多分、探偵だからだと思います。
終わったわ⋯。
そんな気持ちで道を歩いていると、学校が見えてしまった。着くの早すぎ。
まあ、確かにうちの家は学校から近いのだ。でも、急いでいるならとっとと自転車で行けばいいと思うけれど、お恥ずかしながら自転車に乗れない。そしてこの絶望は人を走らせない。
はあっとため息をついて正門を通る。
「あれ、ルリちゃんじゃなーい!」
後ろから声がかかる。
ふわふわの髪なのに今どき珍しい三つ編みにした高2の女生徒が手を振っている。
「瑞希先輩!」
思わず叫ぶ。
先輩は私の隣に行くと、歩調を合わせた。
何を話そうかと思った時、彼女の方から話かけてきた。
「ねえ、千秋ちゃんってさ、ルリちゃんと同じ小学校だったんじゃなかったけ?どうだったの?」
今野先輩――つまり今野千秋のことだ。あのロイヤルホテル殺人事件から何ヶ月も経っているが、今も探偵として色褪せない、才媛。
第一印象。美人。一つ上の学年で、学校探検で一緒になった。あの時はワクワクした。全て優しく教えてくれるけどミステリアスで静か、今も大好きな先輩だ。
小3のとき、無くなった先生のシャーペンの場所を突き止めた気がする。あの時から探偵だ。先輩は。
「まあ、良いひとでした。」
こうしか言えない気がする。
まあ、これ以外言うことはないのだ。
「そっかー。ねえ、どうして、あの犯人を捕まえようとしなかったと思う?私だったら捕まえちゃうんだよね。」
もっと答えられない問題。
でも、答えは一つ。
「多分、探偵だからだと思います。」
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