第27話

 ステージの裏は細い通路になっていた。従業員用だからか質素な作りだ。


 奥の方の部屋から光が漏れている。


 もしかしてあそこにいるのか?


 通路を進み、部屋の前に辿り着くと俺は鍵穴から中を覗いた。


 すると奥で金髪が揺れるのを見つけた。


 さっきの子だ。


 他には誰もいなさそうだな。よし。


 俺は再びドアを収納し、音もなく部屋に入った。


 まだアリアナは俺の存在に気づいていない。


 そのはずだった。


「ここは立ち入り禁止よ」


 アリアナはこちらも見ずにそう言った。


 すごい感覚だ。いや、音か。ねこだもんな。


「ご、ごめん。迷っちゃって」


「嘘ね」


 アリアナはこちらに振り向いた。


 改めて見るとすごい美少女だ。


 金髪に青い目。整った顔もさることながら、大きな胸がたぷんと揺れている。


 すけすけのネグリジェ姿だから目のやり場に困った。


「……その通り、嘘だ。ちょっと君に確認したいことがあるんだ」


「確認? それよりどうやってここに入ったの?」


「それは企業秘密だ」


「そう。ならセキュリティーを呼ぶわ。多分あなた死ぬだろうけど」


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺はリズに頼まれてここに来たんだ!」


 リズの名前を出すとアリアナの表情が変わった。


「リズ? リズってあのリズーシアのこと?」


「やっぱりそうか。君がアメリアだな」


 名前を呼ばれるとアメリアの耳がぴくりと動いた。分かりやすい。


 俺はアメリアに手を伸ばした。


「リズに連れて帰るように頼まれたんだ。さあ」


 アメリアは俺の手を見つめ、そしてそっぽを向いた。


「……無理よ。私は売られた身なんだから。買い戻しでもしない限りここからは出られないわ」


「大丈夫。今ならこっそり逃げられる。リズと一緒に故郷へ帰ろう」


 すると突如後ろから声がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る