気が付けば寄りて
あやな紗結
第1話
「お兄さま、おかえりなさい!」
「ただいま。なんだか興奮しているみたいだね?」
「ふふ、ごめんなさい。先程までお兄さまにお客さまがいらしてたのよ」
「おや? 特に約束はなかったはずだけど。誰だったんだい?」
「それがね、お名前を教えていただけなかったのよ」
「へえ、誰かな? 君が知らない僕の客かぁ」
「ええ、古くからのご友人とうかがったから、わたくしも不思議で」
「古くからの? それは……どんな奴だった?」
「とってもおはなし上手な方でしたわ。でも、少し古めかしいお衣装で。なんだか頭が後ろに長くて……あら、外見に言及するなんて、はしたないですよね」
「……そうだな」
「そうそう、お兄さまに『昔の約束を』とだけ伝えれば良いっておっしゃってましたわ」
「……そうか」
「どなたか、これでお分かりになる? あら、お兄さま、どうなさったの? 頭痛がするならお薬を持ってきましょうか」
「いや……どんな様子だった? それを聞いたら誰かわかるかもしれない」
「ふふ、とっても優しい方でしたわ。かわいいかわいいと褒めてくださって。少し恥ずかしかったわ」
「そうか、優しかったか……」
「ええ! その内またいらっしゃるそうなの。次におもてなしする時は、きちんとお名前をお呼びしたいわ。お兄さま、お名前はおわかりになった?」
「そう、だな……誰かな……」
「あら、まだお分かりにならないのね? 不思議だわ」
「……そうか?」
「あら。だって、お兄さまの部屋に勝手に入るような……そんなお友だちなのでしょう?」
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