キャンプ場管理人失踪事件に関する資料
@chillnovel_i
参考資料3-2 キャンプ場管理人の手記.pdf
以下は現在行方が分からなくなっている霧止高原キャンプ場管理人の神崎裕次郎氏による手記である。内容は治安維持局の厳重な管理下にあり、一部の閲覧は不可(局長級職員のみ閲覧可)。事件に関係がないと思しき内容は省略している。また、ページが引きちぎられている箇所、文字が判読不明となっている箇所がある点にはご留意いただきたい。
※なお、霧止高原はキャンプ場とハイキングコースが併設されており、県内外からの訪問者も多い。いち早い事態の収束が求められているのは言うまでもない。
以下、神崎氏の手記
2025年6月23日
霧止高原キャンプ場に着任。以前の職場はここから南に30km離れた町営自然公園の管理組合だったが、キャンプ場はかねてよりの希望地だっため、異動に際して配慮を頂きありがたい。利用者の安全性、利便性向上に努めて行きたい。
なお、前任者の■■■■氏は業務中に行方不明になられたとの事で、対面での引き継ぎは受けていない。事務所の業務マニュアルに残されている内容から、業務内容を探っていくしかない。■■■■氏がいち早く無事に発見されることを祈るばかりである。
2025年6月26日
前任者の業務マニュアルを確認し、何とか最低限の業務内容は理解。キャンプ場の利用受付と清掃、資材の供給等が主な業務と思料。この日は5名の利用者あり。
2025年7月2日
この日はキャンプ場利用者は1名のみ。台風が近付いており、小雨が降っているからであろう。
なお、業務マニュアルによく分からない記載あり。どうやら、山に生息する野生動物の対応に関するもののようだが、「ツキノワグマ、イノシシ、シカ、ヘビ以外の野生動物に関する報告があっても、対応してはいけない」とのこと。朱書きでわざわざ、「■■■■には深入りするな」と添えられている。利用者が危険に晒されるリスクがあるのであれば、役場や猟友会への報告が必要ではないだろうか。それに、「ツキノワグマ、イノシシ、シカ、ヘビ以外の野生動物」とはなんの事なのか。皆目見当がつかない。
2025年7月26日
本日、キャンプ場利用者から野生動物に関する通報あり。山の茂みから、何か大きなヘビのような影が見えたとの事。ヘビなら対応が必要だ。利用者と様子を見に行ったのだが、その姿はもう無かった。
しかし、利用者の食料が荒らされていたほか、砂利道に動物が這ったような跡があった。跡の横幅は2m以上はあり、明らかに一般的なヘビより大きい。これが「対応してはいけない野生動物」だろうか。いずれにしても、利用者を放置は出来ない。管理棟の近くまでテントを移動してもらった。朝になったら役場に連絡しよう。
2025年7月27日
昨夜の件について役場に連絡したが、「見間違えでは」と軽くあしらわれてしまった。這いずり回った跡の幅が2mはあり、普通の動物では無いことも伝えたが、担当者は意に介さなかった。一体どういうことなのか。怒りも覚えたが、利用者に危険があってはいけない。管理棟にナタがあることを確認した。次は迅速に確認にいこう。
2025年7月28日
利用者3名。本日は何も起きなかった。危険な野生動物が確認されていることに対する注意喚起を行った。
2025年8月22日
利用者2名。本日も何も起きなかった。管理棟の物置に古い手書きのメモがあった。内容は「■■■■に遭遇しても、取り乱さないこと。傷つけないこと」とある。なんの事だろうか。気味が悪いが、意味がわからない。
2025年8月30日
本日は長い夜だった。起きたことを細かく記しておく。
本日は利用者がいない珍しい日だった。
24時を回り、そろそろ管理棟の宿直室で就寝しようと思っていたところ、キャンプ場から何か大きな音が聞こえた。表現するのは難しいが、幼い女の子が泣き叫ぶような音だ。ただ事ではない。急いでナタを持ち、キャンプ場へと向かった。
キャンプ場の広場に着いた時、言葉を失った。幅が2m、全長は6mもあるような巨大なミミズのような物体が奇声をあげながら蠢いている。異形の物体には頭のような部分があるのだが、目玉の部分はぽっかりと穴が空いており、気持ちが悪い。
異形の物体は、こちらに気付いたように身体の向きを変え、ゆっくり近づいてきた。その瞬間、私は金縛りのような状態となり、動けなくなった。
異形が数メートル先まで来たとき、泣き声は人間の笑い声のような音に変わり、「ミツケタミツケタミツケタミツケタ」と甲高い人間の声で繰り返していた。
するとやがて私の中から恐怖心は消え、寂しさと悲しさが濁流のように押し寄せた。気付くと私は嗚咽するほど涙を流していた。
異形の巨体が一瞬、動きを止めた。
その瞬間、私の金縛りが解けた。
私はナタを無茶苦茶に振り回すと、異形の顔面に直撃した。そこから黒い液体がぼとぼとと流れ落ち、異形は耳をつんざくような奇声をあげた。
その後、向きを変えて茂みの方に入っていった。
助かった。
私は腰が抜けてしばらく動けなくなった。
這うように管理棟に戻り、ドアにカギをかけた。
その夜はガタガタと震えながら一睡も出来ずに過ごした。
その後、異形が現れることはなかった。
2025年8月31日
役場に昨夜のことを連絡したが、やはり聞く耳を持たなかった。ただ、私はこの山を降りてはいけないのではないかと考え始めている。それは使命なのだから。
(ここから、文字の可読性が著しく落ちている)
2025年8月32日
全て分かった。(判読不能)は繰り返している。わたしは(判読不能)
2025年8月33日
このやま と (判読不能)になる (判読不能)よいことだ
2025年8月34日
わらいごえ が キコエル (判読不能)ムカエ ガ キタ ようだ(判読不能) ミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタ
2025年8月35日
(判読不能な文字の羅列)
2025年8月36日
(判読不能な文字の羅列)
2025年8月37日
(判読不能な文字の羅列)
2025年8月38日
(判読不能な文字の羅列)
以下、手記は破り取られている。神崎氏は、9月1日以降、行方不明となっている。なお、管理組合は現在、新たな管理人を探している。
以上
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます