第20話 おいしい晩ご飯


「中もいい感じだ。夜は真っ暗になりそうだけれどな」


「それでも野ざらしで寝るよりはマシだぜ。今日はゆっくりと寝られるな!」


 正面の入り口から竹の小屋の中へと入る。


 入り口は両方の支柱のちょうど真ん中に新しく設置したサブの支柱を境に半分がドアのように開くようになっている。ここだけツタのロープで固定をしていないから動かせる感じだ。


 中に入ると昨日作った竹の床だけがある。屋根や壁は半分に割った竹を上下に重ねているので、隙間から光は漏れず、まだ明るいのにだいぶ暗くなっている。


『地面には溝を掘って雨水がたまらないようになっております。そして周囲にはシトロネラやレモングラスなどを置いて虫が近付かないようにしております』


 ここは緩やかな丘の上にあるので、竹の家の周囲の地面に溝を掘って、雨水が下へ流れ落ちるようにしてある。


 そしてその溝には森で回収してきた虫の嫌がる草を敷き詰めた。他にも竹の壁にはこれらの葉っぱをすりつぶしたものを塗りつけている。こうすることで虫が寄ってこなくなるらしい。


 一昨日の砂浜で寝た時はそこまでいなかったのだが、昨日ここで寝た時は周囲に緑が多いせいか、かなりの虫がいた。虫なんか気にならないほど疲れていたのでぐっすりと眠れたのだが、虫の中には毒のある虫もいるらしいので、拠点にはできる限り虫を遠ざける仕掛けをアイが教えてくれた。


 このシトロネラやレモングラスは俺にとってはどこにでもある雑草にしか見えなかった。アイがいてくれたおかげで本当に助かったよ。ちなみにレモングラスなどは食材の臭みを消すハーブなどとしても使えるらしい。


「あとは鳴子の方もちゃんと音が鳴るね」


「おう。これだけ音が鳴れば寝ていても気付けるぜ」


 拠点の周囲をぐるりと囲むように3本のツタのロープが張り巡らされている。そしてこのツタには竹でできた板が重なり合ってできた鳴子が付いており、ロープを揺らすとカラカラと音が鳴った。


 昔の城とか忍者屋敷でしか見たことがない鳴子だが、これがあれば拠点に大きな生き物が近付いてきたらすぐにわかる。……ぶっちゃけ俺は疲れで大きな音が鳴っても起きることはない気もするが、耳のいいルナは寝ていても気付くことができるらしい。


『明日はいつ雨が降っても問題ないように燃料となる木の枝を確保しておきましょう』


「ああ、あとは明日にしよう……」


 駄目だ、今日は本当に体力の限界だ。人生の中で一番疲れた日かもしれないくらい疲労で身体中がガタガタである。


 そのおかげで無人島にしてはまともな拠点ができたわけだが。




「うまい! お腹が減っていればどんなものでも最高にうまいな!」


 今日の昼ご飯はベリーだけだった。火を起こすのはペットボトルの水を虫メガネのように使用してティッシュに着火することができるのだが、燃料となる木の枝を集めるのが結構大変なのだ。一度火を起こしたらろ過した水も一緒に煮沸消毒したいので夕方にやる事となった。


「このイモも悪くはねえんだが、昨日はホーンラビットの肉があったからなあ。やっぱし肉か魚が欲しいところだぜ……」


 本日の晩ご飯も昨日と同じタロイモがメインとなる。お腹が空いていればこの焼いたイモに塩を振っただけでもうまいのだが、確かにルナの言う通り昨日の肉は格別の味だった。明日からは本格的に食料も確保していきたいところである。


「肉はないが、今日はさらにもうひとつ食材があるからな」


『マスター、そろそろできたと思います』


「おっ、ちょうどか」


 拠点の前に河原から持ってきた石を使って竈を作り、石の上にタロイモを載せて焼いていた。それと同時にろ過した水を貝殻の器で沸かしては竹筒の水筒に移していった。貴重な燃料を使って火を起こしたら、いろいろとやらなければならないのである。


 そしてそれとは別に火の近くに置いてある真っ黒な物体がある。先ほどからずっと焼いていたこの真っ黒に焦げたものの正体は皮に包まれたタケノコだ。


 アイの説明によるとタケノコは鮮度が大事らしいので、朝のとは別に採ってきたものだ。本当はアルミホイルなどに包んだ方が綺麗な蒸し焼きにできるらしいのだが、もちろん無人島にそんなものはないので、この皮を付けたまま焼くことで蒸し焼きにできるらしい。


「……ちょっと焼き過ぎちまったんじゃねえか?」


『大丈夫です。見た目は焦げていますが、中身は問題ないはずです』


「あちち……おっ、本当だ。中は大丈夫だし、すごくいい香りがする」


 本来ならば焼き加減が難しいところだが、俺たちにはアイがいてくれるので、その辺りもばっちりである。

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