第5話:康平新コーチ、始動~自己紹介から生まれた絆~

斎藤親子が転校してから、初めての練習日。いよいよ、「青木康平新コーチ」が始動した。

康平は、練習前のミーティングで、子どもたちに改めて自己紹介をした。

「皆さん、今日から新コーチになりました。青木康平です。趣味は野球観戦と、犬の散歩です。これから皆さんと、一緒に夢を追いかける、そんなコーチを目指していきたいと思います。よろしくお願いします。」

子どもたちが、嬉しそうな顔で拍手をする。斎藤親子がいなくなった喪失感はまだ消えないが、康平「新コーチ」への期待感とワクワク感の方が大きかったようだ。

そして、康平がまず始めに子どもたちに指示をしたのは、こんな内容だった。

「では早速、君たちには、こんなことをやってもらおうと思う。」

そう言って彼が取り出したのは、「自己紹介カード」。そこには、「自分の名前」、「生年月日」、「趣味」、「血液型」、「ニックネーム」、「みんなに一言メッセージ」といった、6つの項目がある。

「今からやってもらうのは、『自己紹介ゲーム』だ。自分の好きなことや、血液型などを書いて、それを首に下げていくんだ。そして、音楽に合わせて、好きなように歩き回る。そして音楽が止まったら、その時に顔を合わせた相手に、自己紹介をしていくんだ。」

「おぉ~…。」

そして、康平は次に、一番下の枠を指差した。

「そして、お互いに自己紹介が終わったら、この『なかよしシール』というところに、こちらのシールを貼っていくんだ。それが全てたまったら、『自己紹介ゲーム』は終わりだ。分かったかな?」

「「はい!!」」

「よし、じゃあ、今からカードを配っていくぞ。」

康平がカードを配ると、子どもたちは早速、そのカードに記入した。

実は、この「自己紹介ゲーム」を発案したのには、ある狙いがあった。


以前、斎藤親子の転校に伴う緊急保護者会で、こんな話があったことを覚えているだろうか。

「蒼空くんと翔太くんが分け隔てなくコミュニケーションが取れているのに対し、他の人たちは特定の人としかコミュニケーションが取れていない。野球はチームスポーツなので、みんなが平等にコミュニケーションが取れていないと、試合や練習がちぐはぐになってしまう。」

康平はそんな不安を解消するため、何をすればいいかを考えた。その結果が、「自己紹介ゲーム」だ。『お互いがお互いのことに興味を持つ』ことで、その人の意外な一面を知ることが出来たり、逆に自分のことを相手に知ってもらうことが出来たりする。そして、ゲームの時には知ることが出来なかったことを相手に後で質問することで、自然と『いいコミュニケーション』が生まれる。これは、ただのレクリエーションではなく、『自己紹介から絆を育む』といった今後の課題解決を図った、康平らしいアイデアなのだ。

子どもたちがカードに記入し終えたことを確認すると、早速ゲームが始まった。

康平がBGMとして採用したのは、嵐の「Happiness」。優太や幸太郎たち1年生が生まれた年の曲だ。

子どもたちは、楽しそうな足取りで、好きなようにクラブハウス内を歩き回る。スキップに近い足取りで歩く子、曲を口ずさみながら軽快に歩く子、両腕をぐるぐる回しながら歩く子…。個性豊かな歩き方で、みんな楽しそうだ。そして、「~きっと待ってるから~♪」というところで、康平が音楽を止めた。

最初に優太が顔を合わせたのは、何と親友の幸太郎だった。二人は互いに顔を合わせると、お互いをすでに知り尽くしているからなのか、お互いに大笑いした。

「マジかよ…!何で仲良しのお前に自己紹介なんて…ww」

「ほんとだよ。こんな偶然って、あるんだな。」

これには、康平もびっくりして、大笑いしていた。

「二人とも、本当ごめんな。二人のこと、考えてなかった。」

「いや、いいんですよ。これも運のひとつなんで!」

そして、二人は改めて、自己紹介をした。

〈優太の自己紹介〉

・名前:あおき ゆうた

・生年月日:2007年4月26日

・血液型:Oがた

・趣味:やきゅう

・ニックネーム:ゆうちゃん、ゆうくん、ゆっち

・みんなに一言メッセージ:

