第4話 『私が原因じゃん』
未来は工事現場を後にした。
その時、手に握っていたはずのものがない感触に気づく。封筒の中身――髪の毛。
現場から慌てて立ち去ろうとした瞬間、指から離れたのかもしれない。
いや、そもそもこの時代に来た時に、手から離れていたのか。
封筒も髪の毛も、この時代に来る時には確かに手に持っていた。だが来た時からの記憶はない。
未来は頭を抱えた。
――これが、二五年後、被疑者を有罪に追いやった証拠なのか?
だとしたら、自分のせいで……?
「私が……私が、無実の人を犯人にした……?」
吐きそうな罪悪感に胸が押し潰されそうになる。
自分のせいで一人の人生を潰したかもしれない恐怖が未来の体を硬直させた。
しかし今更、現場に戻り確かめることもできない。
もし現場に戻り、警察に職務質問などされたら、持っている未来の身分証明書は何の役にも立たないどころか、偽造免許と疑われて逮捕される覚悟をしなければならない。
必ず、私が副町長を捕まえる!
その想いで、硬直した体を再び動かし出した。
一体どこをどう歩いたのか、自分でもわからない。
だが気がつけば、街並みが見えてきた。建物は古びており、看板の字体や車の型も現代のものとは明らかに違っていた。
「……本当に、過去に来ちゃったんだ」
信じられない光景に戸惑いながらも、未来の心は一点に向かっていた。
――父に会わなければ。
未来の父、君島 誠一。
彼がまだ駆け出しの刑事だった頃、この隣町の署に勤めていたと、子供の頃に一度だけ聞いたことがある。
今の未来は必死に、その情報を頼りにするしかなかった。
散々看板を頼りに歩いた後、警察署の建物を遠くに見つけた時、胸がぎゅっと締め付けられた。
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