ダメ人間に囲まれている生活

 妹に言わせると周囲は皆馬鹿ばかりで、自分がいないとダメなのだそうだ。周囲の人たちとは、私も含めた妹に関わるすべての人のこと。両親、職場の上司、そして部下たちも然り。彼女の勤め先は大手の企業なのでほとんど皆大学を出ていて優秀でないと新卒では入社できない。


 ところが妹いはく、語学が得意で勉強は出来ても仕事で使えるとは限らないそうだ。彼女は高卒で叩き上げの人なので、私からすると多少手前味噌な意見だと思うがあえて指摘はしない。妹の前では馬鹿で出来ないふりをしていた方が楽だから、私はどうしても道化でいることで逃げ場を残す癖がある。


 はっきりと面と向かっては言わないが、私もそのダメ人間たちに属しているのだと暗に言っている節がある。特にこれといった理由などは恐らくない。単に妹の価値観に合わないと、平たくいって使と妹は考えるのだと思う。頭でっかちで、実務には向かないと思い込むのは何故なのだろう。


 妹は長いこと下積みが続いたが、正社員の口を見つけた。諦めずによくここまで頑張ったとは思う。でもそれは私も同じだ。自分で選んだ苦労だとは言え、外国に移住して今の職に就くまではそれなりに努力をした。ただ妹はそういう話は聞きたがらない。同情に値しないと言わんばかりだの態度だと言ったら被害妄想だと思われるだろうか。


 私の生活に関心を示さない、あるは避けているらしいと感じる。いつか遊びに行くと言ったきり、別な国へと旅行に行ってしまう。二十五年間私が帰国することはあっても、妹が私の所へ来る事はない。妹はヨーロッパの別な国へは年に一度くらいの頻度で行っていて、西ヨーロッパで行った事がない国はあまり残っていないくらいだ。


 私のあちらの家族もそれを知っていて、正直呆れているし諦めてもいる。似てない姉妹だと笑うだけだ。私のあちらの家族も自分の親戚だという意識は妹にはないのかもしれない。


 自己愛性パーソナリティーとでもいうのだろうか。複雑すぎて私にはお手上げである。

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