「ぼくは、まだやきゅうがあまりうまくないけど、もっともっとれんしゅうして、みんなのやくにたつせんしゅになりたいです。よろしくおねがいします。」

〈幸太郎の自己紹介〉

・名前:たなか こうたろう

・生年月日:2007年9月15日

・血液型:B型

・趣味:サッカー、ゲーム、そしてやきゅう

・ニックネーム:たろちゃん

・みんなに一言メッセージ:

「これからあたらしいチームになるけど、もっとつよくなって、ぜったいにぜんこくたいかいにいきます。みんなでちからをあわせてがんばりましょう。」


そして、お互いに仲良くシールを交換すると、再び音楽が流れた。

それから二人は、上級生の健太や、凌太郎、翔太といった他のチームメイトにも自己紹介をしていき、どんどんシールがたまっていった。そして全員が全てのチームメイトに自己紹介を終えると、次は質問タイムだ。

元の机に戻った子どもたちが、挙手をして気になった項目について質問をしていく。最初に質問したのは、5年生の渡辺健太だ。

「渡辺健太です。幸太郎くんに質問があります。どんな種類のゲームが好きなんですか?」

実は、健太もゲーム好きだった。そのこともあり、どんなゲームが好きなのか、とても気になっていたのだ。

「僕は、『ポケモン』のシリーズが好きです!特に好きなのは、『ポケットモンスターX・Y』!めっちゃ面白いよ!」

そんな幸太郎の言葉に、いち早く反応したのが、3年生の本間凌太郎だった。

「マジで!?うわ、いいなー!俺もやりたいんだけど、まだ買ってもらえてないんだよなー…。」

それもそのはず。「ポケットモンスターX・Y」は、2014年当時の最先端のゲームで、初の3Dグラフィックで描かれたポケモンたちが、たくさん登場していたのだ。新たな「フェアリータイプ」の登場や、「メガシンカ」といった派手な要素も、子どもたちの心を鷲掴みにしていた。

「『イーブイ』って、マジで凄いよな!俺も育てたことあるんだけど、イーブイが『ニンフィア』になるなんて、想像がつかなかったもん。」

そう話すのは、6年生の翔太。彼は、「イーブイ」が好きなポケモンらしい。

「幸太郎は?何が好きなんだ?」

「僕は、『ポケモンX・Y』に出てくる、『ケロマツ』。ケロマツ→ゲコガシラ→ゲッコウガという風に進化して、かっこよくなっていくのが、最高にたまんないんだよな!」

「分かる!ゲッコウガいいよな~!俺も好き!」

幸太郎を中心に、他のチームメイトたちが、「ポケモン談義」で盛り上がる中、ゲームを普段やらない優太は、どこか寂しそうだった。

「いいなぁ~…。僕もゲームがやりたい。みんなでゲームの話をして、盛り上がりたいよ…。」

康平は、「ポケモン談義」で盛り上がる子どもたちを優しく見守りつつ、寂しそうな優太を見て、どこか後ろめたさを感じていた。

「康平さん、なかなか効果あるんじゃないですか?自己紹介ゲーム。」

「えぇ、そうですね。…でも、うちの優太は、なかなか輪の中に入れていないようです。野球の知識もまだ乏しいし、何か打開策を考えなくては…。」


「健太先輩は、『妖怪ウォッチ』が好きなんですね!いいなぁ~!」

「そう!特に好きなのは、『ブシニャン』!『ジバニャン』のご先祖様なんだけど、武将らしい、真面目でクールなところが最高にかっこいいんだぜ。…ちなみに、『ポケモン』だったら、『ゲンガー』が好きだよ。」

