もしもし、まおうちゃまですか? アイです。5しゃいです。へいわがいいです。

@myosisann

第1話 強敵、現る!!

トゥルルルル、トゥルルルル。


 ん?


 トゥルルルル、トゥルルルル。


 なんだ? この音は?


 トゥルルルル、トゥルルルル。


 耳鳴りか? いや、そうではない。これは、魔法をかけられた感覚だ。それも、かなり高度な魔法。


「魔王様? どうされました? 表情が穏やかではありませんが」


 トゥルルルル、トゥルルルル。


 俺がかけられている魔法に、幹部ですら気づいていないほどか。強者、まさか勇者? 我が魔王城に気づかない内に侵入し近くまで来て、俺だけに攻撃している??


 トゥルルルル、トゥルルルル。


 この謎の音で俺をどうする気だ?


「魔王様?」


 まだ憶測。ことを荒げるのはまずい。

 

「すまんが、少し席を外してくれないか」

「はっ、承知致しました」


 トゥルルルル、トゥルルルル。


 静かな玉座の間、魔王である俺1人だけなのに。騒がしい耳の奥。


 腹立たしいことを。ん?


 俺の視界に、見たことがない図が現れていた。


 ☎︎


 ふむ………、魔法陣の一種か。ふん、いいだろう、魔王に楯突いたことを、後悔するがいい!!


 俺は☎︎に触れた。


 謎の音が止んだ。


 さあ、どこからでもこい!!


『もしもし、まおうちゃまですか? アイです。5しゃいです。せかいへいわがいいです』


 な、なんだと??


 初めて聞いた声音だった。幼女、5才、名前はアイ、世界平和、ど、どういうこと??


『あなたは、まおうちゃまで、わたしは??』

「……、は、はい??」

『ちがう! ア・イ!!』

「つっ!? きゅ、急に大声で叫ぶんじゃないっ!!」

『5しゃいです!』

「なっ!? いやいや待て!!」

『せかいへいわがいいです!』

「いやだからまたんかーい!!」


 バン!!


「ま、魔王様!! いかがなされました!?」

「うおっい!? ば、はかもの!! か、勝手に入ってくるなっ!!」

「も、申し訳ございません!! すぐに退出いたします!!」


 バタン!


『ねえねえ、まおうちゃま』


 えらいことになった。


『すきなたべものってなに??』


 え、え、え、


「えらいことになってもうたぁぁぁぁぁ!!!!」


 こうして、魔王である俺は、勇者よりも厄介な強敵、アイちゃん5才とであってしまったのだった。


『おさかなの、えらがすきなんだぁ』

「違うわ!!」


 俺は玉座に座りながら、とりあえず全力で否定するのだった。

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