第4話ep.4 「巨人の村と“可愛い”の基準」

村に足を踏み入れた瞬間、私は思った。




 でかい。何もかもが、でかい。




 




 建物は全部、木造でどっしりしていて、まるで山小屋を何倍にも拡大したようなサイズ感。窓も扉も椅子も、なにもかもが大型仕様だった。私なんて、玄関の取っ手をつかむのもやっとかも。




 




 村を歩く人たちも、みんな例外なく――デカい。




 しかも、筋肉ムキムキでガチムチ率が異様に高い。




 




 中にはスカートを履いた、女性っぽい人もいたけど……やっぱり2メートル超え。見上げないと顔が見えないし、腕なんて太ももより太そう。異世界基準、どうなってんの。




 




 私は思わず、キョロキョロと周囲を見回していた。




 でもそれはつまり――目立つってことだった。




 




 視線が、刺さる。どこを見ても、こっちを見られてる。あれ? もしかしてすごく珍しい存在なの、私?




 




「おっ、おい。イザーク、その小さな女の子はなんだ。……人形か何かか?」




 




 突然、目の前からどすん、と音がした。見上げると、イザークと同じくらいの大男。ガッチリ体型で、声も低くて迫力がある。その人が、私を指さして尋ねてきた。




 




 人形!? あの、動いてますけど!




 




「リトか。いや、この子は“渡り人”らしい。……これでも、成人女性だよ」




 




 イザークが穏やかに答えると、相手の男――リトと呼ばれた人が、えらい勢いで目をむいた。




 




「せ、せいじんじょせい!? こんなちっこくて、可愛いのが女ぁぁぁ!? 嘘だろ?」




 




 ……なんだその感想!? てか、女=小さくて可愛いって決めつけないで!? 私は“デカいしゴツい系”なんですけどー!




 




「おい、イザーク、その子どうするつもりだ? アテがないなら……俺の家で預かってやってもいいぜ?」




 




 ぬ、ぬぬぬぬぬ!? 




 なんかこの人、目がいやらしい!! ずっと胸元のあたり見てる気がするし、ニヤニヤしてるし!




 あーーーもう、こういうタイプ、現実でもいたな! 近寄りたくないやつだ!!




 




 けれど、すぐにイザークが一歩前に出て、ピシャリと答えた。




 




「いや。俺の家で保護する。明日、長老たちに会わせて、今後のことを決めるつもりだ」




 




 その言葉に、私は心の底から――ホッとした。




 




「……ありがとう、イザークさん」




 




 思わず小声でそう呟くと、イザークはふわっと微笑んでくれた。優しい。でかいけど、優しい。安心感のかたまり。




 




 この人がいてくれるなら、なんとかなるかも――そんな風に、思えてきたのだった。






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