第8話 男の娘サキュバス捕虜になる


「男の娘サキュバスを捕虜にしただと?」

 ドアの外の声がはっきり聞こえた。女の声だ。

 僕は狭い部屋の中で裸にされて両手首を縛られたまま吊るされている。

 部屋のドアが開いて、上官らしい女兵士が入ってきた。

 僕を捕まえた女兵士も、その後ろからついてきた。


「こいつが男の娘サキュバスだという証拠があるのか?」

 上官が女兵士に尋ねた。

 その上官は僕の股間に手を伸ばすと、皮を被って縮こまった僕のそれをつまんで笑った。


「この娘の尻を見た男が、魅了の術にかかった場面を目撃しました。それと、もうひとつ。ソラリムというオンラインゲームがあるのですが、その中の「Isekai Reincarnation - Trap Hero: How Will I Live in This World?」というエピソードに出てくる男の娘サキュバスの顔にそっくりなのです」

「ゲームキャラにそっくりというのは、なんの根拠にもならんだろ。いや、こいつをモデルにして作ったキャラというのもあり得るかもな。わかった。確認しよう。男の兵士を一人連れてこい。それから、この部屋に他の男は近づけるなよ」

 上官の命令の後、女兵士が出ていき、僕はこの上官と狭い部屋で二人きりになった。

 彼女は僕の背中側に回り、僕のお尻を開いて肛門を観察してるみたいだ。

 恥ずかしくはあったけど、僕の頭の中はそんなことよりもさっきの女兵士の言葉が気にかかっている。


 ソラリムというオンラインゲームは、以前凛々子と共に楽しんだ経験がある。

 そしてその中で僕は男の娘サキュバスになっていたのだけど、それがゲーム内の一つのエピソードになっているなんて事はなかったはずだ。


 僕と凛々子がいたあの日本では、そんなのありえない。

 ふと思い出した。

 紅の触手事件のとき天界から助けに来た五蔵法師の言葉。


 多元宇宙の中では、私達の冒険が、別の世界では漫画や小説のストーリーになっている、そんな現象だってあり得るのです。

 そんな事を彼は言っていたのだった。

 だとしたら、この世界は僕が、いや木村圭一が居たもともとの日本じゃないのかもしれない。

 僕が木村圭一から男の娘サキュバス‐ジュンに変わったときに、この世界も変わったのか?

 いや、あのときに僕の意識がこっちの、また別の日本に来たといったほうが適切なのかも……。

 つまり、今僕がいる日本は、僕や凛々子が生まれた、もともとの日本ではないかもしれないということだ。


 西暦2025年7月に南海トラフ大地震が起きなかった日本。

 それを想像して、羨ましくなってしまう。でも仕方ないか、どんな天災も不幸も起こるときは起こるのだ。

 


 ドアが開いて、さっきの女兵士が入ってきた。続いて屈強な男の兵士も入ってくる。

 更に女の兵士が二人入ってきた。合計で四人の女兵士。この部隊では女の兵士はこの四人だけだ。さっき得た兵士の知識にそうあった。


「こいつの縄を解いて降ろせ」

 上官が命令して、二人の女兵士の手で僕は降ろされた。

「よし、お前四つん這いになれ」

 上官に言われたとおり、冷たいコンクリートの床に僕は四つん這いになる。


「みんな、よく見ておけ。お前、こいつの尻の穴を見てみろ」

 上官が命令すると、男の兵士が僕のお尻側に来た。

 男は、うぐっとうめいてしゃがみ込む。

 そして四人の女たちの見ている前で僕の肛門を舐め始めた。


「え、何やってるの」

「どういうことですか、これは」

 あとから来た二人の女兵士が驚く中、男の肉棒が僕のお尻にねじ込まれてきた。


 周りのことにはまったく眼中になく、僕を犯すことに熱中する男兵士、それを確認して上官が言った。

「なるほど、本当に男の娘サキュバスだな。術が効いているようだ。それで、こいつの詳しいことはわかるか?」

「はい。男の娘サキュバスは、肛門を男に見せることで男に魅了の術をかけることができる。それに加えて、男の娘サキュバスの尿は万能回復薬になる。そして……」

 ここでいったん言葉を切って、一拍おいて続けた。

「男の娘サキュバスの精液は、若返りの薬になるのです」

 その言葉の後、他の女兵士たちがざわめいた。


「これは掘り出し物だったな。すぐに本部に連絡しろ。AI基盤よりも価値のあるものを見つけたかもしれない、とな」

 上官がそう言った時、男の腰が痙攣して一発目の射精を僕の中に放った。


「それと、性奴隷用の若い女たちが逃げましたが、捜索隊はどうしますか?」

 女性兵士の一人が上官に聞いた。

「その必要はない。この男の娘一人で、その用途には十分だからな」

 上官が答える。

 その答えは、僕にとっては安堵のため息をつかせるものだった。

 僕が捕虜になったのは無駄じゃなかったのだから。


 

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