第十幕 少し真面目なストーリーが続き、作者が狂いそうなのだが




ー戌の刻が近まり、甲賀忍び総出で、伊賀へと向かう。


静かな夜の山の中、甲賀忍びの鋭い目だけが光っていた。


『……静かだ。』


何時もは騒いでいる山の生き物の姿もなく、虫の声さえも聞こえない。


「天空……妙だとは思わぬか?」


白狐の言葉に、天空は、眉を顰める。


「俺も、先程から感じていた。……静か過ぎる。」


白狐は、合図を送り、足を止めた。


白狐の合図に、甲賀者達も足を止める。


『ムッ……!!火薬の匂い……!!』


サッと、草陰を見ると、白い煙が上がっている。


「ハッ……!!爆薬だー!!皆の者!散れ!散れーーー!!」


白狐が叫んだが、間に合わず、甲賀者達のいる場所が大きな音を立てて、爆発する。


「うわぁぁぁあああーーー!!」


「ぎゃあぁぁぁあああーーー!!」


あちらこちらから、悲鳴や叫び声が響き、甲賀者達は、爆薬に飛ばされる。


白狐は、素早く、菖蒲の身体を抱き抱え、木に飛び移る。


天空も、また爆風に飛ばされながらも、木の上に飛んだ。


「大丈夫か!!天空!!」


爆風で左肩を焼かれた天空は、眉を寄せ、木の上で、膝をつく。


「肩をやられた……!だが、大丈夫だ!白狐、菖蒲は!?」


木の上、ブルブルと、身体を震わせている菖蒲を見て、白狐は言う。


「心配ない!!皆は……?!」


そう言って、木の下を見た白狐は、瞳を大きく震わせる。


あちらこちらに飛ばされた甲賀者。


手足が吹き飛んだ者、内蔵が飛び出た者……肉片が飛び散り、地獄絵図のようだった。


「ほぼ全滅か……。天空、一旦、屋敷へ戻ろう!私達だけでは、どうにもならぬ!!」


「分かった……!」


木々を飛び越え、白狐達は、甲賀屋敷へと戻って行った。




ー屋敷の中、左肩を火傷した天空の治療を菖蒲はしていた。


白狐は、一人、囲炉裏の側で、腕を組み、考えていた。


『今度の作戦は、密かに行われていたはず……。何故、あの場所に、伊賀者が……?何故、私達があの場所を通る事を知っていたのだ?……まさか、この甲賀に、裏切り者が……?!』


天空の治療を終え、菖蒲は、白狐に言う。


「これから、どうなるの?私達……。」


菖蒲の言葉に、白狐は、強く息をつく。


「かなりの数の仲間が殺られた。このままでは、甲賀は、伊賀には勝てぬ。兎に角、今は、身体を休めておけ。私は、頭領の元へ行く。」


白狐が言うと、菖蒲は、小さく頷いた。


スッと静かに立ち上がった白狐は、頭領のいる部屋へと向かう。


その瞳が厳しい光を放っていた。

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