第2話 意外と推しは身近にいる...笹原峰編
ヤバいヤバいヤバい、遅刻しちゃう~!
私、笹原峰は昨日夜更かしして、今まさに死亡寸前です。
正直、遅刻したっていいんだけど……私にはそれができない理由がある。
――優等生、なんていうレッテルを勝手に貼られているから。
どうしてこうなった!?
ただ普通に過ごしていただけなのに!
たしかに勉強は得意だけど、それ以外は平均点のはず。
なのに、いつの間にか「清楚系優等生」扱い。
そんなキャラ崩壊するような真似、できるわけないよぉ……。
――学校
「はぁ、はぁ……間に合った……」
何とか滑り込みでセーフ!
「おはよう!」
「今日はギリギリで滑り込んできたね」
「昨日、グループ配信見てたら夜更かししちゃって……寝坊して」
「あー、それなら分かる」
この人は相沢さん。
私と同じグループのファン仲間で、成績はいつも上位、運動もできて性格も明るい。
まさに優等生の見本みたいな存在だ。
私と相沢さんが並ぶと、どう見ても「優等生コンビ」扱いされるけど……正直、なんで私がそこに含まれているのか、いまだに分からない。
「今日の授業、面倒な日だったよね」
「ええと、数学、物理、生物、体育、国語、世界史……」
(ん? なんでそんなに覚えてるの……?)
「5限目、絶対寝るやつじゃん」
「だからコーヒーゼリー買っといたの」
(どこまで用意周到なの、相沢さん!?)
「用意周到すぎる!」
「こんなの普通でしょ?」
「いや、普通じゃないから!」
「ええ!?」
――昼休み
私は昼ご飯を食べようと、バッグの中から弁当を取り出した。
そのとき、隣の相沢さんが話しかけてくる。
「それって、今朝言ってた編み物?」
バッグについているホルダーを見ながら、相沢さんが言った。
「そうだよ~」
「めっちゃきれいじゃん」
「わぁー、すごーい!」
話を聞いていた周りの女子たちが一斉に私の席に集まり、次々と褒め言葉を投げてくる。
「きれいな編み物だね!」
後ろの方にいたオタ女子が食いついた。
「それ、ワンガンガールレーンのキャラだよね!?」
「ワンガンガールレーン?」
女子たちが一斉に首をかしげる。
オタ女子は、さらに続けた。
「今すごく人気のアニメで。しかも――」
「そうなんだ」
「へぇ~」
みんなが納得していると、ふと視線を感じた。
その方向を見ると、佐々木君の姿があった。
(え、佐々木君? なんでこっち見てるの……?)
訳が分からず、すぐに視線を外す。
でも、なぜか胸の奥がざわついた。
(佐々木君のあの目つき……只者じゃなかった。
私、何かしたかなぁ?
キャラ崩壊だけは、絶対に避けたいのに……)
――家
学校を出て三十分ほどで、私は家に着いた。
「ただいまー」
いつものように声をかけると、姉が返事をする。
「おかえり」
ふと見ると、私が狙っていたお菓子を姉が食べていた。
「あっ、お姉ちゃん、また私のお菓子食べてる!」
私は即座に噛みついた。
「いいじゃない。こっちは月十万仕送りしてるうえに、お菓子まで買ってるんだから」
家庭内ヒエラルキーは圧倒的に姉が上。
ここは引くしかない。
「それはそうだけど……私が狙ってたのに!」
一応、抵抗してみるが――
「文句言うなら、自分で買ってきなさい」
見事に一蹴された。
「はーい……」
(この人は私の八歳上の姉、笹原凛。
職業はイラストレーター。
アニメやゲームのキャラを描くのが仕事らしい。)
「そういえば峰、あの編み物どうだった? 私の自信作」
「評判良かったよ。でも、何のキャラか分からない人も半分くらいいた」
「えぇ? そこまでマイナーなキャラは描いてないんだけどなぁ」
「人によるんじゃない?」
「そういうもんかぁ……。よし、仕事の続き、続き!」
「じゃあ私は先にお風呂入ってくるね」
「はーい」
――夕食後
さて、動画でも見ようかな。
……あっ。推しグループの楽曲制作者が新しい配信してる!
このグループと楽曲制作者、仲いいんだよね。
どれどれ……え、新しい楽曲を手掛けます!?
ついに待望の新曲がくる!
寝るまでまだ時間あるし、見ちゃお。
……ん?
今日は珍しくカメラがついてる。
あれ……後ろに映ってるの、同じ制服。
え!?
じゃあ、同じ学校に通ってるってこと!?
そんな事実を知った、一日だった。
推し×推し戦争 klam @klam_12
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