「へぇ~!ちなみに、妖怪メダルは持ってたりするんですか?」

「もちろん!公式のコレクションファイルも持ってるよ!結構買うのに苦労したけど…。」

「えっ、そうなの!?どこで手に入れたの!?」

「健太先輩、いいなぁ~!俺も欲しいんだけど、なかなか手に入らないんだよ…。」

「ポケモン談義」から、今度は「妖怪ウォッチ談義」へと話題が変わっている。優太は、その話題にも入っていくことが出来ず、一人で悶々としていた。

「『妖怪ウォッチ』かぁ~。僕ん家は妖怪の『よ』の字もないから、全然分かんないんだよなぁ…。」

すると、康平が、そんな優太の頭を、優しくポンと叩いた。

「優太、今は分からなくても、全然大丈夫だぞ。健太くんや幸太郎が好きなものが、今日一つ分かっただろ?」

「うん…。」

「野球も、最初はみんなバラバラだったんだ。でも、一つずつ知っていくことで、チームになっていく。それに、野球も妖怪も、どっちも『仲間』が大切なんだ。」

「仲間…。」

「優太には、優太の好きなものや得意なことがある。それをこれから、もっとみんなに教えてあげればいい。俺は、優太がみんなと仲良くなるのを、一番応援してるからな。」

優太は、父親としての康平の言葉に涙を浮かべつつも、満面の笑みで答えた。

「うん…!僕、これから頑張るよ!幸太郎もいるし!」

「そう!その調子だ!何かあったら、幸太郎か俺に聞けばいいんだからな。もちろん、他の仲間にも。」

「うん!」

そして康平は、そんな優太の前向きな姿を見て、ある考えが脳裏に浮かんだ。

〈優太が野球を覚えるために、こんなにも前向きに頑張っている。この意欲を、どう効率的に、より『楽しく』続けさせてやれるか。…とすれば…。〉

康平の頭の中には、あるアイデアが、具体的な形を帯び始めていた。それは、優太の野球への興味をさらに引き出し、彼の成長を加速させるための、父親として、コーチとしての、新たな一歩となるはずだった。


そして、その日の夕食後。

康平は、ソファで和美と福太郎と寛ぎながら、テレビを観ていた。そしてふと、何かを思い出したように、和美に尋ねた。

「なぁ、和美…。」

「うん…?」

「優太のことなんだけど…。今日、クラブのレクリエーションで、『自己紹介ゲーム』をやったんだ。そしたら、子どもたちがゲームの話で盛り上がったのは良かったんだけど、優太はゲームのことはよく分かんないから、どこか寂しそうで…。でも、あいつ…、野球のルールを楽しく覚えたい、って、すごく前向きでさ。だから、もしよかったら…、野球のゲームソフトと、本体を買ってやりたいんだけど、どうかな?」

和美は、少し驚いた表情で、康平の顔を見た。

「ゲーム?でも、急に高くない?それに、優太がゲーム漬けになってしまったら困るわ。」

康平は、真剣な顔で和美の顔を見つめた。

「もちろん、時間はちゃんと決める。俺も一緒にやるから。でもあいつ…、野球が本当に好きになって来てるんだ。ゲームなら、座学じゃなくて、目で見て、体感してルールを覚えられる。…何とか、優太の力になってやりたいんだ。」

康平はそこまで言うと、「頼む、どうかお願いだ。」と深々と頭を下げた。和美は、康平の真摯な言葉と優太への強い思いに、表情が和らいだ。

「…そうね。優太がそこまで頑張ってるなら…。ゲームでルールが覚えられるっていうのも、一理あるわね。」

ーーーーーーーしかし、彼女の判断は、やはり慎重だった。ふと、何かを思い出したように、首を傾げた。

「…でも、ちょっと待って。ゲーム機本体からとなると、結構するんじゃないかしら。前にテレビでやっていたんだけど、今のゲーム機って、結構なお値段するって聞いたことがあるわ。…一体、いくらするのよ?」

康平は、和美の現実的な問いかけに、少し言葉を詰まらせた。

「え?…えぇっと…、まぁ、本体とソフト合わせたら、それなりにするとは思うが…。」

和美は、呆れた表情で康平の顔をじっと見つめ、ため息をひとつ。

「ちゃんと調べてきてちょうだい。すぐに決められることじゃないわ。いくら優太のためとはいえ、高額な買い物なんだから。それが納得出来る値段かどうか、そして優太がちゃんとルールを守って使える、って分かってからじゃないと、私は反対よ。この前買ったグローブだって、30000円もしたんでしょ?衝動買いはダメよ。」

