第14話 父の決断
絶望に飲まれた副町長の瞳は、次第に狂気を帯びていった。
机を蹴り飛ばし、刃物を抜いて未来へと突進する。
「危ない!」
未来の後ろのロッカーに隠れていた父が、すぐに飛び出した。
だが、副町長の腕力は強く、父は振り払われ、壁へ叩きつけられる。
「父さん!」
立ち上がろうとする父の胸に、焼き付いた言葉があった。
――命の順番。1に被害者、2に被疑者、刑事は最後。だが、俺は刑事よりも前に親だ。
我が子を守るのは父親だ。
副町長の刃が、未来の喉元へ迫った瞬間。
「やめろおおおおッ!!」
銃声が夜を裂く。
父の拳銃が火を吹き、副町長の胸を撃ち抜いた。
血が飛び散り、信じられない表情のまま、副町長は崩れ落ちる。
血に濡れた唇が震え、かすれた声が漏れる。
「俺は……こんな所で終わる器じゃない……こんな田舎街で……お前達さえいなければ……」
「だからこそ許せない! お前みたいな奴がのさばる未来が!――ここで終わりだ、副町長!」
副町長の瞳に怒りと絶望が混じり、やがて白目をわずかに見せながら意識を手放した。
銃口を下ろした父の肩は、大きく震えていた。
未来は駆け寄り、父の背中を強く抱きしめた。
「……すまない。刑事としては……間違いだったかもしれない」
「ううん……父さんは間違ってない。だって……娘を守ってくれたんだもの」
未来の瞳から涙が溢れた。その瞬間、二人を柔らかな光が包み込む。
「……実は最初に会った時、お前のことを娘なんて認めてないと言ったが、あれは嘘だ。本当はとっくに信じてた……」
父の声がかすれる。
未来は微笑みながら囁く。
「うん。知ってたよ。だって……娘だもん」
父は娘を強く抱きしめた。
その腕の中で、未来の身体は光となり、ゆっくりと消えていった。
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