異世界でドラゴニュートになってのんびり異世界満喫する!

@faust1349

プロローグ

ぷろろーぐ!~私が異世界にやってきたワケ~

ドラゴンの神殿、現地に住む冒険者はだれしもがそのダンジョンをそう呼ぶ。大いなる財宝を秘めた場所といわれるその神殿には数多の冒険者が集い、そして財宝を見つけられず諦めて他のダンジョンへ行ったり、そもそも財宝や伝説を信じる事無く日々の糧としてそこそこの財貨を得るためにそのダンジョンへともぐり続ける。

しかしそのダンジョンは難易度が異常なほど高く、死者も行方不明者も後を絶たない難攻不落の要塞、もしくは迷宮の体を現していた。


「私・・・そんな所に居たのか・・・」


転生してから数ヶ月。ようやく這い出した私は外に出て漸くそのことを知る事ができた。


始まりは私の祖父が生物学として研究していたコモドドラゴンの診察に立ち会った時の事であった。孫バカを公言して憚らない祖父に連れられて高校生活もそこそこに研究所に入り浸っていた私はそこで件のコモドドラゴンに出会った。

齢なんと百歳という脅威の生命力を持つコモドドラゴンの研究の為に派遣された祖父と獣医としての道を進もうかと考えていた私とで利害が一致し、祖父に同行する代わりにコモドドラゴンに触れる機会があったのだ。職権濫用とか聞こえてきそうだがあえて気にしない。


「これが件のコモドオオトカゲですか」


大きな部屋に入れられたコモドドラゴンを見て研究員の一人がそう言う。コモドドラゴンだと訂正したかったが浪漫を解さない人間に詰め寄った所で時間の無駄なので気にしない事にする。温室のように温度や湿度を設定されているらしく彼も元気そうだ。


「気になる所ですがまずは会議から・・・」


コモドドラゴンを前にして皆名残惜しそうにしながらも研究員としての仕事があるのだろう。皆は私を残してスタスタと会議室へと向かっていく。一応身元はわかっているとは言え少女一人置いていくのはどうかと思うのだけど・・・。ほら、彼の部屋の鍵が開きっぱなしじゃないの。


「おじゃましまーす」


後で怒られるかもしれないけどコモドドラゴンと触れ合える機会は滅多とない。多少のリスクは犯しても仕方ないのだ。強化ガラス製のドアを開けて中に入る。するとむあっとした湿度と温度の高さから来る不快感が私を襲う。しかしそんな事は今はどうだっていい。目の前にドラゴンの名を冠する生物がいるのだ。


「かっこいい・・・」


齢が百という人間でもかなりの高齢であるにも関わらず目の前の彼は鱗に光沢すら残し、コモドドラゴンとしては変異種なのではと思わせるようなダークブルーの色がちらほら残っている。


「さ、触っても怒らないかな?」


なんだか神秘的なものに触れるような気がしてついつい呟く。その言葉を聞いたのか彼はすっと此方を向き、自らの口で短く言った。


『構いませんよ、若い娘さん』


ハスキーで艶のある声が彼の口から発せられている事に気付いたのは彼が優しげに目を細めているのを自らの目で確認した瞬間だった。


「お話できるんだ・・・」

『時々解る人がいらっしゃるんでねぇ』

「そうなの?」

『君のように驚かない人は珍しいがね』


実際は飛び上がりそうなほど驚いてはいたが元よりテンションが高まっていたので大して驚かずに済んだのだろうか。かえって冷静な自分がいる。そんな私の態度に気を良くしたのか彼は私の足元へとやってくると私を見上げてこういった。


『君は勇気がある、どうだい?私の代わりに冒険の旅に出る気はあるかね?』

「冒険・・・」

『そう、おとぎ話のような世界だ、君が言っていたドラゴンが居るような世界だが』

「ど、ドラゴン!?」


ホントにそんな世界が!でも、だったらどうして彼はまだ此処にいるのだろうか?


『私は年を取りすぎた、向こうに行けばどうにかなるらしいが・・・もうこの世界に愛着が湧いてしまってね。どうせなら興味のある人に譲ろうかと思っていた』


へーそうなのか。でもそれって私みたいなのでもいいのかな?至って普通の女の子だよ?


『構わないさ、向こうで上手くやってくれる。君は女の子かもしれないが私だって蜥蜴の一種だ。このままでは向こうで上手く行くはずもないだろう?』


なるほど、救済措置があるはずなんだね。そうなるとなんだか行きたくなってきた。

私のそんな態度の変化を受けて彼は大きく口を開けた。すると口の中にメダルがある。


「これが・・・異世界への切符?」


私の問いかけに彼はゆっくりと頷いた。そして私はそれにそっと手を伸ばし・・・そして確かにそれを受け取った。

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