康平は、和美の真っ当な意見に、思わず頭を掻いた。

「…分かった。すぐに調べてみる。」


その日の夜、優太が寝静まった後、康平はリビングでスマホを手にしていた。

和美との約束通り、よく利用する大型スーパーのサイトを開き、ゲームコーナーのページを開き、丹念に調べていく。

彼の目には、「プロ野球スピリッツ2014」のソフト価格と、「Play station3(250GB)」の本体価格が並んでいる。

合計金額がはっきりと表示された瞬間、康平の眉間にわずかなシワが寄った。

〈やっぱり、それなりの値段はするよな…。ついこの前、優太の誕生日で30000円のグローブも買ったばかりだし…。これを和美にどう話せば…。〉

康平は、スマホの画面とにらめっこしながら、深く考え込んだ。優太の喜ぶ顔と、和美の呆れたような顔が、彼の頭の中で行ったり来たりする。彼の心の中で、優太への愛情と、家族への責任感が、激しくぶつかり合っていた。


その日の深夜、康平は慣れない場所に立っていた。

目の前には、煌々と光を放つ大型スーパーのゲームコーナー。彼は、陳列された「プロ野球スピリッツ」の最新版の前で、一人深く悩んでいた。その価格が、頭の中で和美の顔と30000円のグローブの記憶を呼び覚まし、彼の心を重くする。

〈どうすれば、優太を喜ばせてやれる…?だが、これでは…。〉

すると、康平の隣に、一人の人物が立った。目を向けると、それは驚くことに、自分と瓜二つの顔をした、もう一人の康平だった。もう一人の康平は、困り果てた様子の康平に、優しく、そしてどこか悟ったように声をかける。

「何故、そんなことで悩んでいるんだ?新品にこだわらなくていいだろう?中古でだって、十分に優太を喜ばせてやれるじゃないか。」

「え…?」

康平が、その言葉の意味をもう一人の自分に尋ねようと口を開いた瞬間、もう一人の康平は、ニコニコと穏やかに笑いながら、その場から消えていった。

「…っ!」


ーーーーーーー康平は、そこでハッと目が覚めた。

ガバッ!!

勢いよくベッドから起き上がると、そこは普段の景色と何ら変わらない、青木家の寝室だった。隣では、妻の和美が、穏やかな寝息を立てて、スヤスヤと眠っている。

「夢か…。」

そう、ホッと一息つく康平。窓の外を見ると、遠くの方でうっすらと明るい光が見え、間もなく朝を迎えようとしていた。

そこでふと、康平は、今日見た夢の内容を思い返していた。

「ん…?ちょっと待てよ?『新品にこだわらなくていい』って、まさかーーーーーーー」

康平は、夢で見た「もう一人の自分」から重要なヒントを得られたと思い、すぐにスマホを取り出した。

そして、大手中古販売店のサイトを開き、ゲーム関連のページを開くと、そこには驚きの光景が。

「PS3の250GBが、15000円…!?」

さらに、前年ソフトである、「プロ野球スピリッツ2013」の価格を調べると…。

「嘘だろ…!?一番安くて、2000円で買えるのか…!?」

康平はすぐに、その二つの金額を小さな紙にメモした。そして、スマホの電卓アプリを使い、合計金額を計算するとーーーーーーーーー。

「17000円ーーーーーーーこれなら…!!」

康平は、一筋の光が見えたと思い、ベッドの上で安堵の表情を浮かべた。

この金額であれば、新品の半分以下、20000円ちょっとで収まる。それに、例え中古品であっても、優太が野球の基本的なルールを覚える目的であれば、十分だ。

あとは、和美がどう納得し、受け入れてくれるかだろう。康平は、最後のミッションである「和美を納得させること」に若干のプレッシャーを感じながらも、新たな可能性を手に入れられたことに、嬉しさを感じていた。


朝8時30分。今日は日曜日で、練習もお休み。

康平は、優太が公園に行ったタイミングを見計らって、和美に声をかけた。

「和美!ちょっといいか?」

「何?またゲームの話?あなたって本当に親バカね。30000円のグローブの件、ちゃんと考えたの?」

「あぁ。…ちょっと聞いてくれるか?」

そして康平は、大手中古販売店のサイトを開き、和美に画面を見せた。

「まず、これを見てくれ。PS3の本体は、新品だと24000円するんだけど、試しに『中古』というのを調べてみたんだ。そしたら、250GBで、15000円で買えることが分かったんだ。」

