第13話 決着

――これは嘘、ブラフだった。

証拠品置き場で確認した資料には、髪以外は残っていない。

当時の検査技術では判明せず、破棄されていたのだ。

毛髪には他の人物のDNAも検出されていない。

未来は手袋で直接触れていなかったからだ。


副町長は皮肉交じりに言う。

「ほう、そうかい。だがそんな検査は何年も先だろ?

あんたがここで死ねば、そのDNA捜査も特定できるのかねぇ?」


「とりあえず、あんたを消した後、私はゆっくり考えることにするよ」

副町長は手袋をはめ、こちらを睨む。


未来は満面の笑みで応じる。

「ありがとう、あんたがバカで助かった。

証拠は、何年も先じゃなくなったわ。今ここで話す一言一句を、みんなが聞いているのよ」


体で隠していた無線スイッチを見せる未来。

「証拠は何年も先じゃない。今、あなた自身が作ったの。

この街じゃなく、隣町の防災無線のスピーカーに流れているのよ!」


「証人は何百、何千人かしら。これを全部消せる?」


「……っ!」

副町長の顔色が変わる。

次の瞬間、焦燥と怒りが入り混じった笑い声が、防災無線室に響いた。


「は、はは……そうさ!あれは全部俺の計画だ!

誰が損をした?みんな潤っただろ!こんな辺鄙な街が!」

「俺は、みんなが望むことを代弁して実行した!感謝されたいぐらいだ!」

「それを、あの秘書がつまらん正義感で……全くバカな女だ……」

「お前は利口な女か?バカな女か?どちらにせよ、お前の言葉だけじゃ信用できんな」


「隣町の防災無線に響いていたとしても、どうしてここに流れない?

バカな話、信用ならん。私は信ずることを実行するまでだ」


未来は呆れ顔で言い放つ。

「未来刑事だって言ったでしょ。ここの無線、この前の火事で故障してるのよ……やっぱりバカは貴方よ」


ーーーウゥーーーウゥー

遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。


副町長の言葉は、自らを追い詰める縄となり、防災無線を通じて隣町中に広がっていた。

やがて、それはこの町にも伝わる。副町長は気づく。


「……な、なに……? どういうことだ……」

窓の外、遠くから人々のざわめきが押し寄せる。


「バカな……俺の声が……!」

「もう終わりよ、貴方は何もかも……」

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