OLトモミの異世界生活

もこともこ

第1話

私の名前はトモミ、26歳。東京のオフィス街で働く、ごく普通のOLだ。毎日の仕事は書類作成にクライアントへの営業。特別なことは何もない、平凡な毎日。

この日も、私はいつもと変わらず営業先へ向かっていた。今日の相手は、駅から少し離れた場所にある、古びたビルに入居している会社。

「なんだか、ちょっと不気味なビルだなあ」

錆びついた看板に、くすんだ外壁。エレベーターの扉も古く、開くたびにギイと嫌な音がする。

でも、これも仕事。私は意を決して、行き先階のボタンを押した。

エレベーターはゆっくりと上昇する。その間、私は手持ちの資料を確認したり、スマートフォンの通知をチェックしたりしていた。しかし、なかなか目的地に着かない。おかしいな、と首を傾げたその時、エレベーターがガタンと大きな音を立てて急停止した。

「え、うそ、故障!?」

焦ってボタンを連打するが、反応はない。非常用ボタンも機能していないようだ。

閉じ込められた――そう思った瞬間、エレベーターの扉がスッと開いた。

しかし、目の前に広がっていたのは、見慣れたオフィスの廊下ではない。

そこには、石畳の道と、巨大な城がそびえ立っていた。

夕焼けに染まる空の下、騎士のような格好をした人々が行き交い、耳慣れない言葉が飛び交っている。

私は、あまりの光景に目を丸くしたまま、立ちすくんだ。

「ここは…一体どこなの?」

背後を振り返ると、そこにはエレベーターの扉なんてものはなく、ただの石壁があるだけ。

私は、自分がまったく別の世界に来てしまったことを悟った。

手に握りしめた資料も、履き慣れたパンプスも、すべてが場違いに見える。

私は、この世界でどうなってしまうのだろう。

不安と期待が入り混じる中、私は一歩、異世界の地面に踏み出した。

途端に、周囲の人々の視線が私に集まる。彼らは皆、目を大きく見開き、ひそひそと話し始めた。

「あれを見ろ、あの女の格好を」

「見たことのない布地だ…東の果ての国の者か?」

「いや、肌の色は我らと同じだが…」

彼らの視線は、私のスーツ姿や、手に持ったスマートフォン、そして足元のパンプスに向けられている。まるで珍しい動物を見るかのような、好奇と警戒が入り混じった視線だった。

特に、私のスマートフォンに興味津々のようで、何人かの子供が指をさして母親に尋ねている。しかし、もちろん、彼らの言葉は私には理解できない。

私は、まるで裸で町を歩いているかのような居心地の悪さを感じた。

早くこの場を離れたい、どこか人目のない場所に隠れたい。

そう思い、足早に歩き出すが、どこへ向かえばいいのかも分からない。

生理がきていたこともあり、朝から少し貧血気味だった。異世界に迷い込んだという信じられない出来事、そして周囲からの好奇の目に晒され続けたことで、私の心身は限界に達していた。

頭がぐらぐらと揺れ、視界が急速に狭まっていく。

「やばい…」

そう思った次の瞬間、私の意識は暗転し、地面に倒れ込んでしまった。

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