 星の砂

「しょっぱいのがいい、メタンガス食べたい」


 魔女

「んーメタンガスなら。工業地区に行けば踊り食いできそうだな。今から行く?」


 星の子

「いく!  魔女、抱っこ。ほうき乗せて。わたし帰ってきたばっかりで、跳ぶの疲れた」


 魔女

「いいよ、じゃあその前に君の重さを減らさせてね。さすがに星を抱えて飛行はキツイからさ」


 星の子

 「うん、いいよー。あ。忘れてた。あとね、これはお土産。オオイヌの頭とサソリの心臓」


 魔女

「これは……星の欠片? オオイヌの頭ってことは、もしかしてシリウス? ……星座にも会ってきたの?」


 星の子

「うん、ちょっと怖かった。でも、楽しかったよ。サソリから逃げてたらね、オリオンって人も逃げてて、途中まで一緒に走ったんだ。彼は月を目指してるんだって。好きな女の人が泣いてるから、泣き止ませに行くんだって言ってた、素敵だね」


 魔女

「月の女……? もしかして、月女神アルテミス? 神話は勉強したけど、まさか星座にされた今も会いに行こうとしてるってこと!?」


 星の子

「彗星でもないのに、すごいよね。何万年、何億光年かかっても、笑わせに行くんだって。ロマンチックだなぁ。わたしも、いつかそんな風に思える星に会いたいたいな」


 魔女

「きっと会えるよ。これからもまた旅をするんでしょう」


 星の子

「ウン。メンテナンスが終わったら、次はね、スピカに会いに行きたいな」


 魔女

「いいね」


 星の子

「うん。そしたらまた、わたしのこと待っててくれる?」


 魔女

「もちろん。何十年、何百年でも、待ってるよ。君が帰りたいと思ってくれる限り、ここがきみのお家だよ」


 星の子

「うん。ここが わたしの帰る灯り。ありがとう、わたしの魔女」

 

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