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小学校の建物が見え始める。
小学校の建物は三階建てで、規模はそんなに大きくない。当時は1学年全体で90人半ばほどいて、3クラスあった。今は少子化が進んでいるので、児童数は減少している。この町は合併せずに残っていくのかな。
成人式が近づくにつれて、徐々に緊張が増してくる。
普段は閑静な住宅街だが、今日は成人式ということもあって車通りの多い気がする。そして、スーツや振袖姿の同級生が歩いている姿も。
駐車場として小学校のグラウンドが開放されている。
時刻は午前9時30分。駐車場に車を止めて、3人とも車から降りる。
地面に降り立った瞬間、さらに緊張が高まる。
「悠貴、寒いけど深呼吸しよう。大丈夫。小学校の同級生は全員が同じ中学っていうわけではないし、過去のこと知らない人多いよ」
蒼真の言う通り、体育館に集まる同級生のほどんどが同じ小学校出身で、全員が同じ中学というわけではない。
体育館で式典が行われたあと、次は同じ中学の集まりに向かうため、中学校まで移動することになる。
受付を済ませるために体育館出入り口へ向かう。なかなか緊張が解けない。
「お、見たことあるなと思ったら蒼真と綾香、悠貴やん!久しぶりー」
「おぉ、三人とも垢抜けたなー」
早速、同級生から声をかけられる。
体育館周辺には同級生だけでなく、保護者の姿も多くある。蒼真と綾香は二人とも母が遅れてやってくるみたい。
受付を済ませて体育館の中に入る。
小学校は3クラスあって、全員の顔を覚えているつもりだったけどみんな大人になって一瞬誰だか分からない人も見かける。
同じ中学の人にも声をかけられるが、ここでは思ったほど会話をするわけではなく、二人も中学の同級生に対してはそこまで積極的に会話をしていない。このあと中学校に向かうから、今は小学校だけが同じ同級生との時間を大切にしているのかもしれない。
成人式の始まる時刻が近づくにつれて、続々と人が集まってくる。
二十歳を迎えている人、これから二十歳を迎える人合わせて約90名が体育館ひな壇向かって前列に座る。保護者の席は後列に設けてあり、小学校の頃の担任や関係者は壁側の席に座っている。
午前10時、二十歳のつどい式典が開催される。
式典が終わり、記念撮影を終えた後は各々写真を撮っては談笑する。もちろん自分も参加するが、頼れる二人が付きっきりの状態。連絡先の交換を求められた際には一瞬ためらったけど、二人に背中を押されて交換する。
時刻は午前11時を過ぎ、次は中学校へと向かう。
自分たちの通っていた中学校はここから徒歩で行ける距離。車は使わずにそのまま歩いて向かう。
「二人とも、いろいろとサポートしてくれてありがとね」
「いいよいいよ、むしろコミュ力おばけの綾香が頑張ってる方よ」
「まだまだお礼は早い。本番はこれからや悠貴。朝『みんな待ってるよ』って言ったやん?楽しみに待ってろ」
確かに朝言っていた記憶はあるが、正直不安が大きい。高校入って休み始めて以降、中学の同級生からの連絡は自ら断って、距離を置いた。みんなに合わせる顔がない。どう謝ればいいのだろうか——。
しばらく歩くと、中学校の建物が見えてきた。
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