第28話 武器
俺はゲームが終わると、帳くんを探した。
いつもは湊の近くにいるのだが、いなかったので家中を探したが見つからなかった…。
「多分、自分の部屋にいるんじゃないかな?隼人の部屋のすぐ近くにあるよ。」
湊に聞いてみたところそんなことを言っていたので、帳くんの部屋に行ってみることにした。
部屋の前に着くと、トントンとノックをして話しかけた。
「帳くんいる?ちょっと話したいことがあるんだけど。」
少ししてから扉が開き、帳くんが出てきた。
「何か用ですか?」
帳くんの目はいつもよりも重たそうなので、きっと寝ていたのだろう。
「明日からの訓練、武器を使いたいんだけど。ダメかな?」
「そうですね…。長くなりそうなので、私の部屋の中に入って話しましょう。」
帳くんに言われて、部屋の中に入った。
嗅いだことのないはずなのに、どこか懐かしい、安心して眠くなるような匂いがした。
部屋は整理整頓された、落ち着いた雰囲気だった。
そして、部屋の中には子供が作ったような少し乱雑な折り紙や、クレヨンで描かれた独創的な絵が飾られていた。
俺がその絵を眺めていると、
「その絵は湊様が小さい頃に描いてくれたんですよ。」
と帳くんが懐かしむように、微笑んで言った。
「へぇ。そうなんだ。小さい頃の湊から貰ったものを大切にしてるんだね。」
「そうですよ。それで、訓練で武器を使いたいという話をしましょうか。座ってください。」
帳くんに言われて、近くにある椅子に座った。
帳くんが俺の対面の椅子に座ると、話し始めた。
「武器を使うのはあまりお勧めしません。なぜなら、一つの武器を熟練するまで時間がかかりますし、隼人くんの魔法は自分の手で相手の体に直接触らないといけないので、手が塞がるのは良くないと思ったんです。」
「帳くんが言いたいことはよく分かるよ。でも、相手が武器を持ってるのに素手で戦うっておかしい。あと、武器を持ってたら隙も作りやすいし、絶対に戦いやすいと思うんだ!」
俺は必死に熱弁した。
「隼人くんがそう言うならそうしましょうか。」
帳くんは俺の熱気に押されたのか、了承してくれた。
「やったぁ!ありがとう!それで、明日から武器を使って訓練をするんだよね?」
「訓練をする前に、武器を選ばないといけないですね。明日、怪異課のところから適当に持ってくるので選んでください。」
「わかった。ところで、帳くんって何の武器使ってるの?」
俺は興味が湧き、帳くんに聞いてみた。
「私は日本刀ですね。家に伝わる技があるのでそれを主に使ってます。」
「かっこいい!俺もそれ使ってみたいな!教えて欲しい!」
俺は目を輝かせて帳くんに食いついた。
家に伝わる技ってのはみんなかっこいいんだよな…。
「私はその技の後継者じゃないんですよ。兄の技の真似をしているだけです。なので、ただ模倣してるだけの技は教えられません。」
帳くんはどこか寂しそうに微笑んだ。
「そっか。じゃあ、帳くんのお兄さんに教えてもらうのは?お兄さんが後継者なんだよね?」
俺は諦めきれずに尋ねた。
「兄ですか…。教えてくれそうですけど。多分、隼人くんの心が折れてしまうと思います。」
「心が折れるって?俺はやる気満々だから、簡単に諦める気はないよ。」
「私の技は隼人くんが見ても真似できると思います。でも、兄の技は…真似できるなんて思えません。見ただけで心が折れます。絶対に真似できないって確信してしまうんです。」
帳くんはポツリポツリと溢すように言った。
いつもと様子が違うと俺は気づいた。
帳くんはお兄さんのことをあまり話したくないのだろう。
それはどうしてかわからないけど、今はやめといたほうがいい。
「あー。もう大丈夫だよ。とりあえず、明日武器を選ぶってことはわかった。」
自然に話をやめたつもりだったが、帳くんから見たら不自然だったかもしれない。
「そうですか。最後に、隼人くんは嫌でも私の兄に会う。そして、その技を直接見ることになります。」
確実に起こると確信したような瞳で、帳くんは宣言した。
「そっか。帳くんのお兄さんと会うの楽しみだな。じゃあね。」
俺は席を立ち、帳くんの部屋から出ようとした時
「楽しみ?そう思えるのも今のうち。君は地獄を見ると言うのに…。」
帳くんが小さく呟くのが聞こえた。
それは独り言なのか、俺に言ったのか分からなかった。
次の日
俺は庭に並べられた武器をじっと眺めていた。
帳くんは剣、斧、槍、鞭、ハンマー、棍棒などの近接用?の武器などを用意してくれたみたいだ。
それぞれ何種類かあるみたいだが、俺には全く見分けがつかない…。
「実際見るのは初めてなんだよね。これって本物なんだよね?」
後ろに佇んでいる帳くんに尋ねた。
「そうですよ。決められないなら実際に持ってみてもいいですよ。」
帳くんに言われて、他のよりも長い剣を持ち上げようとした。
想像以上に重い…。
片手でもいけるかと思ったが、無理そうだ。
両手を使って、ギリギリ持ち上げることができた。
「重い…。もっと軽いのは無いのかな?」
帳くんに聞いてみると、並べられてる武器の中から日本刀?っぽいのを持ち上げて渡してくれた。
「今持ってるのは大太刀と言って結構重い剣ですね。やっぱり日本刀の方が持ちやすいですよ。」
日本刀を持ってみるとさっきと比べてとても軽かった。
「軽い!大太刀が鉄の塊なら、これは研ぎ澄まされた空気みたいに軽い。これなら使えるかも。」
「そうですね。でも、扱いが難しいんですよね。初心者は物を切ることすらできませんから。」
「そうなんだ。やっぱり日本刀がいいな〜。扱いが難しくても、一番カッコいいし!」
「そうですか。せっかく持ってきたので他の武器も触ってみてくださいよ。」
確かにせっかく帳くんが持ってきてくれたことだし、持つだけでもしてみよう。
斧とかハンマーは重いのが大半で、片手で持つことができなかった。
片手で持てたほうが、相手の隙を突いて触れるので重視している。
槍はリーチが取れるけど、デカくて持ち運びがしにくい。
鞭は熟練するまで時間がかかるし、あんまりカッコよくない…。
棍棒はなんか蛮族って感じがして嫌だ!
そんな感じでやっぱり日本刀にすることに決めた!
「そういえば、湊って武器は何を使ってるの?」
「湊様は素手ですね。武器はどれもうまく扱えななかったので、最終的に素手でよくね?ってなった感じです。」
つまり、湊は素手が一番強いってことか。
じゃあ、昨日の戦いって…
「えっ?じゃあ、昨日の訓練って熟練の相手に素人が戦いを挑んでたってこと?」
「そうなりますね。」
「なんでそんな事をしたの!勝てるわけないじゃん!」
「そんなに興奮しないでください。一回、敗北の味を知ってほしかったんですよ。」
「とりあえず、これからの訓練ってどうするの?武器の練習とか?」
「そうですね。日本刀は訓練をしないと何も切れないのでまずは扱えるようにします。」
こうして、武器の訓練をすることになった。
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