和美は、少し驚いたように、口を開いた。

「あら、そんなに安いのね。いいじゃない。」

「だろ?…それにな、前年のソフトで、『プロ野球スピリッツ2013』というのがあってな。一番安いもので、2000円で買うことが出来るんだって。」

「に、2000円…!?そんなに…!?」

「あぁ。…つまり、合計金額にすると、17000円になる、ということだ。」

「17000円…。」

「そうだ。…なぁ和美、この前話したこと、憶えてるか?」

「えぇ。…確か、野球のルールを覚えられるように、って言ってたわよね?その問題は解決出来るのかしら?」

「あぁ。…実はな、俺、『プロ野球スピリッツ』の説明を見て、驚いたことがあるんだ。」

康平は、「プロ野球スピリッツ」の説明ページを指差し、少し興奮気味に話した。

「あのな、試合時間が凄いんだ。実際の試合は、だいたい2時間半~3時間くらいで終わるんだけど、このゲームでは一試合につき、15分~20分でプレイ出来るんだって。ということは、15分の尺の試合を3回プレイしても、1時間もかからずに終わることが出来る、ということだ。これなら、野球の基本のルールを学ぶには十分だし、ゲーム漬けになって宿題とかが疎かになることも少ない。優太が『学校の宿題が終わってから』とか、『夕食前の20分だけ』という感じで、遊ぶタイミングを自分で考える力も身につくかも知れないんだ。…どうかな?」

和美は、康平の説明を聞きながら、興味深そうにフムフムと頷いている。

「そして、極めつけはまさにこれだ。…優太が好きな菅野投手がいること。それだけで、あいつがどれほど喜ぶか…。これがたったの2000円で買えるんだぞ。ありがたいと思わないか?」

和美は、康平の少々押しが強い説明に少し呆れ気味だったが、それでも目つきは優しそうだった。渋々ではあったが、彼女も優太の喜ぶ顔を想像したのか、最終的には承認してくれた。

「まったく…、あなたも優太も、本当に野球馬鹿なんだから…。でも、ちゃんと時間は守らせるのよ。宿題を疎かにしたり、夜更かししたりしたら、すぐに取り上げるからね。」

康平は、その言葉に大きく頷いた。

和美の言葉は、最終的な許可が下りたことを意味していた。康平の顔に、安堵と喜びの表情が広がった。

「もちろんだ!ありがとう、和美!」

ーーーーーーーーこれでやっと、優太が野球のルールを覚えられる。康平は、早くもその瞬間を心待ちにしていた。

勢いよく立ち上がり、先ほど開いた大手中古販売店のサイトを開く。

ゲーム機本体と、「プロ野球スピリッツ2013」の在庫状況を確認すると、何かを決心したように、すぐに鞄と車の鍵を持ち出した。

「よし、じゃあ早速、店に行って買ってくるよ!本当にありがとな、和美!」

「何、あなた。もう行くの?…全く、あなたってば本当に親バカね。」

「いいんだ。『善は急げ』って言葉があるくらいだからな。…それじゃ、行ってくるよ。」

和美は、そんな康平の姿に半ば呆れながらも、「気をつけてねー!」と優しく声をかけた。

その表情は、どこか柔らかく、満足げな笑みが浮かんでいた。

康平は、和美と福太郎に見送られ、急ぐように車に乗り込んだ。胸の中には、優太の笑顔と、家族の温かい理解が満ちていた。ハンドルを握り、アクセルを踏み込む足にも、自然と力がこもる。


「自己紹介ゲーム」が結んでくれた、「チーム」と「家族」の二つの絆。それは、今後の野球人生を歩む彼らにとって、何にでも代えがたい、かけがえのない『宝物』となったことに、間違いないだろう。

(第6話につづく)


※この物語はフィクションです。

※一部AIを補助として使っています。

※この物語がよかったら、「いいね」と「コメント」を是非よろしくお願いします。次回もお楽しみに❗









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