わちゃわちゃしてる

「というか、一般人である私達がどうしてそんなめちゃくちゃ危険そうなことをしなくちゃいけないんですか? 犯罪集団のアジトが見つかったなら、普通に警察に通報してくださいよ」


「アイツらはただの犯罪集団ってわけでもなくってね」


「それならなおさらじゃないですか」


「我はこの店から離れたくない、働きたくない」


「店長にいたっては本心がうっかりまろび出ちゃってるじゃないですか。ちゃんと働いてください」


「それならば、ワタシが行くしかねえなです」


「ア、アイヴィちゃん、そんなネットミームどこで覚えてきたの!」


「流行には乗るしかねえ、このビッグウェーブに、とワタシのゴーストが」


「やめなさい、変な囁きには耳を貸さないの! あと、なんかミームの年代がすごいバラバラ!」


「クロよ、すっかりお母さんではないか、貴様」


「と・に・か・く! アイヴィちゃんみたいな小さくて可愛い美少女にそんな危なそうなことさせられないの! めッ!」


「誠に遺憾です」


 アイヴィちゃんどころか、どんな政治家が使っても全く相手に伝わらない謎の意をスルーしつつ。


 ようやく棚のバランスが安定したのか、とうとう修理を諦めた店長が、さっきまで醜態を晒し続けていたとは思えないほどしっかりとした足取りで、つかつかと何事もなかったかのようにこっちに向かってくる。


「ということで、クロ、今回の件は貴様に託した」


「い、イヤです! というか、私、一般人ですけど!?」


「ふふふん、安心しろ、貴様にこれを渡しておく」


「な、なんですか、これ?」


「たまたま我が昨日徹夜して作っていた店長キーホルダーだ、これを我だと思って」


「い、いらない!」


 その瞬間に彼の手から、店長を模したそれを奪い取り、ブンッと思いっきり投げつける。と、その勢いとは裏腹に、キーホルダー店長はへにょへにょ飛んでいって、ぺしょっと棚のすき間に落ちてどっかいった。


 その最期の軌跡をぽかんとしながら見届ける大の大人たちの姿はずいぶんとシュールだったに違いない。


「な、何をするだー! 我が徹夜して一生懸命作ったキーホルダーを」


「そんなもん、何の役にも立たないですよ! まるで店長のように! まるで店長のように!」


「に、2回言うな……」


「私はただの元社畜のダメなOLです、そんな物騒なことに巻き込まないでください」


「アタシのお願いでもダメか?」


「う、うぐぅ、ダ、ダメです。そんな、さっきまで勝気な感じだった人がそんな可愛らしいしょんぼり顔でお願いするとかいう、私の嗜虐心を煽るような反則技は認めません」


「アンタ、さては結構ヤバいヤツだな?」


「クロカ先輩、最低です」


「おっふ、や、やめてぇ、美少女たちの罵倒は私の癖を破壊しちゃうよぉ!」


「……おい、ダメドラゴン、この娘、なんつーか、情緒とか大丈夫か?」


「安心したまえ、クロはいつもこんな感じだ」


「ま、誠に遺憾です!」


「クロカ先輩、伝わりません」


「何なん!」

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