第2話 管理人
下へ降りてみるとそこは、思ったよりも暗く、湿った苔の独特な匂いと冷めたい空気が漂っていた。
少しの怖さと、懐かしさが胸に広がる。
懐かしいと思った理由は分からないが、私は川に沿って歩きだした。
川の音。
普段とは違う空気。
人の目からに逃れ、嫌な事や辛い事の全てを流してくれそうなこの場所は、まるで現実の天国のようだった。
少し歩くと人の気配を感じた。
前方に人の影が見える。
すると、その影が私に向かって声をかけてくる。
「やぁ、久しぶり。君を待っていたよ。あの日の約束を覚えているかい?」
私は驚き、一歩後ろに身を引いた°
だが、何故、彼は私を知っているかの様に話しかけてくるのだろうか°
あの日の約束とは何なのか。
少し不思議に思いながら私は尋ねた。
「すいません。以前、貴方にお会いした事がありましたか?」
彼は面白そうにくすくす笑った。
「前に君と会った時はまだ小さかったね。あの頃の君は可愛いかったな」
私は何のことか分からず呆気にとられる。
その時、雲で隠れていた月が顔を出し、彼の姿を照らし出した。
私はあまりの綺麗な姿に言葉を失った。
ガラスの様に艶やかで透き通る肌。
エメラルドグリーンの瞳が宝石の様に煌めいていた。
そして、彼は静かに口を開いた。
「じゃあ、改めまして、お久しぶりです。僕は星川の管理人、エトです。よろしくね!」
彼は私に手を差し出した。
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