第2話 給湯室爆発
ドーン!!!!
バラバラバラ……
給湯室から爆発が起こり、天井の一部が吹き飛び、残ったスプリンクラーからは見当違いの方向に水が噴き出していた。
けたたましい警報がビルの中に響いていた。
ファンファンファン「火事です」ファンファンファン「火事です」
ファンファンファン「火事です」ファンファンファン「火事です」
ファンファンファン「火事です」ファンファンファン「火事です」
ファンファンファン「火事です」ファンファンファン「火事です」
もうもうと立ち込める焦げ臭い湯気の中に鮎美は茫然と立ち尽くしていた。
茫然と……いやうっすらと微笑みさえ浮かべて立ち尽くしていた。
下にたまっていたガスが爆発したせいか吹き上げられた爆風で少しスカートの裾が少し乱れている。
大倉編集長をはじめ社員一同は大慌てで駆け寄ってきた。
「鮎美!!怪我はないのか」
「アユミさん。大丈夫ですか」
「大原さん、痛いところはない?」
新人の社員が古い設備の爆発に巻き込まれたとあっては管理責任の問題すらある。
何より鮎美の状態が案じられる。
「おい、青野!!119!!」
大倉編集長からそういわれた総務の青野は大急ぎでスマホをとり、はじけるように消防に電話をした。
「東京都千代田区九段南 3丁目29-17明倫ビル一階明倫出版です。ええ、三橋パーマ店の奥。消防です。ガス爆発です。鎮火しています。いいえ、現在は鎮火しているようにみえます。怪我人は一名。いえ、元気そうです」
「すみません。大丈夫です。怪我も火傷もしていません。本当に大丈夫」
鮎川は立ち尽くしながら自分の状態を告げた。
「いや、怪我人0です。今確認しました。救急車はいりません…」
そうしてる間も警報はなり続け同じビルのテナントの人も覗きにくる。
となりのパーマ屋さんのお客さんもカーラーを巻いたままで覗きに来た。
「申し訳ありません。どうやら火は出ていません。もうすぐ消防が来ますのでご安心ください」
大倉編集長は少し顔を紅潮させて覗きに来た人たちに対応している。
「もうしわけありません。大丈夫です」
鮎美も恥ずかしそうに頭を下げる。
そこに一人の中年女性が進み出て鮎美の体の埃をパンパンと払ってくれた。
「まあ、無事でよかったじゃないの。あとで髪の毛整えてあげるから帰りにでもうちに寄りなさい」
優しい声をかけてくれた女性は三橋パーマ店の経営者、三橋さん。
「ありがとうございます」
鮎美と大倉編集長は深々と頭を下げるだけだった。
まもなく消防隊が駆けつけた。
サイレンが鳴り響き社屋に入ってくる。
明倫出版と金色で書かれた古い木の扉が開けられ、11月の晩秋の風が落ち葉ともに入ってきた。
消防隊のメンバーの一人がサイレンを切り、無線で現着を告げている。
廊下に積み上げられた大使館のパンフレットなどを消防隊は跨ぐようにして状況確認をしながら進んでいく。
「責任者の方は?」
大倉編集長が所帯なさげに前に進み出た。
消防が到着して1~2分のうちに警報が止められ、スプリンクラーも止められた。
水は事務所の床をつたい、床に平積みになっていたパンフレットなどを濡らした。
やがて消防による鮎川鮎美の事情聴取が始まった。
鮎美ちゃん。大丈夫だからね。落ち着いて」
そう声をかけてくれたのは総務の青野。
「お名前を確認させてください。鮎川鮎美さん。生年月日は」
「2003年3月16日です」
「現在22歳ですね。で出火時の様子を教えてください」
若い消防隊員ははきはきとした優しい声で質問を続けた。
鮎美も安心した様子で質問に答えている。
「私お茶をいれようとして」
「ハイ。お茶をいれようとして」
「それで給湯器のガスをつけようとしたんですけど」
「はい」
「つかなくてそれで」
「それでどうなさいました?」
「それで15分ぐらい何度かやってみたんですけどどうしてもつかなくて」
「15分ぐらいつかなかったんですね。それで?」
「それで私、チャッカマンでつけようとしたんですけど」
「えっ、チャッカマンってライターですよね」
「はい。ちょうどもっていたものですから、ここから・・」
「給湯器の窓からチャッカマンで火をつけようとなさった」
「ハイ。そしたら・・」
「そしたらぼーんと爆発したと!!!!」
「……」
鮎美はハラハラと大粒の涙を流し始めた。
「まてい!」
横から会話に飛び込んできたのは総務の青野!!
「お前ガス給湯器がつかねえからってチャッカマンでつけようとしやがったのか!!!!」
全員の目の色が怒気を含んだ戦闘色に変わっていった。
――――――――――――――――
さてさて。二話をお読みいただき、ありがとうございました。
引き続き三話もお楽しみください。鮎川鮎美ピンチか!!
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