第2話 月と水晶の遊園地

そこは素敵な場所になるはずだった


美しい透明な水晶の素材 水晶で出来た遊園地

月の光の中の回転木馬 水晶の馬たち


乗りもの達も全て 同じ水晶で出来ているよう・・


小さな湖に浮かぶ水晶の小舟 観覧車 ジェットコースター



オルゴール調の優しい心地よい音楽が

夜の闇の中に響き渡る


世話係兼 案内役になるはずだった ロボット達も


大事なお客様がいつ来てもいいように 出番を待ってる


もしもの時に備えた医療ルーム 医療用AI達も完璧


数台の小さな移動式の箱 いわゆる手押し車に 

アイスクリーム ポテチ

ポップコーン、サンドイッチ、綿菓子や数種類の飲み物が

積み込まれ 客たちの為に園内を移動中 

車輪が回る


あるいは着ぐるみのAIが 風船を配る為に稼働してる



そう・・待ち続けて 既に長い時が過ぎ


数十年、数百年・・



客となる人間はとうの昔に滅び去り 


こうしてAIのロボット達が残ってるだけ



時間で決められた通り、広場では色とりどりの光と

噴水のショーが演じられる


水はまるで 生き物のように楽し気


ロボットのマジックショー


機械仕掛けの小鳩や兎が帽子の中から飛び出して



まるで観客がいるかのように

AIのマジシャン役のロボットは うやうやしく頭を下げる


大きな通りでは

水晶の象やライオンなどの動物、恐竜たちのパレード 

小さな小鳥、ネズミや兎も 飛び跳ねして


AI・・サーカスの団員達が象の上で逆立ちにジャンプ

軽くダンスをしている


美しい少女の姿のAI 先導するかのごとく

舞姫たちが歌い踊る


シャボン玉や風船が夜空を舞う



時間が来たので 湖の中から人魚が顔を出し

湖の中の小さな水晶の丘で 琴を弾きながら歌を歌う




管理AIはまだまだ健在 エネルギー供給も問題はない


スケジュール通り 演目を指示


清掃も抜かりが無い


園内を彩る 花の植え替えも怠らない



愛しき 彼等を作った人間達の為に

輪舞『夢の空間』を無限に繰り返すのみ  



月の光が 人が残した

『夢の場所』をそっと包み込むように淡く輝いていた

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